肺がんの早期発見を補助
過酷な業務に携わる医師を助ける最先端画像処理技術

聖路加国際病院 放射線科医長兼 胸部画像診断室室長 松迫 正樹
聖路加国際病院 放射線科部長 栗原 泰之

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目次
  1. 高まるCT読影需要と読影医師の負担
  2. 心的負担の軽減と読影時間の短縮に大きく貢献
  3. 血管と病変を見分け、病変の見落としを防ぐ
  4. 気道内病変を見分け、病変の見落としを防ぐ
  5. 一般診療における有用性
  6. 疾患への応用へ
  7. 胸部CT肺血管透過処理システム「ClearRead CT-VS」

肺がんは病気の進行が早いため、早期に発見することが大切です。その発見方法の一つが、X線を用いて体を輪切りの状態にして体内を観察することができるCT(Computed Tomography)検査です。CT検査では5mm以下の小さながんも明瞭に表示され、早期発見に貢献します。一方、1検査が非常に多くの画像で構成されるため、その多数の画像からわずかな病気を拾う医師の業務は大変な集中力と体力を必要とします。CT画像と日々向き合う放射線科の医師が抱える問題とその解決策について、医療の安全と質向上のため世界トップクラスの取り組みを実践している聖路加国際病院の先生方にお話を聞きました。

日本人のがんによる死亡者数を部位別に見ると、第1位は肺がんです(図1)。早期発見がとても重要な病気の一つですが、肺がんの早期はほぼ無症状であり、発見が遅れることが多々あります。そうした中でCT 検査により発見された肺がんは比較的早い段階であることが多く、その結果治療できたというケースも多く報告されています。そのため、通常の健康診断よりもさらに細かく検査を行うCTによる肺がん検診の取り組みが近年活発化しています。CT検査を含む人間ドックを受診している方も多いのではないでしょうか。また検診だけではなく、病院での一般的な診療においてもこのCTによる精密な検査はなくてはならないものとなっています。

このようなCT 検査の需要の高まりによりその検査数が増加するということは、その画像を観察してわずかな変化を発見し、それが病気かどうかを判断する(これを「読影」と言います)医師の負担が増加することにつながっています。CT画像の読影には豊富な解剖学的知識と経験を持つ放射線専門医および呼吸器専門医の力が必要です。この専門医師の数は限られているため、特定の医師に過剰な負担がかかっています。また、1 検査100~150 枚におよぶ膨大な枚数の画像を読影して病気かどうかの判断を行わなくてはならないため、その見落としの防止や読影時の心的負担も大きなものとなっています。

胸部CT画像の読影における課題とその解決策について、胸部画像読影の第一人者である、聖路加国際病院放射線科部長 栗原医師、および同科医長兼 胸部画像診断室 室長 松迫医師のお二方にお話を伺いました。

図1:がんの部位別死亡者数(男女計・全年齢/2018年)
*「人口動態統計」(厚生労働省大臣官房統計情報部編)をもとに作成

高まるCT読影需要と読影医師の負担

― 聖路加国際病院についてお聞かせください。

栗原先生(以下、栗原):聖路加国際病院は1901 年創立であり、西洋型の近代的な総合病院としては日本で最も古い病院の一つです。現在はベッド数が520 床です。毎日の外来患者数は平均2,550 人を超えていますので、ベッド数と比較して外来患者数が非常に多い病院の一つであると思います。我々が所属する聖路加国際病院の放射線科は一般病院としては大きな規模であり、聖路加国際病院本院、近くにある予防医療センター、さらに東京駅のそばにあるメディローカスという三つの施設すべてに対応しています。この三つを合わせますとかなり大きな所帯になり、撮影機器も多くあります。

栗原 泰之 先生

放射線科医の人数としては現在医師14名に加え10名の放射線科専属レジデントがいます。さらに非常勤の先生方もいらっしゃいまして24 名プラスアルファのリソースで業務を行っています。

― 現在院内で実施されている放射線検査数についてお教えください。

栗原:本院におけるCT、MRI (MagneticResonance Imaging)は合わせて毎日200 件前後の件数があります。我々の施設は大規模な救急病院でもあり、年間1 万台を超える救急車が来るため、その関連の検査も非常に多くなっています。これらの背景もあり、年間でCT、MRI 合計で約5 万件になります。

― 読影支援システム導入前の御施設状況、課題についてお聞かせください。

栗原:私たちは聖路加国際病院本院の業務以外に、予防医療センターで低線量CTによる肺がん検診を相当数実施しています。およそ1日20~50くらいの件数をこなしています。これらが先ほどの日常診療のルーティン検査に加わり、毎日読影しなければいけない状況でした。一日の業務が終わった後、疲れた頭でそういったものを全部見ていくわけですが、検査数も多くそれを確実に拾い上げるという業務は医師にとって大きな負担になっていました。

松迫先生(以下、松迫):私は2004 年に予防医療センターが今の向かいのビルに設置されたときに読影に携わることになりました。当時は今よりもさらにCTの読影件数が多い状況でした。なぜなら50 歳以上の方向けの検診ではCTはオプションでなく全員に実施するということを実践していたからです。当時1日100 件近くありました。2.5mmの薄いスライスを読影するということもあり、医師にとっては心的なストレスが非常に大きく、実際に読んでみると時間もかかるし大変だなと思いました。栗原先生もおっしゃっていたように、人間は疲れます。疲れてくるとどうしても一度見たものが本当に正しかったのかと不安になるという傾向が出てきます。それがさらにストレスになります。
CTであっても見落としやすい部分が二つあります。一つは気管支内の病変。もう一つは血管と同程度の径の病変です。薄いスライスで切るとドット状に見えますので非常に見づらく、見落としやすいのです。そのような病変の検出に苦労しました。

松迫 正樹 先生

栗原:そういう状況の中で、我々の負担を減らすことができないかを考えていました。例えば読影の速度を上げる、あるいは読影の確実性を上げる、要するに見落としがないような状況を維持することを目指しました。そのためにいろいろな方法がありますが、やはり先進のテクノロジーを使って我々の業務をある程度バックアップできる技術が必要でした。

病院紹介

聖路加国際病院

創立:1901年
所在地:<本院>
〒104-8560 東京都中央区明石町9-1
電話:03-3541-5151(代表)