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株式会社東陽テクニカ
整形外科デジタルプランニングツール「OrthoPlanner Pro(オーソプランナー・プロ)」

株式会社東陽テクニカ メディカルシステム営業部 河野 喜生

本記事の内容は、発行日現在の情報です。
製品名や組織名など最新情報と異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

目次
  1. はじめに
  2. 「OrthoPlanner Pro」の特長
  3. 導入にあたって

はじめに

近年、整形外科では、食生活スタイルの洋式化などから股関節や膝の疾患率が増加傾向にあり、脊椎関節への負担も増えています。また高齢化による変形性関節症、関節リウマチなどの症状を訴えるケースも多く、患者は増加傾向になっています。整形外科においては、診断するために直接フィルムに直線や文字を書き込みながら、定規や分度器などを用いて複雑な計測を行う必要があります。また、関節置換術の術前プランニングでは複雑な計測に加え、どの人工関節メーカーのどの人工関節を使用するのかを、人工関節の形状が描かれたテンプレートを直接フィルムにあてがいつつ、オペ用に準備する人工関節のサイズを決定します。

一方、院内のシステムに目を向けてみると、院内フィルムレス化を実施する病院が急増し、フィルムレスの波は整形外科にも例外なく押し寄せています。

院内フィルムレス実施後は、これらの作業をすべてモニター上で実施することとなりますが、院内で共通で使用しているビューアのみではその実現が難しく、患者数の多い整形外科医に不要な負担を掛けているのが実情です。そのため、整形外科医には整形専用の機能を有するシステムが必要となります。

「OrthoPlanner Pro」の特長

東陽テクニカ デジタルプランニングツール「OrthoPlanner Pro(オーソプランナー・プロ)」は、日頃、整形外科医がフィルム上で行う複雑な計測や作図、人工関節テンプレーティングを直観的かつ容易にモニター上で実現できるソフトウェアです(図1)。その特長を、今回は人工関節置換術をシミュレーションするための術前プランニング作業に沿って説明します。

図1:股関節プランニング一例

1)[術前プランニング前] 院内ネットワークとの高い親和性

「OrthoPlanner Pro」は既に250施設で使用されています。医療ネットワーク接続標準規格であるDICOMに則った接続ができ、国内で流通するほとんどのPACS(Picture Archiving and Communication System:医療においてCT、MRI、レントゲンフィルムなどの医療用画像データをネットワークでやりとりするときに使われるシステム)メーカーと接続実績があります。院内システムとの親和性が高く、ネットワーク上にある、診察室、医局、病棟、オペ室などで運用することが可能です。さらに「OrthoPlanner Pro」をPACSや電子カルテなどの他社システムと連携させることにより、整形外科専用システムを意識しない、より効率の良い運用を可能としています。PACSビューアや電子カルテの画面から「OrthoPlanner Pro」へ画像を直接展開することで、即座に術前プランニングを行う環境が整います。整形外科領域の特殊なソフトウェアながら、他システムと連携したシームレスな運用で、整形外科医は術前プランニングをスピーディーに実施することができます。プランニング後の画像はPACSサーバーへ保存され、オペ室での参照画像や診察時の患者への説明用としても使用できます。

また、病院のシステムはコンピュータウイルスやデータ改ざんの脅威から逃れるためにセキュリティを強化しており、そのルールに則ったシステムしか運用することができません。病院のシステム管理者にとっては、国内導入実績が多く、PACSとの接続経験が多い「OrthoPlanner Pro」は、院内システムを安定稼動させる上で安心して導入することができるシステムです。

2)[術前プランニング1] 容易な拡大率補正による高精度計測

X線曝射装置の管球と患者、ディテクタの位置関係により、フィルムやモニター上に表示される画像の大きさは患者の実寸より約10%大きくなります。そのためフィルム上で術前プランニングをしていたときは、人工関節メーカーから提供されるフィルムの人工関節データも実寸比110%のものが使用されてきました。フィルムで行っていた計測をモニター上で行うにあたり、人工関節データもデジタル化が必要になります。デジタルデータは人工関節メーカーから提供されるデジタルデータをそのまま使用することになりますが、それらは100%サイズのものであるため、デジタルでの術前プランニングでは、患者の画像を人工関節のデジタルデータに合わせた100%に戻す必要が出てきます。また計測に関しても、高精度な計測を求められる整形外科では、整形外科医が自分の経験値から拡大率を考慮して計測するため、頭の中で実寸との誤差を補正することが必要でした。

「OrthoPlanner Pro」では専用の金属球(撮影用キャリブレーションスフィア)や院内で使用しているメジャーなどを基に、容易なステップでその拡大率を補正することが可能です。患者の実寸に対する計測結果が視覚化されることにより、これまでの整形外科医の負担も軽減されるうえ、これまで以上に精度の高いプランニングや計測が実行できます。

「OrthoPlanner Pro」には、専用の金属球とスタンドが標準で含まれており、導入後すぐに精度の高いプランニングを開始することができます。

3)[術前プランニング2] 計測・作図機能

「OrthoPlanner Pro」は整形外科医が必要とする円ツール、コブ角ツール、中心線ツール、垂線ツール、中点ツール、平行線ツールをはじめ、通常のPACSビューアにはない専門的な計測・作図ツールを標準で搭載しています。プランニングの対象となる画像が複数に分かれている場合も、幾何学的に画像を結合する“イメージリレーション機能”により、複数画像間における計測も可能です(図2)。

図2:イメージリレーション機能(膝関節プランニング)一例

また一連の計測作業手順を登録することで、個別の計測ツールを一つずつ使用することなく、ポイントクリックのみで迅速に計測を実施する“カスタム計測機能”を実装しています。このカスタム計測は、股関節、膝関節、手関節、肩関節などの他、複雑な計測が必要な脊椎用も多く実装されています。

この整形計測に特化したカスタム計測は100種類以上標準で実装され、整形外科医の複雑な計測作業を大幅に効率化し、労力を大きく軽減することを可能にしています。また整形外科医のリクエストに応じて、使いやすい専用計測を新たに追加することで、さらなる進化を続けています。

4) [術前プランニング3] デジタルテンプレーティング

整形外科人工関節置換術の術前プランニングでは、オペに使用する人工関節のメーカー、製品、サイズをシミュレーションすることも重要です。「OrthoPlanner Pro」ではモニター画面上で、整形外科医が使用するテンプレートデータを即座に表示し、ポジショニングやローテーション、サイズ変更を迅速かつ容易に行うことができます。このテンプレートデータは、既に国内外の主要な人工関節メーカー30社以上50,000種類を実装していますが、現在も新たな人工関節メーカー、サポート人工関節数が増え続けています。

人工関節メーカーは、日本人に適した日本市場のみのサイズ展開をしている製品や正座など日本のライフスタイルを想定した日本専用モデルをリリースしているケースが多く、同じ製品でもサイズ展開が非常に多岐にわたっています。「OrthoPlanner Pro」では、このような日本専用モデル・サイズなども多く実装しています。

さらに、手術件数の多い骨折治療用テンプレート、プレート、スクリューなど細かな人工関節テンプレートも実装し、あらゆるタイプのオペに対応ができるようになっています。当社では、30社以上の人工関節メーカーとの情報共有、協力体制を構築しており、人工関節メーカーからリリースされる新製品にも対応できる体制を整えています。テンプレートデータは定期的にアップデートを行い、常に最新の人工関節データを「OrthoPlanner Pro」上で使用できるようバックアップをしています。

オペで良く使う人工関節テンプレートはお気に入りに保存することで即座に選択できる他、股関節や膝関節のオペで使用される各種の人工関節データをキット化することも可能です。

また人工関節データによっては、「OrthoPlanner Pro」が表示画像を解析・計測し、自動で人工関節データを配置する、オートテンプレート機能など、さらに使いやすいシステムへ進化しています。

5)[術前プランニング4] アウトライントレース機能

「OrthoPlanner Pro」は整形外科医が術後の状態をイメージするために使用するトレーシングペーパーの代わりとして、“アウトライントレース機能”を搭載しています。アウトライントレース機能は、トレーシングペーパーのように任意の部位をトレースし、術後の状態をシミュレーションすることが可能です。さらにアウトライントレース機能に画像カット&コピー機能を加えることで、患者の実画像を用いたシミュレーションが可能となり、術後における髄腔や関節の位置・形状などがより分かりやすくなります(図3)。術前・術後の骨の位置が具体的に分かるため、シミュレーション前後における脚長差やFTAなどの違いをより正確に把握することも可能です。

図3:アウトライントレース機能を用いたプランニング一例

6)[術前プランニング後] 整形外科だけに留まらないシステム運用

プランニング後はPACSサーバーへの保存が可能であり、保存した画像は院内の画像配信システムを介してあらゆる場所で参照できます(図4)。医局や病棟で作成した術前プランニング画像をカンファレンスでの検討、手術室での参照、診察室での患者への説明などに使用でき、その運用を院内画像ネットワークに自由に組み込むことができます。

さらに術前プランニングをネットワーク上で運用することで、どのような術前プランニングをして、実際にどのようにオペを行ったのかを院内システム上で保存・管理できることで、医療安全面でも効果を発揮することができます。

図4:院内運用一例

導入にあたって

「OrthoPlanner Pro」は、整形外科医が従来フィルム上で実施してきた特有の人工関節置換術の術前プランニングや計測をさまざまな面からサポートいたします。医療ネットワーク接続標準規格であるDICOMに準拠し、国内で流通するほとんどのPACSメーカーと接続できるだけでなく、安全で確実な院内運用を可能としています。機能面で整形外科医を、接続・運用面では院内システム管理者をサポートすることで、整形外科専用プランニングツールとして日本国内の250を超える施設で稼働しています。導入にあたっては、整形外科医のオペレーションに精通した当社のアプリケーション担当が導入・運用をバックアップすることで、スムーズに稼動ができるようサポートをしています。また機能面では、多くの整形外科医からの意見を反映し細かな改良点を加えることで、さらに使いやすいシステムへと進化し続けています。

当社は「OrthoPlanner Pro」を通じ、整形外科医のオペレーションだけでなく、接続性や院内運用までをトータルでサポートし、各施設に合わせた提案をすることで、これからも院内の完全フィルムレスをバックアップしてまいります。

筆者紹介

株式会社東陽テクニカ メディカルシステム営業部

河野 喜生

1997年入社、メディカルシステム営業部(旧貿易3課、画像システム部)配属。
印刷用カラーマネージメント、医療用ITシステムに従事。