November 21, 2022

バーチャルプロダクションとは?

By Ryan L'Italien

*本記事は Perforce Software 社の以下のブログ記事(2022年11月21日時点)の参考訳です。
What is Virtual Production?
*ブログの内容は更新されている可能性があります。また、記事内のリンク先は別途記載がない限りは Perforce Software 社サイトのページになります。

COVID-19 の世界的なパンデミックの最中に本格的な導入が進んだとも言えるバーチャルプロダクションですが、メディアやエンターテイメント分野で活用が進み、ポストプロダクションにおける時間やコストの削減に大いに貢献しています。そのため、今回のパンデミックが完全に収束したとしても、バーチャルプロダクション技術は今後もこの業界で普及し続けることでしょう。実際、多くの映像制作スタジオがこの技術を取り入れて、没入感のある新しい体験をリアルタイムで作り出そうと、新しいツールの導入などを進めています。

本ブログのコンテンツは以下の通りです。

  1. バーチャルプロダクションとは?
  2. バーチャルプロダクションのメリット
  3. バーチャルプロダクションスタジオの構築方法
  4. バーチャルプロダクションに必要なもの
  5. バーチャルプロダクションを開始するには

バーチャルプロダクションとは?

バーチャルプロダクションは従来の映像制作技術とバーチャル技術を組み合わせて、最先端のメディア作品を生み出します。どのように実現するかというと、まずはリアルタイム 3D エンジン(ゲームエンジン)を使って写真のようにリアルなセットを作り上げます。そして、それをゲームエンジンのリアルタイムレンダリング機能を用いて、物理的な撮影セットの後ろに設置した巨大なLEDの壁に投影します。また、カメラをゲームエンジンに同期させることで、更なるリアルさと遠近感を作り出します。

バーチャルプロダクションの登場により、ビジュアルエフェクトの制作はもはや撮影後(ポストプロダクション)にのみ行う作業ではなくなり、撮影前(プリプロダクション)の段階から開始して繰り返し行うもの(”プレビズ”)になってきています。ビジュアルエフェクトは"撮影後に決める"という昔ながらのやり方が、”事前に決めておく”という新しい流れに変わりつつあるのです。

スタジオの規模に関わらず、バーチャルプロダクション技術の採用には多くのメリットがあります。

バーチャルプロダクションのメリット

メディアやエンターテイメント業界における最近のバーチャルプロダクション導入の動きは、COVID-19のパンデミックの影響もあると思います。作業環境が急激にリモートへシフトし、ソーシャルディスタンスの必要性が高まったことで、撮影現場の人員を減らしつつ、今までとは違うやり方で効率よく作業する方法が模索されました。その結果、制作チームは新たなツールを導入したり、クリエイティブ制作のワークフローやパイプラインを変更したりする必要に迫られたのです。

しかしながら、バーチャルにつながることだけが、バーチャルプロダクションではありません。今までよりも大規模かつ革新的な作品を、制作のより早い段階からハイクオリティに作り出すことを可能にするという、バーチャルプロダクションならではのメリットも見えてきました。

時間とコストの節約

バーチャルプロダクションの導入により、多くの制作スタジオは時間やコストを削減できるはずです。提案された撮影場所を仮想的に作り、必要な事前確認(ロケハン)をバーチャルで行えば、移動にかかる時間や諸経費が不要になります。また、クリエイティブな決定や修正を早い段階で済ませておくことで、役者が実際のセットに立った時に適切な判断を下し、やり直しや無駄の少ない撮影を行うことが可能になります。ポストプロダクションで要する時間やコストも大幅に節約できるでしょう。

アイディアのイテレーション

バーチャルプロダクションによって、クリエイターたちは今までよりも早い段階から自身のビジョンを発展させられるようになるでしょう。セットに誰も足を踏み入れていない段階から、撮影のカットや環境を視覚化できることで、色々なアイディアを試してみる余裕が生まれます。自分たちのビジョンを繰り返し検証することで、素晴らしい作品の誕生には欠かせない、連帯感も生まれやすくなります。

視覚的理解の向上

今までの映画制作は縦割りで、関係者の多くは最終的に映画が完成するまで、CGI グラフィックスや再編集されたストーリーを目にすることはありませんでした。しかし、バーチャルプロダクションを利用することで、プレビスからポストプロダクションまでを通して、全員がより全体像を理解したうえで作業にあたることが可能になります。

バーチャルカメラやグリーンバックでのリアルタイムな映像合成は、バーチャルな世界につながる窓のような役割を果たします。これらにより、今まさに撮影しているものを正確に把握することができます。また、巨大な LED ウォールを背景に利用することで、映画製作者や役者は自分の目とインカメラの両方を通して、セットがどのように見えているかを確認することができます。(役者の背後にある LED に映像を投影することの大きな利点としては他にも、前景のセットや役者によりリアルな照明を当てることができる、セットに対して役者がよりリアルな反応をすることができる、などがあります。)

素早い場面転換

バーチャルな環境を使えば、撮影を長時間止めることなく、シーンの切り替えを行うことができます。それも、一カ所ですべてを撮影することができるのです。デジタルアセットは即座に変更が可能なため、役者はそのままに複数のシーンを撮影することができます。

さらに、バーチャルな場面においては、天気や時刻、照明から物の位置をはじめ、様々なものを自由にコントロールすることができます。そして、その状態はいつでも再現可能なうえ、すぐに準備ができるのです。

アセットの保管

バーチャルなアセットであれば、既存のライブラリから過去に制作したものを再利用することができます。必要に応じて素早くカスタマイズが可能なため、ゼロから作り直す必要はありません。また、バーチャルなアセットは電子的に保管されるため、物理的な保管や輸送にかかるコストや人件費の削減にも貢献します。

グローバルな共同作業

バーチャルなコンテンツは今や、制作チームが世界中に分散していたとしても遅延なく作り出すことができるようになっています。クリエイターや技術的なスペシャリストのチームを編成する際に、場所を気にする必要はありません。コストを増やすことなく、様々な可能性を広げることができるのです。

バーチャルプロダクションスタジオの構築方法

バーチャルプロダクションのワークフローに移行するには、制作プロセスについての考え方を変える必要があります。今までのフローに比べると、直線的ではなくなり、ゲームエンジンのような新しいツールも必要になってきます。

ゲームエンジンが実現するバーチャルな世界の柔軟性とインタラクティブ性に加え、制作プロセスの早い段階からコンテンツの視覚化が可能になることで、制作スタジオは今までは不可能だったビジョンも実現できるようになりました。

例えば、『ライオンキング』や『Ripple Effect』、『マンダロリアン』のような最近の映像作品は、ゲーム開発の技術を用いて作られています。ゲーム開発と同様に、バーチャルプロダクションでゲームエンジンを使う場合は、高度なオーケストレーション(システムやソフトウェア、サービスなどの構築・運用管理の自動化)が求められます。また、バーチャルプロダクションのプロセスは直線的ではないため、出来るだけ早い段階から関係者全員がより多くの情報を共有できる環境を用意する必要があります。さらに、プロセスを通じてアイディアのイテレーションができるようにするために様々なツールも必要になります。

【動画】Production Design on The Mandalorian: Season 1(日本語字幕あり)

バーチャルプロダクションに必要なもの

バーチャルプロダクション向けパイプラインは、どのように構築すべきか。まず何から始めるべきか。基本的なツールについて確認しつつ、構築方法を見ていきましょう

リアルタイム 3D エンジン/ゲームエンジン

リアルタイム 3D エンジン/ゲームエンジンは、バーチャルプロダクションに不可欠なものです。Unreal Engine や Unity のようなツールを使うことで、メディアやエンターテイメントの制作チームは写真のようにリアルなバーチャル世界やキャラクターを作り出し、撮影現場の LED ウォール上にリアルタイムで投影することができます。そして、現場にある実物のカメラとゲームエンジン内の仮想カメラを同期させ、カメラの動きに合わせてバーチャルなシーンを動かすことで、更なるリアルさと遠近感を生み出します。

待望の Unreal Engine 5 (→ブログ記事の日本語参考訳はこちら)のリリースにより、制作スタジオはより広大な世界を作り出し、サウンドやアニメーション、照明をわずか数秒で調整することができるようになるでしょう。

ゲームエンジンの活用方法 >>

ゲームエンジンとの連携について

バーチャルプロダクションにおいて、デザイナーやアーティストが使うツールも含め、様々なツールの連携が必要になってきます。アセットの制作には、Photoshop や Maya、3DS Max なども使われます。これらのツールで作成した非常に大きなファイル達を、Unreal Engine や Unity を使用して、まとめ上げることで最終的な映像作品が完成します。どのツールを使用するにしても、ゲームエンジンとの連携は第一に考えておく必要があります。詳しくは、以下をご参照ください:

  1. Unreal Engine を使ったバーチャルプロダクション
  2. Unity を使ったバーチャルプロダクション

ゲームエンジン完全ガイド

ゲームエンジンについての情報を集め、早速活用してみましょう。

ゲームエンジン情報まとめ

クラウドデータ管理

大容量ファイルを大量に扱うケースで重要になるのは、それらのファイルにすぐにアクセスできるかどうかです。クラウドに移行することで、より多くの人々とどこからでも共同作業ができるようになります。

クラウド環境またはオンプレミスとのハイブリット環境への移行により、必要なバーチャルプロダクション アセットへの素早いアクセスが可能になります。クラウドのデータセンターはどこからでも利用が可能で、チームの居場所に応じてすぐに立ち上げることができます。また、スループットの向上と遅延の低減も期待でき、制作の遅れに直結しかねない、WAN による待ち時間を解消することもできます。さらに、必要なメンバーにのみアセットへのアクセス権を付与し、その後、どのような変更が加えられていったのかをトラッキングすることができます。

バージョン管理

バーチャルプロダクションのためにゲームエンジンを導入したスタジオは、膨大なデジタルアセットの管理やプロジェクトの複雑化、開発チームの大規模化や分散化などの問題に直面することでしょう。これらに対処するために必要になるのが、(ファイルへの変更履歴を長期にわたり記録・管理することができる)堅牢なバージョン管理システムです。

バージョン管理の良し悪しは、ひとつのプロジェクト上で複数人が同時作業を行う際に上書きのミスや不要な重複の発生を抑え、お互いの作業を妨げることのない環境を構築できるかで決まってきます。また、優れたバージョン管理システムは、離れた場所にいる開発メンバーとの膨大な量のファイル共有も即座に可能にします。バージョン管理システムはゲーム開発の現場で何十年も前から使用されてきましたが、ゲーム開発技術が映像制作の現場に広がるにつれて、こちらの導入も進んでいます。

[事例紹介] Final Pixel:バージョン管理でアセット制作の効率化とバーチャルプロダクション・パイプラインの加速を実現 >>

デジタルアセット管理

バーチャルプロダクションでは、大量のデジタルアセットが作成されます。バイナリのアートファイルは容量が大きくなりがちで、管理するのも大変です。そこで役に立つのが Helix Core をはじめとしたバージョン管理システムです。ただ、クリエイターの多くはクリエイティブファイルの管理に、バージョン管理よりも、デジタルアセット管理(DAM)ツールを好んで使っていると思います。

しかし、デジタルアセット管理ツールの多くは、ファイルの最終形だけを保管するものです。前のバージョンを確認したい、前の状態に戻したいという時には使えません。Perforce が提供するデジタルアセット管理ツール「Helix DAM」はこのような問題を解決してくれます。Helix Core の上に構築される Helix DAM はヴィジュアルライブラリに保管された全アートアセットの変更履歴を記憶します。また、AIによる自動タグ付け機能と高度な検索機能で、必要なファイルを必要な時に簡単に探し出します。さらに、承認済みの完成形のみが LED ウォールに投影されるよう管理できることで、撮り直しによる余計なコストの発生やポストプロダクションでの編集にかかる時間を削減します。

バーチャルプロダクションを開始するには

プレプロダクションからポストプロダクションに至るまで、バーチャルプロダクションでのイノベーションを加速させるうえでソフトウェアの存在は欠かせません。しかし、映像制作においてこの手法を取り入れるためには、学ばなくてはならないことが非常に多くあるのも事実です。そこで、Perforce  社はバーチャルプロダクション・スタジオの ICVR と手を組み、無料でバーチャルプロダクションについて詳しく学べるオンデマンドのコースを用意しました。

Perforce U College のバーチャルプロダクションコースは、クリエイターから開発者、管理者まで、誰もがバーチャルプロダクションのコンセプトやワークフロー、必要になるツールについて学べるように作られています。以下のコースをご自身のペースで学び、ぜひバーチャルプロダクションのプロを目指してください。

  1. バーチャルプロダクションの基礎
  2. バーチャルプロダクションのためのバージョン管理
  3. Unreal Engine を使ったバーチャルプロダクション & 撮影現場でのワークフロー など

【動画】Virtual Production 101(日本語字幕あり)

バーチャルプロダクションについてもっと学びたい場合は、Perforce University をチェックしてください >>

バーチャルプロダクションに最適な Perforce Helix Core

「データ管理」と「スピード」の点で、Perforce Helix Core は一流のゲームスタジオの多くから信頼を寄せられています。AAA タイトルの制作スタジオ上位 20 のうち 19 のスタジオがデジタルアセットのバージョン管理に Helix Core を利用していることはご存じでしたでしょうか?

Helix Core は以下の理由でゲーム開発スタジオから選ばれています。バーチャルプロダクションのスタジオにとっても、これらはツール選びをするうえで重要なポイントになってくるはずです。

  1. バイナリファイルから、オーディオ、ビデオ、コードまで、あらゆるデジタルファイルをバージョン管理し、安全に保管できる
  2. Unreal Engine や Unity などの主要なゲームエンジン、そして 3DS Max や Maya などのクリエイティブツールとの連携が可能。普段使っているツールから変更をサブミットするだけでバージョン管理できるので、既存ワークフローの変更は不要です
  3. 大規模かつ離れた場所に分散しているチームに Single Source of Truth(信頼できる唯一の情報源)を提供できる。必要な時に必要なファイルに簡単にアクセスできます
  4. 不必要な上書きや重複などでお互いの作業を阻害することなく、同じプロジェクトで複数メンバーの同時作業が可能

「Perforce Helix Coreは、我々の映画制作の基盤となっているツールです。Helix Core があることで、使用するデジタルアセットをすべて一カ所で管理できます。また、重要な IP やデジタルファイルのバージョン管理を、Unreal Engine、5th Kind、ftrack などの主要なツールに対応・連携可能なインフラで行うことができています」
Erik Weaver, Director, Adaptive Production & Special Projects at ETC

無料で使えるバージョン管理ツール「Helix Core」

Helix Core は 5 ユーザー、20 ワークスペースまで無料でご利用いただけます。

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バージョン管理の基礎を学ぼう

Helix Core を使ったプレビズ・ワークフロー構築の方法は『Version Control in Virtual Production Field Guide』をご参照ください。

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