EV充電規格の動向 ~CHAdeMO 1000V対応の進展と東陽テクニカの取り組み~

EV充電イメージ

電気自動車(EV)普及のための課題の一つとして、充電時間の長さが挙げられます。従来、日本国内では急速充電時の電圧が450V以下でなくてはならないと解釈されていたため、高電圧化の対応が遅れているとの指摘もありました。2024年10月に政府の指針が改正されたことにより、日本でも1000Vまでの充電が可能になりました。ここでは1000Vまでの充電が可能になった背景と、それに伴う東陽テクニカの取り組みをご紹介します。

背景と概要

CHAdeMO規格は数回のバージョンアップが行われてきましたが、2018年5月に発行された「CHAdeMO 2.0」で既に1000V対応が盛り込まれていました。しかし、日本国内では経済産業省が定める「電気設備の技術基準の解釈(電技解釈)」により、EV充電器の設置には「対地電圧が直流450V以下であること」という制約があり、キュービクルを設置する場合でもこの要件が適用されるという解釈が一般的でした。CHAdeMO2.0の付属書の中でも、自主規制として国内向けでは450V以下とすることが記載されていました。

一方、海外では1000V対応の充電器が既に普及しており、日本の充電インフラの高出力化の遅れが指摘されていました。この点について、2023年6月から開催された経済産業省主催の「充電インフラ整備推進に関する検討会」でも課題として取り上げられ、2024年10月の電技解釈改正では、キュービクルを設置する場合には1500V以下の設備が認められることが明記されました。これにより、国内でも1000V対応の充電器設置が可能となりました。2025年3月に発行されたCHAdeMO2.0.4でも「450V以下」の記載は削除されています。

[参考資料]

従来との違いと技術的な進化

これまで国内で採用されてきた仕様(最大450V)と比較すると、1000V対応により高出力充電が可能となり、充電時間の短縮が期待されます。海外メーカーのEVでは、これまで日本市場向けに電圧を下げて対応していたケースもありましたが、1000V 対応の充電器が普及すればその必要がなくなります。

また、同じ出力(kW)であれば電流(A)を抑えることができるため、充電ケーブルの細径化が可能となり、ユーザーの利便性向上にもつながります。

技術的なポイントと課題

CHAdeMO規格では、500Vを超える充電を「拡張機能」として位置づけており、充電器とEVの双方が高電圧に対応していることを確認した上で充電を開始するシーケンスが採用されています。一方コネクタも高出力対応のものが必要ですが、現時点では対応製品が限られており、今後の開発が期待されます。

高電圧化に伴う設計や安全面の課題としては、EVや充電器の性能確認を行う試験設備の不足が挙げられます。東陽テクニカでは、こうしたニーズに応えるべく、評価サービスの提供を通じて技術支援を行っています。

また、高電流化に伴う熱対策も重要な課題です。現状ではCHAdeMO仕様の液冷ケーブルやコネクタは販売されていませんが、今後の技術開発が求められています。

市場と利用者への影響

1000V対応により、EVの充電時間短縮が期待されるだけでなく、充電ケーブルの取り回しが容易になることで、ユーザーの利便性も向上します。EV購入を検討するユーザーにとっては、急速充電の性能が購入意欲に大きく影響する要素となるため、1000V対応は市場拡大にも寄与すると考えられます。

充電インフラ事業者にとっては、設置コストの増加という課題もありますが、EVの普及により充電器の利用率が向上すれば、好循環が生まれる可能性もあります。

東陽テクニカの「1000V対応評価サービス」

東陽テクニカでは、ドイツcomemso社製のEV充電アナライザ/シミュレータを2015年から輸入・販売・サポートしており、2023年9月には東京・木場にEV充電テストラボを開設しました。今回ご紹介した1000V対応のCHAdeMOはもちろんのこと、CCS、NACS、GB/Tなど各種規格に対応した接続性試験を受託サービスとして提供しています。

このサービスは、EVを開発する自動車メーカーや充電器を開発する充電器メーカー向けに提供しており、試験結果の分析や改善提案も含めた技術支援を行っています。機密保持にも細心の注意を払い、試験環境や搬入・搬出時の対応にも万全を期しています。

充電規格は現在も進化を続けており、充電料金の徴収方法や建物への電力供給など、周辺領域まで含めた仕組みづくりが求められています。東陽テクニカでは、こうした最新技術に対応し続けるため、設備・技術のアップデートを継続していく方針です。

お問い合わせ先

株式会社東陽テクニカ eモビリティ計測部