水産業における近年の技術向上とその利用

水産研究・教育機構 水産技術研究所 今泉 智人

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目次
  1. はじめに
  2. モニタリング技術の発展
  3. センシングの高度化
  4. おわりに

はじめに

はじめに

水産資源、つまり「魚がどのくらいの量いるか」を遠隔的に把握する手法があれば、どんなによいでしょうか。具体的には、「いつ、どこに、どんな種類でどのくらいの大きさの魚が、何匹いるか」といったところです。このことは、裏を返せば予測にもつながるため、「明日、ここに網を仕掛ければ、いくらの儲けになる」とか「今週は、価格が安い小さな魚しか出ないから、網の修理をしよう」と予定を立てることが、漁師の判断でできるかもしれません。これらは水産資源の「自主的な」利用・管理につながると考えられます。

しかし、魚のような移動物体の予測は難しいのが現状です。陸上の技術に例えるのであれば、渋滞予測や気象レーダーなどでしょう。長期休みの時期には、高速道路が、どこで、いつごろ、どのくらい渋滞するかが情報として配信されます。しかし、車種や大きさといった詳細な情報は、必要性が低いため今のところ一般には公開されていません。また、高速道路のような「決まった道」が海中に存在するのかと問われれば、今のところ明確な「魚の通り道」は、暖流と寒流がぶつかり合う潮目くらいしか我々は把握していません。一方で気象レーダーは、最近は分単位での予想を配信しており、携帯電話(スマートフォン)への豪雨情報の配信なども行われています。その配信内容は、「現地点で何分後に数十ミリの雨が見込まれるため、注意が必要」といったところでしょう。これは、複数の地点で気圧の変化や、降雨量の計測などを実施して、予測までを実現しているということです。

両者の技術に共通しているのが、多点での精密観測結果を利用・活用して予測を行っている点です。複数の地点で移動物体の連続的な観測を行い、結果を複合して予測につなげています。つまり移動物体の予測を行うためには、多点での高精度モニタリングが必要です。話を海洋に戻すと、「海中の天気予報」というものが、実は存在しています。一部を紹介すると、JAXAひまわりモニタ1)や、日本近海の海洋変動予測システム(JCOPE)2)、太平洋および我が国周辺の海況予測システム(FRA-ROMS)3)などです。各予想サイトでは、モデルや観測データに違いはありますが、多地点での観測を行い、水温、塩分などの変動予測につなげています。また、緯度経度(水平方向)だけでなく、深さ方向も含めた鉛直分布も算出しています。これらは「魚の通り道」を把握する上で、有用な情報につながると言えます。

本稿では、水産業における現状の技術向上などを紹介しながら、今後の展望・希望を述べていきたいと思います。

モニタリング技術の発展

海洋のさまざまな動向を把握するための調査船は、目的に合わせた幅広い種類の調査を実施しており、高い精度でのモニタリングを実施しています。水産資源の増減傾向の把握や、海洋動態の把握、新規機器・調査手法の開発など、調査海域、時期、船に合わせて調査内容を入れ込んでいます。これらは、決まった期間を各研究チームで確保して実施していますが、悪く言えば、研究者同士で調査期間・船の奪い合いが起きているのが現状です。そのため調査船などを使用せず、観測点数の増加、つまりは無人観測技術の向上が望まれており、すでに無人船(Unmanned Surface Vehicle:USV)などの技術発展も多く報告されています。ここで、発展してきた技術と応用例をいくつか紹介します。近年、ドローン技術が発展してきており、その技術は、水産業にも活用されてきています。例えば、魚影を狙った鳥影探索への活用などです。以前はヘリコプターなども使用していましたが、それが新技術に置き換わり無人化に近づいています。