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英国におけるネットワークトレンドと現地パートナーから見た「SYNESIS」

Red Helix プリセールス・マネージャー Hasan Birol氏

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目次
  1. はじめに
  2. Red Helix社について
  3. 英国のネットワーク事情 ―3つのキーワード
  4. Red Helix社が機器を選定するポイント
  5. 大容量パケットキャプチャ/解析システム「SYNESIS」について
  6. 今後の展望

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はじめに

東陽テクニカは、自社開発製品を国内のみならず、海外にも販売しています。海外展開している代表的な製品の一つは大容量パケットキャプチャ/解析システム「SYNESIS」。日本国内では2015年に、海外向けには2016年に販売開始しました。現在は約20の国と地域に展開しており、東陽テクニカ米国子会社のTOYOTech LLC、中国子会社の東揚精測系統(上海)有限公司をはじめ、現地の代理店パートナーと共に販売を行っています。

今回は、英国で2021年から「SYNESIS」販売を手掛けるRed Helix社のプリセールス・マネージャー Hasan Birol氏に、英国市場におけるネットワークトレンド、「SYNESIS」販売への思いなど、お話しいただきました。

【インタビュアー】
中村達司
(株式会社東陽テクニカ ワン・テクノロジーズ・カンパニー SYNESISビジネスユニット シニアマネージャー)

Red Helix社について

今回はインタビューをお受けいただき、ありがとうございます。まずはRed Helix社についてお聞かせください。

Red Helix社は英国でネットワーク監視とサイバーセキュリティに関するソリューションを提供するプロバイダーです。お客様は、通信事業者、英国官公庁、金融など多岐にわたります。1984年にPhoenix Datacomとして設立されて以来、着実に成長してきましたが、さらなる成長に向けて、2022年7月に社名をRed Helixに変更しました。

東陽テクニカとの出会いについて教えてください。

以前から付き合いはあったのですが、英国市場で100Gなど高速パケットキャプチャの需要があまりなく、提携は叶いませんでした。しかし、2017年末に中村さん(本取材のインタビュアー)がオフィスを訪問してくれて再会したときには100Gなど高速ネットワークでもパケットを取りこぼすことなくキャプチャできる「SYNESIS」の需要が高まっているときでした。その再会がきっかけとなり、現在のようなパートナーになったのです。

英国のネットワーク事情 ―3つのキーワード

Red Helix社は英国における大手ソリューションプロバイダーですが、英国のネットワークのトレンドや最新のニュースを教えていただけますか。

英国のネットワーク市場では、大きく3つのキーワード、①400G普及に向けた動き、②電力問題、③5Gの展開があります。

①400Gの普及は、世界的にも共通の話題ですね。

英国でもネットワークの高速化が急激に進み、400ギガビットイーサネット(400GbE:伝送速度が最大400Gbpsのイーサネット規格)への問い合わせが急増しています。400G需要の高まりの背景には、クラウドの活用とそれに伴うデータセンターを経由するトラフィック(通信量)の増加があり、800Gも近い将来に登場すると思います。

②電力問題も非常に重要ですね。英国は現在どのような問題を抱えていますか。

先にお話ししたデータセンターの活用が増えていることに加え、天然ガスと石油の輸入問題に起因してエネルギー価格が高騰し、家庭はもちろん企業にも影響を与えています(註:英国政府は、家庭向けに加え、企業向けにもエネルギー価格高騰に対する支援を提供すると発表している)。既にデータセンターの設立計画も複数進んでおりますが電力の確保やいかに省エネを実現するかが大きな課題です。

③英国ではすでに複数の企業が5Gのネットワークを共同使用する協定を結んでいたり、新しいネットワークの構築にJVが設立されたり、通信ネットワークは公共インフラであるとの認識が強いように見えます。

英国では2、3年前から5Gスマートフォンがかなり普及しています。ネットワーク事業者も、5Gを迅速に普及させ、コストを削減しながら運用するために、ネットワークの共有を検討しています。例えば、大手モバイルキャリアであるEE(Everything Everywhere)とThree UK が、MBNL(Mobile Broadband Network Limited)というJVを設立し、共有ネットワークの設計や運用を共同で管理することになっています。

Red Helix社が機器を選定するポイント

Red Helix社はあらゆるベンダーや製品の中から機器を選択し、お客様にとって最適なソリューションを提供していますね。機器選定やベンダー選定のポイントを教えてください。

最も大切なのは「お客様が何を求めているか理解する」ことです。お客様にとって今何が必要なのか、将来的に何が必要になるのかを見定めて、これに合うソリューションやベンダーを探します。

お客様の要望を理解したら、その要望に合った機器を提供するベンダーを探します。機器がベンダーの提供するデータシートに記載されている通りの性能であることを私たちも確かめますし、ベンダーにも正確な数値を提供することを求めています。

Red Helix社取り扱い製品の一部

大容量パケットキャプチャ/解析システム「SYNESIS」について

ここからは少し具体的に「SYNESIS」のお話を伺いたいと思います。先日「SYNESIS 10Gポータブル」を採用していただきました。お客様からはどのようなご希望があったのですか。

従業員1,000名規模の大手企業が、データセンターで障害解析に使用できる25GbE対応のポータブル機器を探していました。「SYNESIS 10Gポータブル」は、十分なディスク容量と可搬性という点でお客様のニーズを満たしていたので、販売することになったのです。

大容量パケットキャプチャ/解析システム「SYNESIS」

お客様はどのように「SYNESIS」を活用されていますか。

データセンターでトラブルが起こったらすぐ「SYNESIS」を持ち込み、パケットキャプチャ/解析を行っています。「SYNESIS」の大きなメリットはどこにでも持ち運びができることです。問題が発生してすぐに全てのパケットをキャプチャすることで、原因を速やかに特定し、対処することができます。

「SYNESIS」を利用するお客様が抱えていた課題は、どのようなものでしょうか。

例えば、お客様が求めている機能を1台の機器では実現できず、複数の機器を保有していたということがありました。その複数の機器は機能が重複していることも多く、ある機器は解析機能が充実しているけれど、高速トラフィックは非対応という場合もあります。お客様は、できるだけ保有する機器の数を少なくし、検証をシンプルにしたいという要望があります。「SYNESIS」は充実した解析機能、200Gbpsまでのキャプチャが可能であり、データをもれなく記録するという特長があり、お客様にとって非常にメリットがある製品です。

「SYNESIS」でキャプチャおよび解析を行うと、具体的にどのようなメリットがありますか。

pcap(ネットワークを流れるパケットが記録されたデータ)ファイルをローカルに保存し、ローカルにインストールしたWireshark(オープンソースのネットワークアナライザ)で開こうとすると、データサイズによってはその内容の表示に長い時間がかかることがあります。「SYNESIS」は十分な処理能力を備えているため、その工程がスムーズです。つまり、障害が発生してもMTTR(Mean Time To Repair:平均修復時間)を最小限に抑えることで、ネットワークのダウンタイムを減らすことができ、ビジネス機会の損失も防ぐことにつながりますね。

パケットキャプチャ/解析ツールが必要になる状況というのは、ずばりどのようなときでしょうか。

障害の原因をしっかりと見極めたいときです。真実はデータを流れるパケットの中にあります。そしてパケットは嘘をつきません。NetFlow(ネットワークトラフィックの統計情報を監視する技術)やSNMP(ネットワーク機器を監視するプロトコル)などを活用する監視ツールがありますが、これらの方法では、トラブルシューティングのために原因究明を行うときや、サイバー攻撃の可能性を見極めたいときなどに、問題解決に必要な答え全てを得ることはできません。障害が起こったとき、パケットロスがあり、ネットワーク上のやりとりを全て記録できないツールでは、問題の全体像を把握できないのです。解決に時間がかかると、ダウンタイムの発生や、もしかしたら罰金問題につながる可能性があるので非常に重要なことです。

Red Helix本社にて。東陽テクニカ社員とRed Helix社員が「SYNESIS」の動作を確認

「SYNESIS」についてたくさんお話を聞かせていただきました。改めて数あるキャプチャツールのなかで、なぜ「SYNESIS」を採用いただいたのか、教えてください。

どんなパケットサイズでも取りこぼしなくキャプチャでき、そして全てのパケットを保存できるからです。これまで高速ネットワーク対応を謳う多くのツールを、実際にお客様が使う条件で評価してきましたが、「SYNESIS」のパフォーマンスには満足しています。

Red Helix本社で開催された通信事業者を対象としたランチセミナー
「SYNESIS」の特徴や機能についても説明

今後の展望

Red Helix社は、今後お客様に対してどのようなソリューションを提供していく予定でしょうか。今後の展望について教えてください。

セキュリティ分野も展開しており、例えばAIを用いたネットワークパフォーマンス監視を提供するベンダーと協業しています。それぞれに特徴や得意分野があり、どれもセキュリティソリューションに必要なMITRE ATT&CKフレームワーク(一般公開されているサイバー攻撃の情報を基に作成されたナレッジベース)に準拠しています。これらのソリューションで100G対応というのは現状、まだプレミアム製品と見なされていますが、将来的にはこのようなソリューションも提供していきたいと思います。

「SYNESIS」や東陽テクニカのネットワーク機器に期待する機能はありますか。

5Gは私たちが「つながる」方法を劇的に変えます。4Gと比べて通信速度が速いというだけで はなく、低遅延と高帯域を提供し、それらの特長はIoTや自動化、第四次産業革命を大きく推進します。5G以降の将来的な高速ネットワークが普及するときにも、「SYNESIS」が400G、そして800Gなどの高速ネットワークに対応できるとよいですよね。

Birol氏とインタビュアーの東陽テクニカ 中村達司

今後もお客様の期待に沿えるような製品の開発を進めていきたいと思います。貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

プロフィール

Hasan Birol 写真

Red Helix プリセールス・マネージャー

Hasan Birol 氏

15年以上にわたりRed Helix社でSE業務に従事。通信事業者をはじめ、官公庁や金融など幅広い分野でネットワーク構築の技術支援を行う。

製品・ソリューション紹介