水中侵入者探知ソーナー「Sentinel IDS」

Sentinel IDS(Intruder Detection Sonar)は世界で最も多い運用実績を持つ水中セキュリティ向けソーナーです。2006年にリリースされて以来、官公庁、軍用、商用、プライベートの沿岸設備など様々な沿岸セキュリティの要望に対応できるように開発・改良されてきました。
このソーナーは周囲360°を半径最大1.5kmの範囲でモニタリングし、誤警報率(誤報)を実現しながら高い探知率で侵入者を早期警戒します。
港湾設備や船舶周辺に展開・設置され、水中から接近してくるダイバーや小型ビークルを早期に(遠距離で)探知し、追尾、類別してオペレータへ警報を出します。

特長

  • 最大半径1.5kmの長距離(警戒範囲7km2以上)での警戒監視が可能
  • 高性能ADT※1アルゴリズムによる自動探知・追尾・類別
  • 実運用を想定したパラメータ自動設定による常時オペレーション機能と監視オペレータの負担軽減
  • 信号処理/データ処理パラメータの詳細調整も可能
  • 最大で10基のソーナーを1つのコマンドワークステーションに統合
  • 傾斜計、方位センサーを内蔵し、ターゲット情報の正確な位置特定が可能
  • ソーナーエコーデータ及びターゲット情報の外部出力機能
  • 様々な設置方法(海底設置、岸壁設置、ケーブル吊下など。オプション参照)を用意

テクノロジー

ADT(Automatic target Detection and Tracking, 自動目標探知追尾)アルゴリズムについて※1

ADTアルゴリズムとは、リアルタイムでソーナーのエコーデータを分析し、指定したエコー情報を持つ信号をターゲットとして探知し、時間とともにその動きを追尾しながらターゲットを類別していくためのデータ処理アルゴリズムです。

処理の最初の段階では、ソーナーのエコーの中から特定の情報を持つエコー(反射強度、エコーのサイズ、エコー内の強度分布など)を探知します。このときにエコーの位置が「ターゲット候補」として特定されます(ソーナーの信号を直接解析するのは多くの場合ここまでです※2)。

次に、エコーの位置が時間とともにどのように変わっているかを、過去のエコーデータから得られたターゲット候補の位置情報と比較していきます。この際に過去のターゲット候補情報がどのような運動をするはずか、という想定の元に推測された位置の付近に、最新のターゲット候補が存在していれば、「移動している」ということが判明します。

これを順次継続していくことでターゲット候補を連続的に追尾することになり、結果として移動航跡(運動パターン)が得られます。

最終的に、エコーの形状(強度分布)、航跡、移動速度、追尾時間や、(防護拠点までの)距離といった戦術的な情報を加味し、ターゲットの危険性を判断します。たとえば動きが長時間ランダムで、動きがそれほど大きくないものは魚群と考えられ、直線性を持つターゲットなどは単独又は少数で泳ぐダイバー/大型魚類/哺乳類という推測ができます。
更にそこから移動の方向や航跡などから、侵入者かどうかを特定します。

※1:本稿では、本製品とは直接離れて、一般的な技術論についての解説をしております。幾つかの技術は本製品にも盛り込まれておりますが、この製品に関する技術を特定する内容が含まれているわけではありませんので、ご留意ください。

※2:環境要因や装置の運用の範囲で生じる、エコーの確率的な揺らぎにより探知が難しくなるケースを考慮し、探知に一時的に失敗した場合でもロストしないような、2段階探知のような特殊なアルゴリズムなどもあります(https://doi.org/10.3135/jmasj.37.77)。

仕様

Sentinel IDS ソーナー 仕様

パラメータ 性能
寸法・重量
ソーナー直径 x 高さ Φ300mm x 432mm
空中重量 45.5kg
(Super Duplexステンレス鋼ハウジング)
水中ケーブル長 ~65m(銅線)
~2,000m(光ファイパ・電源)
物理仕様
中心周波数 70kHz
帯域 20kHz
受信チャンネル数 128
送信チャンネル数 8
方位精度(S/N比に依存) 0.1º ~0.5º
垂直方向 送受信ビーム幅(3dB) 11º
標準ソースレベル 206dB re 1mPa @ 1m
最大動作水深 標準50m(50m以上は別途相談)
消費電力 ソーナーヘッド1台につき 65W
探知性能
最大探知レンジ(ダイバー) ~900m
最大探知レンジ(ビークル) 1500m
ネットワーク化 可能

システム構成

コンポーネント

ソーナーヘッド

ソーナーヘッドは、電源供給を受けて、音波を送受波する装置です。またターゲットに当って返ってきた音波を電気信号に変換して取り出し、信号処理(ディジタル化、ノイズ処理など)のための下処理を行います。

ソーナープロセッサ

ソーナープロセッサは、ソーナーヘッドから出力されてきたエコーデータから、探知、追尾、類別処理を行う装置で、本製品群の中心となる処理装置です。

コマンドワークステーション

コマンドワークステーションは、ソーナープロセッサで処理されて出力されたターゲット情報やソーナーのエコーデータ(表示用)を受取り、戦術画面として監視状況の情報を表示したり、オペレータからのコマンドを受け付ける機能を持っており、いわばユーザーインターフェースとして機能します。

ケーブル(水中導線ケーブル)

ケーブルはソーナープロセッサとソーナーヘッドを結ぶ信号・電力供給経路です。導線タイプ(メタリックケーブル)は65mまでサポートしています。

ソーナーヘッド1基の例

多数設置の展開例

基本的には上のソーナーヘッド1基の例に対して、複数の「ソーナーヘッド+ソーナープロセッサ」がコマンドワークステーションに接続されるというモデルになります。
10基以上の構成の場合は、適宜コマンドワークステーションを複数設置し、更に上位の外部統合システムでターゲット情報を集約して管理・表示することも可能です。

オプション

幅広い設置・運用の要求に対応できるように、以下のオプションをご用意しております。

光ファイバーケーブル

最大2,000mまで延長できる、光ファイバーケーブルです。岸壁から離れた場所にソーナーヘッドを設置するような場合には、遠距離のデータ伝送で劣化の少ない本オプションを使って沿岸から離して複数敷設することで、広い沿岸に対して広範囲な水中間子が実現できます。

F/Oコンバータ

光ファイバーケーブルとソーナーヘッド、及び光ファイバーケーブルとソーナープロセッサの間のインターフェースコンバータです。光ファイバーケーブルをご利用になる場合にはぜひお使いください。

海底仮設用三脚式フレーム

海底にソーナーヘッドを短期間だけ設置する場合に遠方まで監視が可能になるように、海底から少し高い場所にソーナーヘッドを設置できるように、本オプションを使用することをお勧めしております。仮説でも設置が可能となるようなフレーム式の三脚です。

船舶搭載用昇降機

船舶にIDSを搭載し、停泊中などに侵入警戒を行う場合には、運用が楽になるように専用の昇降機をご用意しております。使用しない場合は揚収して船内に保管しておくことで速やかな展開・運用が可能になります。

船首仮設用ポール

船舶で短期間だけ使用するような用途の場合、急速展開したり、取り外しができるようなセットアップを考慮する必要がありますが、そのような場合にお使いいただけるオプションです。船首付近に取り付け、直下に展開していきます。

舷側設置用ポール

船舶で短期間だけ使用するような用途の場合、急速展開したり、取り外しができるようなセットアップを考慮する必要がありますが、そのような場合にお使いいただけるオプションです。舷側付近に取り付け、直下に展開していきます。

海底設置用タワー

長期間の運用を想定する場合に使用するオプションです。海底付近に設置する際、かつ水深が相当程度深い場所での運用が必要となった場合にお使いいただけます。
対象エリアの水深分布を考慮し、海面・海底付近で死角がなくなるような設置方法が可能になります。

岸壁設置用レール

長期間の運用を想定する場合に使用するオプションです。岸壁から下ろして水面を監視させる際、背面は監視する必要がない※1ため昇降装置を設けて、必要に応じてメンテナンスがしやすいようになっています。また潮位の干満の激しい場所での運用では、潮位の変動に応じて設置深度を変更することも可能です。

水中拡声器

IDSで探知・追尾・類別が出来たターゲットに対して、必要に応じて接近をさせないように、警報音や予め用意された警告音声を放送することで、侵入者に退避を促す装置です。

※1:180°監視のためのソーナーヘッド仕様は、360°監視の場合と最大監視レンジ、探知分解能などの仕様は同じです。

アプリケーション

仮想的な設置

オリンピックやG7,G8サミット、APECなどで国外からも主賓を含むたくさんの入国者がが招聘されるようなイベントでは、イベント会場付近の沿岸での侵入経路の安全確保が非常に重要となります。
弊社はこれまでも2008年のG8サミット、2010年のAPEC、2016年のG7サミットなどで水中セキュリティソーナーを用いた水中警備の業務の運用サポートの協力をしてきました。
このようなイベントでは、短期間ながら確実な運用が可能になる製品をご提供しております。

 

長期運用に向けた設置

港湾や沿岸設備の岸壁の水中セキュリティアプリケーションでは、設置方法だけでなく海中環境の長期変動に対応した信号処理パラメータのチューニングが必要となってきます。
このようなアプリケーションの元では、あらゆる海洋現象を考慮した施工設計が可能な建設会社様や海洋計測のノウハウに長けた調査会社様のご協力の下、最大限のパフォーマンスが発揮できるような設置、運用方法のご提案や、運用トレーニングなどのサポートを致します。