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コラム

車両自動化のカギを握る、高性能ストロークセンサ

目次

はじめに

ショベルカーをはじめとする建設車両や、トラクターなどの農業車両、その他クレーン車や鉄道、船舶などありとあらゆる作業車両において、オペレーターとして従事する労働人口の減少が近年大きな問題となっており(図1)、若者の就労者数の低下や熟練作業者の引退で生産性の低下が危惧されています。

図1:建設業就業者数の推移
(出典:日本建設業連合会「建設業ハンドブック2019」)

このような問題に対する解決策として、「IoT」というキーワードがここ数年盛んに叫ばれるようになりました。たとえば建設業においては国土交通省主導の「i-Construction」というスローガンのもと、各種センサを車体に取り付けて動作をサポートすることで、操縦の簡略化や自動化が進められています。車両の自動操縦により、省力化・省人化がなされることで生産効率を高める目的があります。今回ご紹介するシリンダー組み込みMTSシステムズ社製ストロークセンサ(以下、MTSセンサ)は、車体の油圧シリンダーのストロークを検知することで車両の自動化に貢献します。

建設・農業・運輸業などで使われる特殊車両において、油圧シリンダーは動作部分の最も重要な要素ですが、車両の自動化のために制御システムと組み合わせる上で、その動作ストロークをデータ出力できることが求められるようになってきました。当社が販売およびサポートしているMTSセンサは、車両の油圧シリンダーのストロークを計測するのに最も適した原理・構造を有しています。本記事では、同ストロークセンサの特長や油圧シリンダーへの組み込み方のご紹介、そしてセンサシリンダーによる車両の自動化例についてご提案します。

動作原理

磁歪式ストロークセンサ(直線変位センサ)は、その名の通り磁界中で金属に歪みが生じる磁歪現象を用いています。ロッド内部の磁歪線と呼ばれる特殊な金属線に電流パルスを流すと、磁歪線の円周方向に磁場が発生します。そこにマグネットを近づけると、電流パルスの磁界とマグネットの磁界により、局所的かつ瞬間的に強い磁界が発生します。これにより磁歪線が物理的にねじれ歪みを生じ、これが一種の機械振動波として磁歪線上を超音速で伝搬します。センサは、マグネット直下で発生したねじれ歪みがヘッド内部の基準点へ伝搬するまでの時間を計測しています。

図2:磁歪方式を用いたマグネット位置検出のしくみ

計測した伝播時間は、センサ内部でマグネットまでの距離へと変換されます。その後電圧、電流、またはCANなどのデジタル値へと変換されたのちにコントローラーへ出力されます。

構造

図3はシリンダーの内部の様子、図4はセンサ単体の写真です。MTSセンサの最大の特長は、油圧シリンダーの内部へ組み込まれることです。これにより高い耐久性・耐環境性を持ち、露天などの悪環境でも信頼性の高い機構を実現しています。

図3:MTSセンサを組み込んだシリンダーの内部構造

センサ自身はヘッド部、ロッド部、マグネットから構成されています。ロッド部とマグネットは非接触のまま、ヘッド内部の基準点からマグネットまでの距離を測定します。摺動するような動きがないため、長年の使用による劣化などの心配がなく、半永久的に稼動します。

図4:MTSセンサ単体の形状

自動化に向けた具体例

MTSセンサが車両自動化に向けてどのように使われるのかを具体的に例示します。

[メイン機構部] ~ 見える化・正確性・時間短縮 ~

たとえばショベルカーでは、ブーム・アーム・バケットのそれぞれの動きに油圧シリンダーが使われています。ショベルカーに限らず、車両のそのようなメイン作業の動きの部分にセンサを使うことで作業機構をロボット化することができます。先端の作業部位を見える化し、操縦者へのガイダンスとして作用させることで、作業の正確性が向上します。また、各部を連動させてスムーズに動かせるようにすることで作業時間の短縮も可能です。

[サスペンション] ~ 安定性 ~

サスペンションに組み込み、アクティブサスペンションとすることで、能動的にサスペンションの伸びや弾性を変化させます。これにより地面の凹凸や傾斜に左右されることなく、キャビンの揺れや傾きを安定化させることができます。

[ステアリング] ~ 移動の自動運転 ~

大型の車両ではパワーステアリングとして油圧による制御が用いられます。ステアリングをより精密に制御することは自動運転による移動の自動化につながります。

[アウトリガー] ~ 安全性 ~

長いアームを伸ばすような車両では、アウトリガーを十分に伸ばせない環境でアームを伸ばすことは転倒事故につながります。アームの伸びとアウトリガーの伸び、そしてウェイトの関係性から、重心位置が不安定になるような状態へはアームを伸ばせないように制御します。これによりアウトリガーが伸ばせない環境でも転倒することのない安全な車両が実現できます。

[タンク残量監視]

MTSセンサは、マグネットをフロートにしタンクに垂直に立てることで、液面計として使用することができます。液体を運搬する車両では、液体残量・充填量のモニタリングを行うことができます。

図5:MTSセンサが搭載される車両や部位の例

その他特徴を持った製品ラインアップ

MTS社では、車両自動化に向けた開発への協力の豊富な経験から、さまざまなコンセプトのセンサラインアップを開発してきました。以下に、車両向け製品の中でも特にユニークな製品をご紹介します。

シリンダーへの後付けができるセンサ

シリンダーにセンサを組み込むことが難しいような既存の車両に対して、シリンダーの側部にMTSセンサを「外付け」「後付け」することができます。大掛かりな開発や設計変更を行うことなく、油圧シリンダーのストロークを検知することができます。また、防水防塵は欧州規格での最高水準であるIP69Kを取得しています。

図6:シリンダー外付け用MXRモデル

メンテナンスができるセンサ

MTSセンサは非接触の検出原理のため、故障発生の可能性が非常に低い製品です。しかしセンサの交換が必要になった場合にも対応できるよう、一つのセンサで二つのモジュールを搭載している冗長モデルや、センサロッドをシリンダーから取り外さずにヘッドだけ交換できるヘッド分離可能モデルもあります。

図7.:冗長性を持たせた「MT」モデル(左)と
ヘッド分離できる「FMH」モデル(右)

小型・安価なホールエフェクトモデルセンサ

MTS社は主に油圧シリンダーへの組み込みとして磁歪式のセンサを製造・販売していますが、一部磁歪式でないホールエフェクト式センサというものもあります。センサヘッド・ロッド・マグネット、という構成は磁歪式と同じですが、位置分解能が0.2mm程度で短いストロークのみと性能面で劣る代わりに、ヘッドが小型でかつ安価なため、小型で製造数の多い車両に適したモデルです。

図8:ヘッドが小型で安価な「HE」モデル

あとがき

弊社ではMTSセンサ製品の販売を2018 年より開始し、販売のみならずサポートや装置開発の提案も行っています。これからも車両の自動化に向けた、シリンダー組み込み型ストロークセンサのご提供により、操縦者に優しい自動車両の開発に貢献していきます。

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