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音・振動計測は次の時代へ
PAK Capture Suite

株式会社東陽テクニカ 営業第2部 森田 善仁

本記事の内容は、発行日現在の情報です。
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目次
  1. 多様化する計測機器へのニーズ
  2. タブレット端末、スマートフォンの利用
  3. 標準化団体ASAM
  4. PAK Capture Suite

Mueller BBM社製PAKシステムは、幅広いアプリケーションを網羅した音・振動分野のトータルソリューションとして、自動車産業を中心に世界中で活用されています。複雑な振動・騒音現象に対して、様々な視点からアプローチする事により、効率良く対策の指針を示すことができます。

多様化する計測機器へのニーズ

近年の自動車業界は、ハイブリッドシステ ムなどの新しい技術が投入されるだけでなく、世界規模でのプラットフォームや部品の共通化が進められるなど、業界全体で様々な取り組みが行われています。また、海外調達・海外生産にシフトすることにより、研究・開発における組織構造も見直され、これまでは特定の地域に集約されていた実験・評価部門が世界各地に点在するようになりました。その結果、海外のサプライヤー、海外拠点と国内開発拠点間での、データの受け渡しがより頻繁に行われるようになり、 “データの管理・運用”は短期間で高品質な製品を開発するために重要な要素となっています。これらの背景を元に、計測機器には下記のような機能が求められてきています。

・生産現場やテストコースなどのフィールド計測で使用することを考慮し小型で可搬性に富むこと
・操作方法が簡便であり、作業者によらず必要最低限のデータを適切に取得できること
・計測結果をその場ですぐに確認できること
・計測した結果を各部門で共有できるように効率良くデータベースへ登録できること
・設計部門やCAE(Computer Aided Engineering)部門などが必要とする計測データを適切にデータベースから取得できること

これらの要求を満たす為のキーワードは「携帯端末」と「標準化」です。

タブレット端末、スマートフォンの利用

近年家庭で急速に普及しているタブレット端末やスマートフォンは企業内においても存在感を示しつつあります。メールシステムの運用や企業内だけで使用する独自アプリケーションの配布などを目的として活用が始まっていますが、計測分野においても強力なツールとして注目されています。汎用的な携帯端末を計測に利用するメリットを以下に記載します。

小型で可搬性に富む

これまではラップトップPC+計測機器というスタイルが主流でしたが、携帯端末を利用する事で、計測システムを簡素化して持ち運びの負担を軽減する事ができます。更に、計測中に作業者の目の届くところへ端末を設置する事によりリアルタイムで計測結果をモニターする事が可能になります。

ソフトウェアの一斉配信

開発者がアプリケーション配信サービスを利用して計測用のソフトウェアを一斉に世界中へ配布できるため、ユーザーはバージョンアップなどの情報をリアルタイムに受け取る事ができます。また、DVDなどの媒体を使ったソフトウェアの受け渡しも不要になります。

計測機器の遠隔制御

無線通信機能を利用することにより、作業者と計測機器の距離が離れていても計測のスタート、ストップをかけることが可能です。また、端末に保存された計測に関する設定をボタン一つで計測機器に反映する事ができます。

操作性の向上

液晶タッチパネルを利用して、画面を指でなぞるだけでグラフの拡大・縮小やページの切り替えができるようになります。

標準化団体ASAM

ASAM(Association for Standardization of Automation and Measuring system)とは、制御と計測に関する標準・規格化を進めている団体で、欧州の車両メーカー、サプライヤー、ツールベンダーを中心とし約100社以上で構成されています。その活動の中でODS(Open Data Service)サーバを利用した実験データベースに関する標準化もすすめられており、これによりツールベンダー独自のファイルフォーマットやデータベースサーバへの接続形式に縛られない効率的なデータマネジメントシステムを構築する事が可能になりました。ASAM-ODSの特長を以下に記載します。

標準化されたファイルフォーマット

ASAM-ODSでは標準化されたファイルフォーマット (拡張子.atfx)を使用します。したがって、異なるツールベンダーの計測機器やデータビュワーを組み合わせて使用する事ができます。

データベースサーバへのアクセス

データベースサーバへのインターフェース(ASAM-ODS API)が公開されているため、ツールベンダーはデータベースサーバへ接続する機能を自社の製品に持たせることができます。したがって、ユーザーは様々なベンダーの製品が接続できるデータベースシステムを構築する事ができます。

緒元情報との関連付け

実験データの取得プロセス情報(試験対象物、担当者、試験手順、解析手法など)をメタ情報としてデータと共に保存します。設計部門などの実験に深く関与しない第三者が実験データや解析結果を理解できます。また、過去に取得された実験データや解析結果は陳腐化すること無く再利用する事ができます。

データ検索が容易

緒元情報を元にデータを検索し、データの閲覧・比較するシステムを構築する事ができます。

PAK Capture Suite

Mueller-BBM社製PAK Capture Suiteは前述でご紹介した「携帯端末」と「標準化」の特長を盛り込んだ新しいコンセプトの製品です。計測機器に保存されるデータはBBM社独自のファイルフォーマットでは無く、atfxファイルフォーマットで自動的に保存されるため、ASAM ODSに対応した解析ソフトウェア、データベースであれば、ファイル変換をせずにデータを受渡しする事ができるようになりました。更に、スマートフォンなどの汎用的な端末を利用することで、直観的な操作性と視認性を確保し、無線LANを通じて、サンプリング周波数、測定レンジ、校正値などの情報を一度に測定機器へ反映する事ができるようになりました。PAK Capture Suiteが試験の効率化と測定データの管理・運用に貢献し、これまでの音・振動計測シーンを一変させる大きな一歩になる事を期待しています。

PAK Capture Suite 操作画面1

PAK Capture Suite 操作画面2

筆者紹介

株式会社東陽テクニカ 営業第2部

森田 善仁

2008年 東陽テクニカ入社
主に周波数分析装置を用いた音・振動の計測・解析機器を担当