自動車計測ポータル-最新計測技術の情報発信サイト
お問い合わせ

ホイール6分力計の原理とその応用(1)

「ホイール6分力計の原理とその応用」コラム一覧

目次

実験の持つ意味

今、自動車業界は100年に一度と言われる変革期を迎えています。CASE、MaaSと呼ばれる新しい技術領域が出現し、グーグルやアップルといった企業が新しい競争原理を持ち込んできており、まさに群雄割拠の状態となっています。その中で自動車が道路を走り続ける限り変わらない性能があります。それは、「走る」「曲がる」「止まる」という基本性能です。 これらを実現するためのコンポーネントに、エンジン/トランスミッションなどで構成されるパワートレイン、タイヤ、ブレーキがあり、自動車の誕生から各メーカーは凌ぎを削って、その性能向上に並々ならぬ努力を注いできました。そして自動車が日常生活に欠かせない存在となった今、これらの基本性能に加え安心・安全で快適に使える移動手段を低価格で実現することが求められています。そのため、各社は実車での試験を、ベンチ試験やシミュレーションを使った試験に置き換え、効率を上げコストを下げる努力をしています。

では、このような状況のなかで、東陽テクニカが提供する「実験」はどのような意味を持つのでしょうか。ベンチ試験もシミュレーションも実車での評価がもとになっているのは言うまでもありません。実車状態をいかにベンチやシミュレーションで再現するかが重要になりますが、その際、必要になってくるのが実車状態での“データ”になります。このデータは、ベンチ上での試験対象の試験条件を合わせこんだり、シミュレーションのモデルを合わせこむコリレーションを行ったりするのに使い、またシミュレーションを行う上での入力条件としても使います。では、このもととなる実車状態のデータが正確でなかったらどうなるでしょうか?苦労をして合わせこんだベンチでの試験条件やシミュレーションモデルの精度、また、シミュレーションの入力条件が正しくなくなり、そこからアウトプットされた結果もまた、最悪の場合は使えないということになってしまいます。そのため、ベンチ試験でもシミュレーションでの評価でも、正しい実験を行うことが必須となります。

タイヤから入力される情報

さて、冒頭に挙げた走る・曲がる・止まるという自動車の運動を司る重要な部品の一つにタイヤがあります。タイヤは自動車と地面が接している唯一の部品であり、この接地面から多くの情報が車体側へと入力されてきます。その一つにタイヤ力があります。タイヤ力とはタイヤと地面の接地面における直行3軸(前後、左右、上下)、および、その各軸周りのモーメントの力のことです。このタイヤ力が発生することにより、自動車は走る・曲がる・止まるという運動をすることができます。例えば、自動車が曲がるという運動をするには、ドライバーがハンドルを切ることでタイヤの向きが変わり、その結果タイヤに横力:Fyが発生し、そのFyが車体の向きを変える働きをします。

図1:自動車が曲がる運動をするときに発生するタイヤ力

また、ユーザーが自動車を長期にわたり安心して利用するために最も大切なことは、「壊れない」ということです。その実現のために、各部品に適正な力を長時間入力して安全性を確かめる耐久試験が重要になりますが、車体を支えるサスペンションやショックアブソーバー、またはドライブシャフトといった重要部品への入力荷重の大きな源に路面からの入力があります。大きな段差や路面の凹凸など、走行中には路面からさまざまな力がタイヤを介して入力されます。

このように、タイヤから入力される力は、自動車を開発するうえで非常に重要な役割を果たします。では、この力を測定するにはどうすればよいでしょうか。その答えの一つに当社で取り扱っているホイール6分力計があります。

図2:PCB Piezotronics社製ホイール6分力計「SWIFT Evo」

ホイール6分力計

ホイール6分力計はホイールに取り付けてその中心に加わる6分力を計測するセンサです。主な構成部品としては、センサ本体、それにセンサを取り付けるために加工されたカスタムリムとハブアダプタからなります。

図3:「SWIFT Evo」の主な構成品

ではセンサ本体でどのように力を検出しているのでしょうか。センシング素子としては一般的にはひずみゲージが用いられていますが、製造元各社によって構造に違いがあり性能を決定付けています。東陽テクニカが扱っているPCB Piezotronics社(以下、PCB社)製の「SWIFT Evo」は図4のような内輪、外輪、それに内輪と外輪をつなぐビームから成る構造で、ひずみゲージはこのビームに貼り付けられていて、各力を計測しています。

図4:「SWIFT Evo」のセンサ構造

センサに求められる性能

さて、動的な現象を計測する上で、どのようにセンサを選定すればよいでしょうか。多くの点に注意しなければなりませんが、基本的なこととして、センサのS/N比(出力信号とノイズの比)と周波数特性が挙げられます。 S/N比を向上させるためには、さまざまな制約を守りながら、単位物理量当たりのセンシング素子からの出力電圧を向上させることが必要になります。「SWIFT Evo」は図5のようにビームに8角柱を使っており、ひずみゲージを貼り付けた部分にひずみを集中させることができ、単位荷重当たりの出力電圧の向上を実現しています。また、ある軸への入力が他の軸の出力に影響を与えてしまうクロストークに対する対策として、フレクシャ分離構造を採用しています。これらは特許技術となっており、「SWIFT Evo」の特長の一つとなっています。

図5:8角柱のビームに貼り付けられたひずみゲージ

周波数特性も重要な項目となります。例えば、ホイール6分力計が取り付けられた車両が段差のある路面をあるスピードで乗り越えるとき、動的な荷重変動がセンサに加わります。その際、センサの周波数特性がフラットでなければ、正しい荷重を計測できなくなります。「SWIFT Evo」は鍛造の金属から削り出してセンサボディを作る特徴的なワンピース構造を持っているため、剛性が非常に高く、良好な周波数特性を得ることができます。図6は、弊社で「SWIFT Evo」の動特性を計測した結果になります。センサの固有振動数は1,440Hzと非常に高く、1,000Hz付近までフラットな特性を示していることが分かります。PCB社が行った解析でも同様の結果となっており、実験結果を裏付けることができています。この実験はモーダル解析の権威であり、弊社の顧問でもある中央大学名誉教授の大久保信行先生のご指導によるものです。

図6:「SWIFT Evo」の動特性を計測した結果

また、一切ボルト結合を使わず、センサが荷重を受けた際にボルト結合による微小滑りなどが発生せず、金属の弾性変形のみが発生するため、線形性が非常に良好だということも特筆すべき点です。

※本記事をお読みいただいた方でご希望の方に、以下資料をPDFファイルにてお送りいたします。
こちらよりお申し込みください。

・実験レポート「SWIFT Evo 固有振動数」
・PCB社の特許技術「『SWIFT Evo』による6分力の計測原理」

PDFファイルのお申し込みはこちら

実験指導:東陽テクニカ顧問 中央大学名誉教授 大久保 信行

本記事に掲載の計測試験にご興味がございましたらお気軽にお問い合わせください

「ホイール6分力計の原理とその応用」コラム一覧

 
PageTop
本ウェブサイトではサイト利用の利便性向上のために「クッキー」と呼ばれる技術を使用しています。サイトの閲覧を続行されるには、クッキーの使用に同意いただきますようお願いいたします。詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください。