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~ 最新の医療技術を我が町のクリニックへ ~

株式会社東陽テクニカ メディカルシステム営業部 宮本 喜久男

本記事の内容は、発行日現在の情報です。
製品名や組織名など最新情報と異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

目次
  1. インターネット普及による医療業界の変化
  2. 最新の医療技術を町のクリニックへ
  3. クリニックに必要な医療機器とは?
  4. 「Matrixia」を使って最先端技術を広める

当社が取り扱うことになったデジタルラジオグラフィー「Matrixia(マトリクシア)」は、最も一般的な医療機器と言っても良い製品です。当社は、この製品をクリニック市場に投入し、クラウド技術と組み合わせることで最新の医療技術を町のクリニックでも使用できる可能性を見出しています。

インターネット普及による医療業界の変化

インターネットの普及により、我々の生活が一変したのは誰しも実感していることと思います。

医療業界も、インターネットの導入により変わろうとしています。

医療業界は何よりも安全を重視するので、リスクを避けて、安全な技術と判るまではなかなか新しいものを導入しない文化があります。インターネット接続についても同様でした。特に2003年に個人情報保護法が施行されてからは、個人情報の流出を避けるために院内の個人情報は、院内で一括管理するという意識があったように思います。そのため、院内ネットワークが普及しても、そのネットワークが直接外の世界(インターネット)と接続するのはかなり抵抗があったように感じます。

その状況を変えたきっかけの一つが2011年の東日本大震災です。震災により多くの病院が被害を受け、膨大な量の患者情報が消失してしまいました。紙ベースのカルテだけでなく院内で一括管理していた電子データについても、水没や倒壊によってサーバー自体が破損し使い物にならなくなったケースが少なくなかったと聞いています。この震災をきっかけに多くの病院では、大切な患者情報を万が一の事態に備えて、院外にバックアップをする、という意識が強まったように感じます。

今までは病院ごとに管理されていた患者情報が地域連携により共有化され、複数の病院で受診しても情報は一元管理されるようになってきています。医療の電子化と共有化の流れは、大規模病院から中規模病院に広がり、そろそろ小規模病院や町のクリニックにも広がろうしています。

最新の医療技術を町のクリニックへ

最新の医療技術は、その販売金額の高さから来院患者数が多い大病院から導入されるのが一般的です。小規模病院やクリニックでは、コストが掛かり過ぎるため導入には消極的です。そのため、クリニックで初診を受け検査を実施していたとしても、大病院に掛かり直す場合には、再検査を受けた経験を持たれる方も多いのではないでしょうか。

クリニックと大病院の連携ができていない状態では致し方ないとは言え、これは医療費の無駄使いでもあり、患者にも余計な時間を使わせてしまっています。大病院の待合室で長時間待たされた経験は、どなたにもあると思います。さらにX線の検査となれば、複数検査により被曝回数が増えることも問題点として挙げられます。

しかし、インターネットの普及によりクリニックにクラウドやASPモデルを導入することで、それらの問題を解決することが可能になってきています。

クリニックで初診を受け検査画像を撮影し、それをクラウド技術で読影のプロフェッショナルに依頼して最新の画像処理技術を用いて読影を実施することにより、クリニックに居ながらにして専門医の所見を受けることができるようになります。万が一、何か所見があれば、その画像をネットワーク経由で大病院に転送し、さらなる診察と治療を受けることが可能です。

これを後押しするかのように、昨年5月に成立した医療保険制度改革の関連法には、大病院が難しい病気の治療に専念できるように医療機関の役割分担を決めるように求めています。まずクリニックや小規模病院で初診を受け、必要があれば大病院で診察および治療を受けるという流れが出来上がりつつあります。

クリニックに必要な医療機器とは?

このように医療機関の役割分担が進む中、今後クリニックや小規模病院で導入必須となる医療機器は何なのでしょうか?それはデジタルラジオグラフィー(以下、DR)と画像保存通信システム(以下、PACS)であると考えています。

DRとは、患者が病院に行って普通に撮影するレントゲン撮影のことです。DRは簡単でかつ早く画像が提供できるので、最初の診断に用いられる最も使用頻度の高い装置です。CTやMRIなどの大型の装置とは違い、設置場所にもそれほど制限はありません。その他に特別な機器は必要なく、インターネットにより構築された地域連携の末端を担うための撮影装置と、その撮影された画像をネットワーク上に載せるための機器のみを準備すれば、地域連携システムに参加することで、最新の医療技術が使用できる可能性が広がります。

今後、医療業界のネットワーク化が進み、クリニックが必要最低限の医療機器を持つことで、最新の医療技術を受けることが可能になると思われます。

イメージリサーチ社は、当社が輸入する米国MXI社製のフラットパネルディテクター(以下、FPD)を使ったDR装置「Matrixia (マトリクシア)」を開発しました。

当社は、今後この「Matrixia」をクリニックを中心に全国販売し、地域医療へ貢献してまいります。

(FPDの技術的側面については、本号最終ページの「フラットパネルディテクターとは」をご参照下さい。)

図1:「Matrixia」を使ったX線胸部撮影画像

「Matrixia」を使って最先端技術を広める

上述のように、「Matrixia」で撮影されたX線画像とクラウド技術を組み合わせることで、更なる最先端の画像処理技術をクリニックや小規模施設で使うことが可能になります。

当社が販売している最先端の医療技術を、大学病院や大規模病院だけでなく全国に100,000施設あるクリニックにも広めることが可能となるのです。例えば、電子画像の保管サービスや読影サービス、「ClearRead」を使った骨組織透過処理・経時差分処理などが挙げられます。

図2:「ClearRead BS」を使った胸部X線骨組織透過画像(イメージ)

他にも今後当社が海外から最先端の医療技術を日本に持ち込み、その技術を提供する際の土台となるものが「Matrixia」であると考えています。

これまで当社の医療機器は、一部の大病院向けでしたが、「Matrixia」とインターネットの組み合わせにより、今後は全医療機関を対象として医療に貢献することができるようになります。

筆者紹介

株式会社東陽テクニカ メディカルシステム営業部

宮本 喜久男

1996年中途入社後、海洋計測およびメディカル製品のサポート業務を担当。2004年から現メディカルシステム営業部、昨年からFPDおよびDR装置の業務を担当。