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医療分野におけるX線撮影の原理

東陽テクニカ ライフサイエンス&マテリアルズ 青木 実花咲

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目次
  1. X線撮影の原理
  2. 医療現場で活躍するソフトウェア例

主に骨や肺の病変を描き出す画像診断として、医療分野で積極的に活用されているX線画像について、その原理を紹介します。また、このX線画像を用いて、実際の医療現場ではさまざまなソフトウェアが活躍しています。今回はその一例も紹介します。

X線撮影の原理

X線一般撮影、俗にいうレントゲン撮影は、骨や肺の画像診断として一般的によく知られている検査方法であり、誰しも一度は受診したことがあるかと思います。

X線撮影は、照射装置とフィルムの間に身体を置き、X 線を身体(特定の部位)に照射します。X線は物質を透過する性質を持ち、物質や線量の強さにより透過する力が異なります。また、感光板を黒く変色させるという性質があるため、X 線が通過した部分は黒く写り、通過しなかった部分は白く写ります。身体の組織によってX 線の透過度が異なるため(表1)、その透過度の差がX線写真の白黒の濃淡となり、身体の構造を表現します。体内に腫瘍などを示す病変がある場合はその箇所のX線透過度が変わり、病変がある場所が通常より白く描画されます。医師はその濃淡の差を読み取り異常を検出しているのです。このX線を照射する装置が身体の周囲を回転しながら撮影したデータを画像化したものがCT(Computed Tomography)です。

表1:組織によるX線透過度の違い

X線画像は従来フィルムに印刷されていましたが、近年では撮影された画像の大半がデジタル画像となり、モニター上で読影が実施されています。デジタル化により、ただ読影するだけではなく、読影や診断、治療をサポートするソフトウェアへその画像(データ)を適用することが可能となりました。これらのソフトウェアは医療現場においてさまざまな用途で使用されています。そのソフトウェアの一例を紹介します。

医療現場で活躍するソフトウェア例

胸部画像読影支援システム

得られた画像に特別な画像処理を適用し、読影を支援する補助画像を生成するソフトウェアです。胸部X線画像では肋骨・鎖骨などの骨組織を推定し、推定した骨組織を透過した読影補助画像を生成します。補助画像により、骨組織との重なりで発⾒し難い病変などの関心領域の視認性が向上します。胸部CTアキシャル画像(人間の身体を輪切りにしたときの画像)では肺血管を推定し、推定した肺血管を透過した読影補助画像を生成します。補助画像により、画像の大部分を占める血管と病変が識別しやすくなります。

図1:オリジナル画像(左)と胸部画像読影支援システム「ClearReadシリーズ」により生成された補助画像(右)

整形外科デジタルプランニングツール

整形外科では、診断や手術のためX線画像を用いて複雑な計測やシミュレーションを行います。以前はX線画像が印刷されたフィルムに直線や文字を直接書き込みながら定規や分度器を用いて計測や作図を行い、時にはフィルムから必要な箇所を切り取りながら術前シミュレーションを実施していました。「mediCAD®」は、これらの作業をモニター上で、直観的かつ容易に短時間で実現するためのソフトウェアです。X線画像を用いた2D計測のほか、CT 画像を用いた3D 計測やシミュレーションも可能になり、より精度の高い結果を得られるようになりました。

図2:整形外科デジタルプランニングツール
「mediCAD®」による作図 2D(上)と3D(下)

X線が使用される放射線検査は医療現場になくてはならないものとなっています。一方、世間における放射線被ばくへの意識も年々高まっており、自身の医療被ばく線量を気にする人も増えています。私たちは放射線検査を受けることによるメリットと被ばくによるデメリットを正しく認識し、X 線と上手に付き合っていく必要があります。

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