SkyDrive CEOが語る、
未来のエアモビリティ社会への挑戦
「空飛ぶクルマ」が創る新しい移動体験

株式会社SkyDrive 代表取締役CEO 福澤 知浩氏

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目次
  1. 大阪・関西万博デモフライトの成果と世界からの反響
  2. 開発・認証・事業構想。空飛ぶクルマの実現に向けて
  3. ゼロからの挑戦を支える原動力とSkyDriveの組織文化

SkyDrive CEOが語る、未来のエアモビリティ社会への挑戦 「空飛ぶクルマ」が創る新しい移動体験

2025年の大阪・関西万博での「空飛ぶクルマ」のデモフライトを成功させ、国内外から大きな注目を集めている株式会社SkyDrive。東陽テクニカルマガジンでは、2023年10月に同社のエアモビリティプロダクトマネジメント部長(当時) 福原 裕悟氏にインタビューを行い、大阪・関西万博でのデモフライトに向けて、「空飛ぶクルマ」の開発にかけるエンジニアの想いをお聞きしました。
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そして今回は、大阪・関西万博でのデモフライトを終えた今、あらためてSkyDrive社の代表取締役CEOである福澤 知浩氏にお話を伺いました。万博会場でのデモフライトの反響、さらに空飛ぶクルマの本格的な事業化に向けた課題、世の中にないものをゼロから創り出す挑戦をするうえでの原動力などについて、詳しく語っていただきました。

SkyDrive ロゴ

【インタビュアー】
株式会社東陽テクニカ 取締役 常務執行役員 小野寺 充

大阪・関西万博デモフライトの成果と世界からの反響

福澤 知浩氏

大阪・関西万博、そして大阪港バーティポートでの約1ヵ月半にわたるデモフライトお疲れ様でした。弊社からも私を含めた数名が、大阪・関西万博でのデモフライトを拝見することができました。今回のプロジェクトを終えて、どんなご感想をお持ちでしょうか

万博会場では期間中、機体展示に143万人以上もの方々が訪れてくださり、デモフライトも多くの方に見ていただくことができました。こんなにも多くの方にご覧いただけたことが今回のデモフライトの何より大きな成果でしたね。プロジェクトにかかわってきたメンバーにとって、普段は自分たちのプロダクトを直接見てもらったり、フィードバックを得たりする機会は非常に少ないので、実際に飛行を披露したうえで、多くの観衆の反応を肌で感じることができたのは、大きな刺激になりました。

大阪・関西万博でのSKYDRIVEのデモフライトの様子(株式会社SkyDrive提供)

また、開発面でも多くの知見を得ることができました。エンジニアたちも、大勢の観客の前で飛ばすのは初めてで当初は緊張していましたが、回数を重ねるうちに慣れてきて、今後の運用やオペレーションにつながる知見も得られ良い機会になったと感じています。多くの来場者からも、直接「空飛ぶクルマを早く実現してほしい」という期待の声をいただきました。生で見ていただいたことで、我々が目指す「静かで、環境に優しく、未来的なカッコいい乗り物」というコンセプトに共感いただけたと嬉しく思います。

実際のデモフライトの終了後、見学されていた数多くの皆さんが大きな拍手を送っていたのが印象的でした。デモフライトでは、国内だけでなく、海外からも大きな注目を集めたと思います。どのような反応が寄せられましたか

現在、フルスケール機によるデモフライトを行い、認証プロセスのうち「グローバルの型式証明の取得」まで進んでいる企業は、世界でわずか5社しかありません。アメリカに3社、イギリスに1社、そしてSkyDriveです。世界で数百社が空飛ぶクルマの開発に取り組んでいると言われていますが、我々はその最前線にいると自負しています。あとは認証さえ取れば事業を開始できるという段階まできており、今回世界中の空飛ぶクルマに興味を持つ関係者にデモフライトをご覧いただけたことで、期待感を高めていただけたのは間違いないと思います。

具体的な商談や相談もありましたが、我々からは「商業運用が始まってから検討するのではなく、ぜひ始まる前から一緒に検討しましょう」と呼びかけています。実際に、具体的な検討を進めてくださる企業も少しずつ増えています。

なるほど、認証を取れたら、ということで目指すべき先が見えてきた段階ということですね。空飛ぶクルマの利用用途について、さまざまな可能性があると思いますが、どのような想定がありますか

遊覧やタクシーとしての利用を想定する声が多いですね。遊覧は「美しい景色を楽しむ体験価値」が得られるものとして、タクシーは「時間を短縮できる移動価値」の高いものとして想定されているケースが多いです。ほかにも、防災・救命など公共性の高い用途への関心も高まっていますし、地域ごとに空飛ぶクルマの異なるユースケースも見えてきました。

デモフライトを行った大阪の万博会場を例にすると、通常1時間程度かかる新大阪までの移動が空飛ぶクルマではわずか15分程度になります。神戸までも12分程度で行けるようになりますし、そこから六甲山へ向かって景色を楽しむ、といった今までの交通手段では考えられなかった新しい移動体験が可能になります。万博会場で空飛ぶクルマのリアルな飛行をご覧いただいて、「これは現実のものになる」と、その可能性を実感された方も多かったように思います。

2025年度中(2026年3月まで)に、東京の湾岸エリアでデモフライトを行う予定ですので、大阪・関西万博でデモフライトを見られなかった方も、ぜひ足を運んでいただきたいです。さらにパフォーマンスが向上した機体をお見せできると思います。

開発・認証・事業構想。空飛ぶクルマの実現に向けて

福澤 知浩氏

おっしゃる通り、実際の飛行を見ることで、今までにはない新しい可能性を感じた方も多かったでしょうね。それでは次に、今後の事業展開と開発についてお聞きします。SkyDrive社は機体開発だけでなくサービスの提供も考えているのでしょうか

我々はメーカーなので、基本のビジネスは機体の販売です。運航サービスは地域ごとに最適な形が異なるため、その地域の方々に担っていただくのが良いと考えています。日本であれば鉄道会社さんなどがパートナー候補になり、すでにJR東日本さんやJR九州さん、近鉄グループホールディングスさん、Osaka Metroさんなどと連携を進めています。また、自治体には離発着ポートの設置場所の提供や交通整理など、地域実装をサポートいただく予定です。そして、SkyDrive、運航事業者、自治体の三位一体で空飛ぶクルマの事業を進めていくイメージですね。

鉄道事業者や自治体と連携することで、その地域特性に合ったサービスの提供につなげていきたいということですね。その事業化に向けた開発状況については、いかがでしょうか

具体的な事業開始に関しては2028年を目指しています。認証に関しては、日本とアメリカ東海岸の事業拠点で並行してプロセスを進めていて、日本では2026年以降に認証取得、その後にアメリカでも取得する計画です。

現在の開発状況としては6~7合目といったところでしょうか。一番大きな課題は、やはり認証のプロセスです。技術的に大きな設計変更を伴う課題はほとんど残っていません。例えば、ホバリング時に機体がわずかに前へ流れてしまう挙動を、ローターフレームの形状や空気の流れを調整して改善したり、スピードを向上させたり、ヘリコプターと同等の耐風性能を持たせたりといったスペック向上を日々行っているところです。どれも計算上もシミュレーター上も実現可能であることは分かっているので、あとはそれを実機で確実に再現していく作業になります。基本性能に関してはすでに実証できていますね。

ほかには、空飛ぶクルマはバッテリーも非常に重要なポイントです。バッテリーセルの並列・直列の組み合わせなどを最適化することで、さらに性能を最大限に引き出せるよう、常に議論と試験を重ねています。

空飛ぶクルマは電動。大阪・関西万博で充電している様子(株式会社SkyDrive提供)

さまざまな技術課題をひとつひとつクリアしてきて残る大きな課題は認証とのことですが、空飛ぶクルマにはヘリコプターなどとは異なる新しい基準が必要になるのでしょうか

認証項目はヘリコプターとほぼ同じですが、空飛ぶクルマは、乗客数が19名以下かつ最大離陸重量8,618キログラム(1万9,000ポンド)以下の固定翼機の耐空性要件を定めたもので、機体の特徴に合わせて安全性を示す方法をメーカーが柔軟に選択できる最新のものになります。飛行できる高度など、ヘリコプターと同様の厳しい基準をクリアする必要があります。

ただし、空飛ぶクルマはヘリコプターと比べて次の3つの点で大きく異なります。

・電動でCO₂を排出せず環境に優しいこと
・圧倒的に静かであること
・自動制御が容易で、将来的にパイロット不足の解消につながること

このように、従来の航空機とはまったく異なる価値を持っているのが空飛ぶクルマなのです。特に静粛性は重要で、電動モーターで駆動しているため、生活音に溶け込んで音が気にならないほどです。この点はデモフライトでも多くの方に感じていただけたはずです。これだけ静かだからこそ、都市部での運航も現実的になるわけです。

デモフライトが実施された「大阪港バーティポート」は、周辺に住宅や店舗、エンターテイメント施設などがある(株式会社SkyDrive提供)

確かに、デモフライトでは音が静かなことにあらためて驚きました。先入観で、ヘリコプターのような音量イメージがあったのですが、まったく違っていて、見ると聞くとは大違いでした。
今後、空飛ぶクルマが社会のインフラとして認められるためには、どのようなハードルがあるとお考えですか

まず、1つ目が離発着場所であるポートの数をどこまで増やせるかです。次に、社会受容性の確保が課題です。新しいモビリティとして社会に受け入れられるよう、理解を得ることも大切です。そして、最後に何より、事業として成立しなければ普及はありえません。この3つが、実用化に向けた最大のポイントだと考えています。

なるほど、よくわかります。現在、SkyDrive社には鉄道会社からの出資が多いですが、鉄道と空飛ぶクルマの連携はどのような未来のモビリティ像につながるのでしょう

我々にとって身近な交通機関、電車や新幹線のように、空飛ぶクルマも思い立った時にすぐに乗れる乗り物となることを目指しています。数日前からの予約が必要な飛行機や、そもそも選択肢にすら入りにくいヘリコプターのカテゴリーではなく、もっと身近な、気軽に利用できる新しいモビリティのカテゴリーに近づけていきたいのです。

例えば、品川駅で在来線を降りて、そのままSuicaで改札を通って新幹線に乗ることができるように、Suica1枚で簡単に空の移動へ乗り換えられるといったシームレスな移動を実現したいと思っています。空飛ぶクルマのサービスと、鉄道会社さんのネットワークが一体となることで、非常に身近で今までなかった便利な移動体験が生まれると我々は考えています。

「Japan Mobility Show 2025」における展示(株式会社SkyDrive提供)

ゼロからの挑戦を支える原動力とSkyDriveの組織文化

福澤 知浩氏

福澤さんは2018年のSkyDrive社創業時から、世の中にないものをゼロから創り出すという大変な挑戦を続けてこられましたが不安はなかったのでしょうか。またその決断の裏には、どのような想いがあったのでしょう

SkyDriveの起業に関しては、不安はほとんどありませんでした。もちろん資金面での心配はありましたが(笑)、起業そのものを迷うことはなかったですね。トヨタに所属していた時代からボランティアとして空飛ぶクルマの開発に関わる中で、「これは会社としてやるべきだ」という思いが徐々に膨らんでいき、「やるしかない!」と確信に変わる瞬間がありました。自分の中では気持ちが固まっていたので、決断したら一気にことを進めるだけでした。

福澤さんご自身は、技術者ではなく事務系でトヨタに入社されたそうですが、空飛ぶクルマに挑戦した理由はなんですか

もともとはトヨタの調達部門にいました。大学は工学部だったのですが、自分は技術職には向いていないかもしれないと思い、事務系の職種を選んだのです。それでも、モビリティという分野自体には強く惹かれていて、結果的にその想いがいまの空飛ぶクルマへの挑戦に結びつきました。

もちろん最初は苦労もしました。もともとは、月1万円の小遣い制で活動していたボランティアから始まったのですが、途中で資金的にどうにもならなくなってしまって。そこで、SkyDriveを設立する4年ほど前にクラウドファンディングに挑戦したんです。当初の目標250万円に対してはじめは80万円くらいしか集まらなかったですね。そこで、正直くじけそうにもなりましたが、それでも、思い切ってSNSで「応援してほしい」と発信したところ、意外にも多くの人が共感してくれました。

最初は5,000円や1万円の支援をお願いするのにも抵抗がありましたが、多くの人が共感してくれたという成功体験を通して少しずつ感覚が変わっていきました。あの時のクラウドファンディングの経験が、いまのSkyDriveの資金調達や発信活動の原点になっています。何事も、最初の一歩を踏み出せるかどうかが大切だと思います。

何かを始めるとき、不安や心配ばかりが先に立って最初の一歩を踏み出せないという方が日本では多いように思いますが、福澤さんの「まずは最初の一歩を踏み出し新たな可能性を拓いていく」というお考えは大変勉強になります。ただ、その最初の一歩の見つけ方もまた難しいと思います。ご自身の経験を踏まえて、最初の一歩を踏み出すきっかけはどのように見つけるものですか

福澤 知浩氏

昔から心に生まれる“モヤモヤ”を大切にしたほうがいいと思っています。ネガティブな気持ちに見えてもその違和感の中にこそ新しいチャンスが隠れていることが多いからです。いまの仕事や環境に不満を持つ人ほど、実は大きな変化を起こすポテンシャルを持っていると思います。自分が本当にワクワクすることに出会えたら、自然とエネルギーが湧いてくる。ゲームや趣味に熱中した経験がある人なら、心から打ち込める何かに出会えるはずです。

もし今いる環境が自分に合っていないと感じるなら、働く場所や関わる人、住む地域を少し変えてみるだけでも、驚くほどエネルギーが湧いてくることもあるはずです。私自身も行き詰まりを感じた時に引っ越しをして、視界が開けた経験があります。小さな変化を恐れず、何かを変えてみるんです、そして地道に続けることで、必ず自分にフィットする場所や目指すものが見えてくるのではないかと思います。

小さな変化を過度に恐れず、何かを変えてみることで、本来自分自身が持っているエネルギーが湧いてくる、というのは多くの方々にも参考になろうかと思います。
SkyDrive社には多様なバックグラウンドを持つ社員の方が集まっていますが、組織としての強みはどこにあるとお考えですか

ダイバーシティのある環境の中で、うまくワンチームとして機能している点ですね。長く続く航空業界には古い慣習も残っていますが、我々の職場では国籍も働き方もさまざまなメンバーが集まり、外資系のような自由でフラットな文化があります。リモート勤務や在宅ワークもコロナ禍より前から導入し、働く時間や場所を自分で選べる仕組みを整えたことで、特に子育て中の人や、エンジニアをはじめとした海外の人材が力を発揮できるようになっています。多様な価値観が集まって、それぞれの強みを発揮しているのが我々の組織なんだと思います。自由で柔軟な環境だからこそ、新しい発想が生まれるんです。

東陽テクニカは計測分野でお手伝いをさせていただいております。最後にメッセージをお願いいたします

(左)SkyDrive福澤 知浩氏 (右)東陽テクニカ 小野寺 充

東陽テクニカさんにはサポーターとしてご支援いただき大変ありがたく思っております。東陽テクニカさんは新しいことに対して非常に柔軟に取り組んでいらっしゃる方が多いという印象で、歴史ある成熟した会社としては珍しいことではないでしょうか。我々としてはその姿勢が大変ありがたいですね。初期から携わっていただき、プロジェクトが進んでも継続して関わっていただいていることに大変感謝しています。

引き続き、力を合わせて新しい空の移動の形をつくっていければと思っています。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。今後も空飛ぶクルマの実現に向けて、ご支援させていただきます。こちらこそ、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

プロフィール

福澤 知浩氏 写真

株式会社SkyDrive
代表取締役CEO

福澤 知浩氏

東京大学工学部卒業後、トヨタ自動車でグローバル調達に従事。2018年にSkyDriveを創業し、代表取締役に就任。経済産業省と国土交通省が設置する「空の移動革命に向けた官民協議会」の構成員として、「空飛ぶクルマ」の実用化に向けて政府と新ルール作りにも取り組む。

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