その時、その場所で求められるサービスの提供に向けて
~携帯電話端末測位試験システム~

株式会社東陽テクニカ 情報通信システム 営業第1部 無線通信計測グループ 清川 幸哉

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目次
  1. はじめに
  2. 位置情報サービスとアプリケーションの広がり
  3. スマートフォンを用いたLBSにおける課題点
  4. スマートフォンに用いられる測位技術
  5. Spirent社製 携帯電話端末測位試験システム
  6. おわりに

はじめに

昨今のスマートフォンの爆発的な普及に伴い、位置情報データを利用した位置情報サービスが広がっています。本稿では、スマートフォンが位置情報を得るために利用している技術に焦点を当てながら、スマートフォンを用いた位置情報サービスの課題や、当社で取り扱っている製品がこの分野でどのように役立っているかについてご紹介します。

位置情報サービスとアプリケーションの広がり

近年、アプリケーション(アプリ)をユーザ自身で追加できるという特徴から、スマートフォンには数多くのアプリがインストールされ、様々な場所で様々な目的で利用されています。数あるアプリの中でも、スマートフォンの位置情報を利用したものはその利便性から性別や年代、用途を問わず幅広く利用されています。

この位置情報サービス(LBS: Location Based Services)に対応したアプリの代表的なものとしてナビゲーションが挙げられます。目的地までのルート検索や現在地付近のカフェ検索など、日常的に利用可能なものに加えて、最近では、専用のアプリを利用しカーナビの代わりにスマートフォンを活用するサービスも提供されています。これはスマートフォンのデータ通信機能を利用することにより、常に最新の地図、店舗等の情報を提供できる、スマートフォンの特長を強く活かしたサービスです。さらには、ショッピングモールでのクーポンの配布のようなO2O(Online to Offl ine)や地下街での迷子捜索等、屋内でも利用可能な新しいLBSも期待されています。このように、ユーザの現在地に合わせたサービスの提供を可能にするLBSは、LBSを利用するユーザはもちろん、サービスサプライヤの観点から見ても非常に重要なものとなっています。

スマートフォンを用いたLBSにおける課題点

スマートフォンを用いたLBSが広がりを見せている一方で、利用に際した課題もいくつか存在します。主としては以下の4つが挙げられます。

1つ目は画面サイズです。スマートフォンは「携帯」することを目的として作られているが故、カーナビなどの専用機器と比べると画面が小さく、使い勝手の面で不便を感じる場合があります。

2つ目はバッテリーです。LBSを利用したアプリは、位置を特定するための処理に加え、必要に応じていくつかの通信、画面の連続表示等を行うため、利用時に消費電力が大きくなります。そのため、利用状況によっては連続使用が難しい場合があります。

3つ目は測位誤差です。スマートフォンが自分の位置を特定する際、測位位置に誤差を生じることがあります。測位誤差は、後述する測位技術に依存した潜在的なものであるため、小さくすることは可能でもゼロにすることはほぼ不可能です。

4つ目は可用性です。スマートフォンは測位に主に衛星の信号を用います。そのため、衛星の信号を受けにくい屋内やビルの谷間等、場所によっては誤差どころか測位自体ができないこともあります。

画面サイズやバッテリーに関する課題は、外部機器への出力や予備バッテリーの利用等によってユーザ自身で改善することが可能です。しかしながら、誤差や可用性は測位技術やシステムに依存するため、ユーザが対策を講じることができません。その一方で、わずかな誤差や測位不能な場所が存在することが、ユーザに対しスマートフォンやLBSの「使い勝手が悪い」「サービスの品質が悪い」といった印象を与えてしまう可能性があります。言い換えると、スマートフォンはいつでもどこでも素早くかつ高精度で測位できることが求められます。そのような高品質のLBSを提供するためには、限られた時間で適切な位置情報を得ることができる測位技術が必要になります。適切な測位技術が適切に実装されることにより、ユーザによりよいLBSを提供することが可能になるのです。

スマートフォンに用いられる測位技術

一般的な測位に用いられるシステムは、ご存じの通りGPS(Global Navigation System)です。「このGPS、表示している場所がおかしい」このような表現を耳にしたことはありませんか?実はこの表現は誤りで、GPSはアプリや位置情報そのものを指す言葉ではなく、現在位置を特定する(=測位を行う)ためのシステムの名称です。 GPSは三角測量の方式を利用したシステムであり、GPS衛星から届く衛星軌道や時刻情報を含んだ信号を使って、GPS受信機が位置を計算し測位を行います。受信機の座標x, y, zに時刻情報tを加えた4つの未知数を、4つの衛星信号を用いた連立方程式を解くことによって算出する仕組みです。カーナビはこの測位方式をGPS単体で利用していますが、スマートフォンやフィーチャーフォン等の現在利用されている携帯電話では、Assisted GPS (A-GPS)と呼ばれる測位方式が広く採用されています。

A-GPSは、アシスト情報と呼ばれる、携帯電話から見えるべき衛星の情報を、携帯電話の無線ネットワークを介して携帯電話に送る方式で、アシスト情報のない一般的なGPS測位方式と比べると測位にかかる時間が大きく短縮されるというメリットがあります。そのため、測位によって得られる位置情報を、様々なサービスへ容易に応用することが可能になります。消費電力という観点で見れば、衛星を探索する必要がなくなるため、電力の消費を抑えることにも役立ちます。

また近年では、衛星を使った測位技術としてGPSに加え、ロシアの衛星GLONASSやヨーロッパのGalileo、日本の準天頂衛星QZSSなど、様々な衛星の信号が利用され始めています。これらは総称して、 GNSS (Global Navigation Satellite System)と呼ばれており、複数種類の衛星のアシスト情報を使った測位方式は、 A-GNSSと呼ばれています。特に現在は、 GLONASS衛星に関するアシスト情報を利用したA-GLONASSの利用が広く検討されています。A-GLONASSは主にA-GPSと組み合わせて利用され、A-GPS単体の測位と比べてより広範囲での測位を可能にします。今後、Galileo、QZSS等の利用も広がっていくことが予測されており、複数の衛星信号を用いることによってスマートフォンの潜在的な測位誤差は最小化されることが見込まれています。衛星信号を用いる測位方式は、前述の通り、衛星信号を得ることができない屋内では当然のことながら位置を特定することはできません。その際に活用されるのが、A-GNSSに様々な測位技術を組み合わせたハイブリッド測位です。ハイブリッド測位に利用される測位技術について以下にいくつかご紹介します。

WiFi測位

WiFiのアクセスポイントの信号情報を基に測位を行う方式です。GPSと同様の手法である三角測量、もしくはパターンマッチングアルゴリズムのどちらかの手法を用いて位置を算出します。

セル測位

測位に携帯電話基地局の情報を用いる方式です。携帯電話が通信を行っている基地局の位置をベースに位置を算出する方式や、基地局が出すリファレンス信号を用いて測位を行う方式があります。

内蔵センサ

内蔵センサによる測位は、先に述べた絶対的な位置を特定する測位方式とは異なる推測測位方式です。ジャイロスコープや加速度計などから得られるデータを利用し、初期位置からどのように動いたかを推測します。この方式は主に絶対位置を特定する測位方式の補助的な形で利用されます。

このような、その時、その場所に合わせた測位技術を活用することにより、時間や場所を問わずにユーザの要求に合わせたLBSを提供することが可能になります(図1)。

図1:シーンに合わせて利用される測位技術

Spirent社製 携帯電話端末測位試験システム

様々な測位技術が用いられるスマートフォンにおいて、先に述べた誤差や可用性の課題への対策の評価を行うためには、それらが利用される実環境に近い、疑似的な環境を構築する必要があります。具体的には、スマートフォンが通信を行う携帯電話網やコアネットワーク、測位に必要な情報を得るためのGNSS衛星やWiFiアクセスポイント、センサ情報等です。アシスト情報を利用する場合、測位サーバも必要になります。スマートフォンの測位機能を評価するためには、これらの環境下において、測位パフォーマンスを把握するための反復試験や測位シーケンスを確認する試験が求められます。例えば、A-GNSSの機能を持つスマートフォンの測位機能の評価は、図2のような試験環境により実現が可能です。

図2:A-GNSS対応スマートフォンの評価系の例

当社では、このような試験のご要求に応え得る試験システムとして、米国Spirent Communications社(以下、Spirent社)製携帯電話端末測位試験システム(LTS: Location Technology Solution)を取り扱っております。Spirent社は、20年以上に渡りGPS、GNSSシミュレータの開発メーカとしてLBS試験業界をリードしてきました。2001年に世界で初めてA-GPS試験システムの販売を開始し、現在では携帯電話端末の認証団体であるGCFやPTCRBにLTSがLBS試験機として認定されるなどLBSの業界標準試験にも大きく貢献しています。

Spirent社が提供するLTSは、上記疑似環境をすべて備えることで、ユーザの目的に合わせた試験を実施するフレキシブルな環境を提供します。例えば、測位パフォーマンス試験として、スマートフォンの測位精度、TTFF等を測定することで、測位誤差の最小化や測位の高速化に向けた設計/開発に役立ちます。また、機器構成としてベンチトップ型からフルラックマウント型までご用意しておりますので、必要な環境を試験対象テクノロジ、ご予算等に応じてご提供可能です。さらには、外部機器と組み合わせることでバッテリー試験や通信速度試験にもご利用いただくことが可能です。 LTSは、国内外を問わず携帯電話端末・チップセットの開発、携帯電話事業者の端末受入れ試験、認証機関での評価試験等、幅広い用途で様々なお客様にご利用いただいております。

図3:Spirent社製 携帯電話端末測位試験システム(8100-B500型)

おわりに

本稿では、スマートフォンで利用される位置情報サービスの課題や当社取り扱い試験システムについて、測位技術に焦点を当てながらご紹介しました。LBS市場は世界的にも拡大しており、米国のE911(緊急呼位置サービス)なども含め、今後もインドア/アウトドアを問わず様々なサービスが展開されると予測されています。また、測位技術という観点でも、新しい技術やプロトコルの準備が進められており、近いうちにそれらに対応したアプリケーションが出てくることが見込まれております。当社では、このような技術の最先端で仕事をされているお客様のニーズに合わせ、今後も最新かつ最適なLBSソリューションを提供してまいります。

筆者紹介

株式会社東陽テクニカ 情報通信システム 営業第1部 無線通信計測グループ

清川 幸哉

2008年東陽テクニカ入社以来、無線通信分野の計測器の営業を担当。無線伝搬路や携帯電話の測位技術関連の製品が専門。