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インタビュー
 葛巻 清吾氏 - 株式会社東陽テクニカ 取締役 小野寺 充

日本における自動運転の現状とこれから
~5Gに期待すること~

自動運転の世界でも、5Gは大きな役割を担うことになると期待されています。国も自動運転の進展には力を入れており、科学技術イノベーション実現のために創設された国家プロジェクトである内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)において、省庁や企業の枠を越えた研究開発が続けられています。そこでSIPの自動運転プログラムディレクターを務める葛巻清吾氏に、我が国における自動運転の取り組み状況や、5Gへの期待などについてお話を伺いました。

目次

“技術ありき”ではなく社会ニーズを起点とすること

—— 小野寺:CASE(Connected、Autonomous、Shared/Service、Electric)という言葉が自動車業界のトレンドです。
「A」の自動運転の技術開発の現状について教えていただけますか。

葛巻:自動運転に関する技術開発がここまで盛んになっている背景は大きく二つあります。一つはICTやAIといったデジタルテクノロジーが進展したことで急速に実用化のレベルが上がったことです。なぜなら、ICTによって周辺状況や位置データなど自動運転に必要なさまざまな情報がリアルタイムでやり取りされ、そうした情報をAIが処理することで、車そのものがより“賢く”動けるようになるからです。それは事故を減らしたり、効率的なルートで移動したりといった現実的なメリットをもたらしますし、最終的には全て人間の代わりに機械が運転するところまでを目指していくとされています。自動運転は人間にとってそれだけ大きな価値があるため、自動車業界をはじめとする多くの業界を巻き込みながら競争も激しくなっています。
一方で、自動運転というのはシステムとして見るとさまざまな要素が絡み合った複雑で難しい技術ですので、個々の企業だけで取り組むというのはほぼ不可能です。例えば公道を自動運転するとなった際には普通の車両とどのように共存するのかなど、さまざまな社会的なインパクトを想定したり、法制度の見直しについて話し合ったりと、省庁や企業などの枠を越えて協調して取り組まなければいけないテーマです。それこそがSIPの役割であり、またSIPをはじめ国を挙げた体制が整ったことが、日本において自動運転が盛り上がりを見せているもう一つの理由であると言えます。

—— 小野寺:自動運転のレベル定義で、現在はステアリング操作と加減速操作で運転を支援するレベル2の段階と言われています。今後、レベル3以降の本格的な自動運転の領域に入っていくわけですが、実際どのレベルまで現実味を帯びてきているのでしょうか。

葛巻:個人的な見解ですが、あらゆる状況にあっても自動車の操作が自動化されて人間は一切の操作が不要となるレベル5に関しては、残念ながら実現は困難と考えています。ただし、特定の場所については全ての操作が完全に自動化されるレベル4に関しては、最初はかなり条件が絞られるとは思いますが、いずれ実現できるでしょう。そうして絞った条件を少しずつ広げながら普及していくというのが現実的でしょうね。実は、レベル4は既に実用段階になっていると言えます。例えば工場の中では無人搬送が実現されていますし、専用道路でもそう言っていいケースがあります。
注意しなければいけないのが、何のために自動運転を行うのかという本質を見失わないようにすることです。決して「レベル上げありき」で取り組むべきではありません。自動車事故を減らしたいであるとか、過疎地域を中心に公共交通の運用課題がある中で移動の自由を誰もが享受できるようにしたいなどの社会的ニーズがまずあって、それに応えるために自動運転の技術をどのように用いるかを考えるのが正しいプロセスでしょう。そうした視点なら、例えば、公共交通をいきなり無人化する必要はなく、ベテランドライバーでなくても安全で楽に運転できるようにすれば現状でも十分価値があるはずです。このように議論をしていくことが大事であると思っています。

—— 小野寺:地方でバス路線が廃止されたりする中、高齢者らに移動の自由を提供するために自動運転の活用が大きな鍵となるというお話、よく理解できました。

5Gは自動運転に何をもたらすのか

—— 小野寺:CASEの「C(Connected)」というのは、Aの自動運転に関してどのような意味を持つのでしょうか。

葛巻:自動運転の基本的な仕組みは、地図や交通環境に関する情報をデータとして車に取り込み、車側で判断して制御するというものです。特にこれからはさまざまなセンサから送られてくる情報を用いて今の自分の位置を推定したり、周りの状況を理解するために、Cは欠かせません。
実は、人だけの運転であってもCの恩恵はたくさんあります。例えば、高速道路で本線に合流する前の段階で本線上の混雑度を知ることで、より安心・安全な合流ができますよね。このように交通環境情報は運転支援にも活かせるわけです。

—— 小野寺:Cの部分について5Gがどのような恩恵をもたらすと見ていますか。

葛巻:5Gのメリットは、大容量のデータを小さな遅延で送ることができ、かつ同時接続可能な端末も多いという点です。そのため自動運転でも5Gを活用できる領域はとても多いはずですが、5Gなら安全でそれ以外の通信方式では安全ではない自動運転などあってはなりません。4Gであろうとそれ以外であろうとどの通信方式でも安全でなければいけないのです。まずユースケースに目を向けて、それに必要な技術の一つとして5Gを捉えるべきでしょうね。
ただ、現在のように多様な通信方式が混在していると、車に搭載する送受信装置もバラバラになり決して効率的とは言えません。いずれ5Gに統一され一つの送受信装置で全てのことができるようになる可能性があるので非常に期待しています。

—— 小野寺:5Gで接続端末が増えれば、車内のセンサから送られるデータも有効活用できそうですね。

葛巻:はい。今はインフラからの交通環境情報の活用が進んでいるところですが、今後は車両プローブ情報の利活用が広がっていくことでしょう。それらのデータをどう使うのか、どのようなデータ形式に統一するのかを複数の自動車会社を交えて議論することが欠かせません。SIPでも、第1期では皆で地図を使えるようにしようと取り組みましたし、第2期では信号情報や車自体の情報を地図にどう活用するか議論を進めています。データが鍵となる以上、インターフェースとフォーマットをどうするかがとても重要になりますよね。

—— 小野寺:となると、企業と企業、そして省庁間で手をつないだ自動運転の取り組みがますます求められてくるわけですね。そこは引き続きSIPの活躍にも期待しています。ありがとうございました。

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