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晴れも曇りも思いのまま
太陽電池に成りすます模擬電源
ETSシリーズ

株式会社東陽テクニカ 営業第1部 南澤 貞巳

本記事の内容は、発行日現在の情報です。
製品名や組織名など最新情報と異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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目次
  1. 太陽光発電システムの普及
  2. 太陽光発電システムにおける裏の主役 パワーコンディショナ
  3. パワーコンディショナに求められる性能
  4. 太陽電池模擬電源ETSシリーズ

AMETEK Programmable Power社製 ETSシリーズは太陽電池に成りすます太陽電池模擬電源です。太陽光発電システムにおいて重要な機器であるパワーコンディショナの効率を、天候などをシミュレーションさせて測定することを可能にします。

太陽光発電システムの普及

3.11の東日本大震災、福島第1原発の事故という未曾有の災害、およびその災害による電力不足や計画停電は未だ皆様の記憶に新しいのではないでしょうか。当たり前に使えていた電気がある日突然使えなくなる。皆様方が“電力”というものを意識されるようになるきっかけになったのではないかと思っています。

これらの情勢を受けた政府施策による再生可能エネルギー発電の推進、固定価格買取制度を見越した投資もあり、太陽光発電システムの普及は目覚ましいスピードで進んでいます。とはいいつつも太陽光発電が全発電量に占める割合は1%未満です。また数kWまでの家庭用が多かった日本において10kW以上の大容量太陽光発電システムの長期稼働実績は必ずしも多くありません。普及期にあれど円熟期ではないと言えるかもしれません。

日本国内における発電量の内訳
(電気事業連合会発表の電源別発電電力量構成比データより。縦軸の単位は億kWh)

太陽光発電システムにおける裏の主役 パワーコンディショナ

太陽光発電システムというと、まず太陽電池がイメージされると思います。太陽電池は太陽光から電力を作り出す装置で、太陽光発電システムにおける主役です。しかし太陽電池は電池という名前の通り直流であり、日射量や温度などの天候により発電量が大きく変化するため、そのままでは安定して使用することができません。

太陽電池で発電した電気を交流へ変換、安定化させて家庭で使用したり電力会社へ販売できるようにしているのがパワーコンディショナです。

パワーコンディショナに求められる性能

このパワーコンディショナに求められるものは効率と安定性です。

パワーコンディショナの効率は太陽光発電システム自体の発電効率に直結し、その効率は変換効率と発電効率で決まります。 変換効率とは言葉の通り直流を交流に変換する際の効率を指します。ここでのロスが少ないほど効率が高く、変換時に無駄がないパワーコンディショナと言えます。

発電効率とは太陽電池が本来持つ最大発電能力に対し、最適化制御をかけた実発電量の比で表される効率です。太陽電池は照度や温度などの気象条件により電圧対電流の特性(IVカーブと呼びます)が変化します。電力は電圧×電流で求められますので、そのIVカーブのピークがもっとも発電量が多い点:最大電力点です。パワーコンディショナは常時この最大電力点を探し、最大発電能力を引き出せるよう制御しています。この制御を最大電力点追従(MPPT:Maximum Power Point Tracking)と呼びます。MPPTが高速で高効率であるほど発電効率が高いと言えます。

シンプルなIVカーブ(青線がIVカーブ、赤線は電力カーブ)

複雑なIVカーブ(青線がIVカーブ、赤線は電力カーブ)

太陽電池模擬電源ETSシリーズ

太陽電池模擬電源 ETSシリーズはその名前の通り太陽電池を模擬する試験用電源装置で、主にパワーコンディショナの試験に使用されます。

前述のとおり太陽電池は気象条件によりふるまいが大きく変化するため、様々な気象条件での試験が求められます。しかしパワーコンディショナを試験するために実際に太陽電池を使用し、試験をしたい天候になるのを待つのは非効率で再現性に欠けます。そこで特定の日射量、温度をパラメータとして入力できる太陽電池模擬電源が活躍します。

ETSシリーズの制御ソフト画面

ETSシリーズの気象状況シミュレーション機能
(黄色が照度、紫が太陽電池の表面温度)

ETSシリーズの特徴は以下の通りです。

・高速なMPPT応答
・豊富なデータベース
・高電圧化、大容量化が容易

パワーコンディショナは太陽電池の最大電力点を動的に探して最適化(MPPT)しますので、太陽電池模擬電源はその動的な制御に応答する必要があります。ETSシリーズは200Hz以上のMPPT追従スピードを持っており、昨今のMPPT速度が数十Hzを超えるパワーコンディショナの試験にも対応できます。

サンディア国立研究所(Sandia National Laboratories、米国エネルギー省が管轄する研究所)では市販されている様々な太陽電池の特性をデータベース化しています。ETSシリーズはそのデータベースを制御ソフトウェアから直接呼び出すことができるため、一般的な特性での試験だけでなく、特定の太陽電池の特性を模擬した試験を容易に実施することができます。

太陽光発電システムの大容量化に伴い、試験用の太陽電池模擬電源でも大容量化が必要とされています。また欧州のスタンダードである1,000Vシステムは日本の600Vシステムより効率が良く、構築コストも下がることから、国内での規制緩和に伴い需要が高まることが見込まれます。 ETSシリーズは5kW/10kW/15kWのユニットを並列に接続することで簡単に大容量化でき、1MWを超える実績があります。標準で1,000Vに対応しているため、高電圧化、大容量化のご要望に迅速に対応できます。

太陽光発電はあっという間に当たり前のものになってきました。ETSシリーズがより高効率で安定した太陽光発電システムの構築に貢献できることを期待しています。

筆者紹介

株式会社東陽テクニカ 営業第1部

南澤 貞巳

2005年入社。試験用電源、電子負荷装置を担当。特にパワーコンディショナ用試験器が専門。