東陽テクニカルマガジン70周年記念号はこちら東陽テクニカルマガジン70周年記念号はこちら

海洋計測部

本記事の内容は、発行日現在の情報です。
製品名や組織名など最新情報と異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

ログイン・新規会員登録して
PDFダウンロード

本号の3本の特集記事、業界の最新トピックであるスペシャルコンテンツをお読みいただくにあたり、海洋計測部が何をしている部であるか紹介させていただきます。

海洋計測部は、遡れば東陽テクニカが東陽通商と称していた時代、1957年のエレクトロニクス課から始まり、その後、エレクトロニクス事業部営業第三部に発展、港湾測量機器の販売で躍 進し、2009年11月に海 洋 計測部となりました。現在でこそ取引先海外企業46社、取扱製品モデル数は300以上という、典型的な少量多品種販売のビジネススタイルですが、 1957年にエレクトロニクス課が取り扱っていた海洋計測関連製品は1製品のみでした。その製品は重力計といい、地球上のさまざまな地点の重力を測るために用いられます。地球が大きな楕円体であることはよく知られていますが、その形状は“ジオイド”と呼ばれる重力の等ポテンシャル面にほぼ一致していて、その“ジオイド”を定義するために重力測定は欠かせない計測要素なのです。地表の高さを示す“標高” も、海の深さを示す“水深”も、その地点の“ジオイド”と極めて密接な関係を持っています。大げさに言えば、海洋計測部の活動は“地球の形”を計測する製品から始まりました。

その後は、1970年代半ばに非常に深い海の深さを測るための“深海用精密音響測深儀”を国内の数多くの調査船向けに販売し、さらに1980年代に入ると海上保安庁および地球物理学計測分野のお客様に“地層探査機”や“音波探査装置”などの海底下の地層構造を調査するための装置の販売を開始しました。“深海用精密音響測深儀” は日本海溝の最深部の水深を明らかにし、“地層探査機”や“音波探査装置” は海洋活断層調査などに活躍しています。そして同じ頃、海底の凹凸を陰影写真状に表現できる“サイドスキャンソーナー”の販売も開始しました。それまでの海洋計測部はアカデミックな分野のお客様が殆どだったのですが、サイドスキャンソーナーの販売開始以降は、海洋調査会社や港湾建設会社などエンジニアリング分野のお客様が非常に多くなりました。またこの装置は海底に設置された漁礁や、地元漁師に古くから知られていた天然礁の状態を精密に視覚化できるため、水産試験場にも多く販売されました。

1980年代半ばになると、エポックメイキングな製品が現れます。それは“トライスポンダー”と呼ばれる、今のWi-Fiよりも周波数の高いマイクロ波を用いて距離を求める電波測距儀です。今日ではスマートフォン、カーナビ、腕時計などで利用されているGPSがない世界など想像できないでしょうが、そのGPSが普及する10年以上前に海上で正確な位置を知ることは非常に困難なことでした。しかし、この製品でそれができるようになり、GPSが測量の世界に普及するまでの約10年間、港湾工事には欠かせない計測器となりました。特に、関西国際空港の第一期埋め立て工事では30式近くが大活躍しました。

その後、GPSの普及と時を同じくして“マルチビーム測深機”を港湾測量業界に紹介し、今日の「東陽テクニカ 海洋計測部=マルチビーム測深機」という時代に突入していきます。と同時に、ビジネス範囲も拡大し、防衛産業界にもさまざまな製品を販売するようになりました。現在は、90日間無補給で使用可能な自律航行無人ボートや7関節自由度のアームを持つ水中ロボット、水中を侵入してくるダイバーを900mの遠方から捕捉することのできる水中警備ソーナー、ダイバーの両脚に装着して時速約6kmで泳がせることのできる水中推進補助装置など、海洋“計測”にとどまらない広範囲な製品を取り扱っております。 2017年に60周年を迎えた海洋計測部は、今後も、海洋調査を中心とした地球計測分野の皆さまに、時代の最先端を行く製品を紹介し続けてまいります。