動的現象測定用加速度センサのご紹介

株式会社東陽テクニカ 営業第11部 チームPCB 阿部 俊志

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目次
  1. はじめに
  2. 圧電型振動センサ(加速度計)とは
  3. 圧電型加速度計の原理と構造
  4. 仕様及び使用上の留意点
  5. 最新の圧電型加速度計
  6. まとめ

1.はじめに

当社では45年以上にわたり、米国PCB Piezotronics社の動的現象測定用センサの日本代理店として活動してまいりました。圧力センサ、力センサ、マイクロホン等製品種類はいろいろありますが、多くのお客様にお使いいただいているのが、振動・衝撃現象を検出する加速度計です。

デジタル信号処理技術の進歩に伴い、振動騒音解析の分野においても多チャンネル同時収録・リアルタイム処理装置が普及しました。自動車・機械振動等の分野では64~128チャンネル程度の収録装置がごく一般化し、航空宇宙分野の加振試験等においては更に多点の同時測定が行われています。同時に測定から解析のルーチンは自動化・ブラックボックス化が進み、どこかに人的なミスや測定エラーがあっても気づかずに解析結果が出てしまうところに反面の恐ろしさも潜在します。一旦デジタル変換された信号誤差は後処理で取り除くことは事実上不可能なため、入力されるセンサ信号のチェックに十分な注意を払い、誤差要因が少なく価格対性能の優れた適切なセンサを使用することが重要です。振動・騒音・衝撃解析の分野でその特性と利便性、価格対性能の面から多用されている圧電型振動センサについてご紹介いたします。

2.圧電型振動センサ(加速度計)とは

機械振動計測の分野で圧電型加速度計が多用されるのは以下のような理由からです。

・広周波数範囲、1Hz以下~10kHz以上
・良好なダイナミックレンジ (>160 dB)
・可動部分がなく堅牢な構造
・簡単な2線システムで動作、自ら信号を出力
・動的な現象のみを測定
・試験体への簡単な取り付け
・極小型軽量~極高感度まで種類が豊富
・耐環境性に優れている

動的な現象を良好なS/N比で測定できます。自動車の加速減速、コーナリング時の横Gのような静的な加速度は検出せず、ある低周波限界があります。静的加速度の検出用途には静電容量式、ピエゾレジスティブ式のようなDC(0Hz)~低周波領域に適した加速度計が必要となりますが、近年、MEMS (Micro Electro Mechanical Systems)技術の進歩により、パッケージ化したチップを計測用センサとして応用しています。

せん断構造 電圧出力型加速度計イメージ図

3.圧電型加速度計の原理と構造

3-1. 構造的原理と得失

圧電材料は外力により歪まされると歪みに比例した量の電荷を発生します。すなわち圧電材料に既知慣性マス(m)を装着し、加速度による慣性力が圧電材料を歪ませるようにすれば、α=F/mから加速度に比例した電荷出力が得られます。この原理を応用したのが圧電型加速度計です。歪みを生じさせる構造として現在はせん断構造が主流となっています。これは従来、熱変化・ベース歪みにより誤差出力しやすかった圧縮型を改善したもので、対環境性能が大きく改善され非常に安定した信号が得られます。

3-2. 2種類の圧電材料の得失

圧電材料としては人工水晶と多結晶セラミクスが多用されています。

水晶は生来非常に安定した圧電効果を有しており、経年変化、熱変化に対する出力(パイロ電気)が少ない対環境性の優れた加速度計が設計できる圧電材料です。また低容量性のため電圧感度が高い反面電荷感度は低いため、後述する電圧出力型センサとして安定性の優れたセンサが供給でき、かつ感度の温度偏差も一般に小さいという特質があります。

一方セラミクスは安定性では水晶に及びませんが、小型で電荷感度の高いセンサを構築するのに適しています。一口にセラミクスといっても様々な種類が活用されておりその用途で使い分けられています。セラミクスは、センサ部品として形状加工された後に高電界処理がなされて圧電効果を得ることができます。一方センサとして振動・衝撃・熱サイクル等の環境にさらすことは圧電効果を減ずる方向に作用するため、水晶に比べると経年感度変化を生じやすい傾向があります。一般に同等形状であればセラミクスの方が微少振動に対する分解能は約一桁高いセンサが期待でき、電荷出力型・電圧出力型双方に広く使われています。感度の対温度偏差は、一般に水晶よりも大きくなります。

総括すると、水晶は汎用性、経時・対環境安定性に優れ、セラミクスは小型、高分解能で様々な形状のセンサに応用ができるといった特長があります。

3-3. 出力信号の種類とそのシグナルコンディショニング

前述したように圧電型加速度計は、まず加速度に比例した電荷を出力しますが、その後の処理方法によって、電荷出力型と電圧出力型の二種類に大別されます。

電荷出力型は文字通り発生した電荷をそのまま出力するものです。電荷信号は微弱で圧電材料の高インピーダンス出力のままの信号であるため外乱ノイズの影響を受けやすく、ローノイズケーブルをできるだけ短い距離で使うことが肝要です。また、コネクタ部は高インピーダンスを維持するために汚れなくかつ乾燥状態を維持する必要があります。一般に出力信号は外部チャージアンプに入力され、ここで設定された感度で電荷/電圧変換されます。

一方近年、多チャンネル同時データ収録装置の普及とも相まって、多用されているのが電圧出力型の加速度計です。各メーカで呼称がつけられているものがあり、 PCB社の登録商標ICP®はその代表例です。これは加速度計内に電荷/電圧変換のFET回路を封入したもので外部にチャージアンプを必要としません。封入された回路を駆動する外部定電流電源が必要ですが、近年のデータ収録/解析装置はこの定電流電源を内蔵したものがほとんどです。この場合、単に加速度計を装置に接続するだけで測定ができ、非常に簡便かつ低コストのシステム構成ができます。また、装置に定電流電源が内蔵されていなくとも、チャージアンプに比べると外部電源(シグナルコンディショナ)は非常に低コストで、また低インピーダンス電圧出力のためノイズを拾いにくく、高価なローノイズケーブルを必要としません。悪環境下でも長期安定動作を確保するには密封構造のセンサを選ぶことが肝要であり、設備振動モニタ用には電圧を実効値変換、4-20mA電流変換出力することも可能です。一方、高温限界は内部にFET回路があるために電荷出力型に比べ低くなります。一般に、限界温度以下であれば電圧出力型が非常に使いやすいシステムです。

耐久性では、回路を内蔵していない分電荷出力型が有利ですが、電圧出力型の損傷の多くは回路上のもので出力なしの状態になるのに対し、電荷出力型では徐々に劣化する傾向にあるので注意が必要です。

両者の得失を表にまとめると以下のようになります。

4.仕様及び使用上の留意点

以下に、圧電型加速度計を選ぶ上での基準と留意点をまとめます。

4-1. 感度と測定レンジ

電圧出力型においては一般に定格出力電圧は±5V、例えば感度1mV/(m/s2)の加速度計であれば±5,000(m/s2)が定格測定レンジとなります。120dB程度のダイナミックレンジが期待できます。

電荷出力型においては、加速度計感度(pC/(m/s2))×チャージアンプ変換感度(mV/pC)で電圧感度が決定し、チャージアンプ出力電圧限界によって測定レンジが決定します。一般には電荷感度と測定レンジを設定することでこれらの関係が設定されます。高性能のチャージアンプでは測定レンジを切り替えることによってトータル160dB程度のダイナミックレンジをカバーできるものもあります。ローコストのチャージアンプでレンジ切り替えを電圧アンプで代用している場合はこのような広いダイナミックレンジは期待できません。

4-2. 分解能(微小検出限界)

ノイズフロア電圧が分解能を決定します。電圧出力型では内蔵FET回路のノイズが、電荷出力型ではチャージアンプの自己ノイズと接続ケーブルが誘起するノイズが分解能を支配します。PCB社では分解能の目安として実効値及び代表周波数でのPSD値の目安を公表しています。微小振動の測定が必要な場合にはこれらの仕様に留意する必要があります。

4-3. 周波数範囲

一般に周波数限界は、基準周波数での感度に対してある偏差内の感度を維持する周波数範囲として規定しています。規定される偏差は±5%、±10%、±3dB等様々ですが、この偏差範囲の規定はメーカによっても異なるので注意が必要です。同じ1Hz~10kHzの周波数範囲が規定されていても、その許容偏差が±5%か± 3dBかでは全く精度が変わってきます。高周波限界は加速度計の共振によって決定され、共振周波数に近づくにつれてセンサ感度は上昇します。もし共振付近の周波数成分を持つ振動にさらされれば、加速度計は簡単にオーバーロードする可能性があります。

低周波限界は、測定システムの時定数で決定されます。電圧出力型では内蔵FET回路の時定数、電荷出力型ではチャージアンプの時定数、更にはデータ収録機器のカプリング時定数や入力抵抗によっても左右されることがあり低周波測定が必要な場合には注意が必要です。

一般にその構造から、小型加速度計は低感度(高レンジ)・高周波応答、大きな加速度計は高感度(低レンジ)・低周波対応の傾向があります。また、高周波応答性は加速度計の被測定物への取り付け方法によって大きく制限されます。仕様に掲げられた高周波限界はフラットな剛体面に剛結合した場合のものです。実際の取り付け法が、接着剤・ワックスの厚塗り、磁石ベース、ハンドプローブ使用等の場合は高周波限界が低下します。

4-4. 動作温度範囲と温度変化の影響

仕様では動作温度範囲が規定されていますがその範囲内でも温度によって感度偏差があります。温度に対する感度特性や温度係数が仕様表に記載されているので確認が必要です。高温・低温等の環境でも温度が安定していれば一般に感度は安定していますが、熱衝撃や非定常な温度変化に対しては感度をもってしまうものがあります。これは圧縮型の構造に顕著で、せん断型では改善されています。

4-5. 重量影響

軽量の被測定物では、装着する加速度計重量によって動特性が変化してしまうことがあります。軽量の被測定物には軽量の加速度計を使う必要があります。加速度計重量0.1~0.2グラム程度の極軽量のものも製品化されています。重量影響を検証するには、ひとつの加速度計の極近傍にもうひとつの加速度計をつけて両状態でのデータの相違を比較するのも一法です。小型のものでは三軸でありながらセンサ部重量1グラム、6.4mm角のものもあります。

超小型ICP®加速度計一軸 0.2グラム

超小型ICP®加速度計三軸 6.4mm角

5.最新の圧電型加速度計

多チャンネル同時測定の一般化に伴って、設定の簡素化を促進し人的ミスを排する技術にTEDS (Transducer Electronic Data Sheet)があげられます。これはセンサ内のメモリにセンサ型式、製造番号、校正感度・日時といった管理情報を持たせ、 TEDS対応のデータ収録器がこれらの情報をダイレクトに読み込めるものです。もちろん定期校正情報等はユーザがアップデート可能です。この規格はIEEE 1451で規格化され、準拠製品であれば製造者を問わず互換性があります。メモリへのアクセスは従来どおりのセンサケーブルが共用され、TEDS非対応のデータ収録器・シグナルコンディショナでもセンサとしては問題なく動作します。

また、ICP®センサの近傍に小型のシグナルコンディショナ兼A/D変換器を分散配置し、それらを同期してデジタル化された信号を多チャンネル収録するシステムも登場しています。コストが高くトラブルを生じやすいセンサケーブルの短縮、セットアップの簡素化、対ノイズ性の向上に貢献します。他方、センサ内部でA/D変換を行い、ノートPCあるいはタブレットへのUSB接続だけで加速度モニタ・記録可能なセンサも登場しています(DIGIDUCER™)。USBハブの併用による多点同時計測・記録も可能となっており、今後の機械振動モニタへの活用が期待されます。

USBデジタル加速度計DIGIDUCER™

6.まとめ

精度の高い測定を行うには信号のセンシング部にももっと着目して注意を払うことが重要です。その選択使用に際してユーザからよく尋ねられる留意点を中心にまとめてみました。皆様の実務において少しでも参考になれば幸いです。

筆者紹介

株式会社東陽テクニカ 営業第11部 チームPCB

阿部 俊志

1986年東陽テクニカ入社。振動騒音計測部門に配属以降、同分野に従事。