最新のミリ波レーダーHILSソリューション

コラム

最新のミリ波レーダーHILSソリューション|自動車計測ポータルサイト|東陽テクニカ

HILS(Hardware in the Loop Simulation)は、試験対象およびシステムの一部を実際のハードウェアを用いて動作環境を作り上げるシミュレーション方法です。自動運転実現のために使われるECUと処理アルゴリズムを試験対象としてミリ波レーダーを実際にハードウェアで構築するのがミリ波レーダーHILSです。

現在の市販車両に搭載されているADAS(先進運転支援システム)機能には、自動緊急ブレーキ(AEB)・前方車両追従式クルーズコントロール(ACC)・車線逸脱警告(RDW)・誤発進抑制などがあります。これらの機能を動作させるためには、状況を判断するのに使用するセンサーの役割が非常に重要です。現在はそのセンサーとして、カメラとミリ波レーダーのいずれかもしくは両方を使用してADAS機能を実現するのが主流となっています。画像処理技術を利用したカメラは、運用は比較的簡単ですが夜間や太陽光でのハレーションなど、不得意なシチュエーションが存在します。一方、電波を利用したミリ波レーダーは前途の可視光での不都合がない代わりに、反射散乱の影響、識別距離、カバーできる角度範囲、検出限界感度などの問題があります。そのため、複数種類のセンサーを組み合わせて使う「センサーフュージョン」が行われることがあります。

ミリ波レーダーセンサーを主として利用した緊急ブレーキ、前方車両追従式オートパイロットなどのADAS機能の評価を、実走行試験だけに頼るのではなく、ラボ環境で事前テストを数多く実施したいという要求が自動車メーカーで増えています。このような要求に対応するための取り組みを紹介します。

UniqueSec社での「ASGARD1」+「CarMaker」動作検証風景|自動車計測ポータルサイト|東陽テクニカ

UniqueSec社での「ASGARD1」+「CarMaker」動作検証風景

まず、東陽テクニカが取り扱うターゲットシミュレータ「ASGARD1」のメーカーである、スウェーデンUniqueSec社では、2019年秋から半年間、IPG Automotive社の「CarMaker」に代表されるような交通環境シミュレーションソフトウェアを用いて交通環境シミュレーションでの動的な外環境シナリオを作成し、「ASGARD1」と連携させた動作検証を行いました。これは、「CarMaker」でのシミュレーションによって作成したターゲットリスト(複数の反射物体のそれぞれの相対位置座標、相対速度、反射断面積:RCS)情報を受け取り、レーダー信号をリアルタイムで発生させて、あたかも実際に道路を走行しているようにミリ波レーダーセンサーを騙すという検証です。引き続き、このソリューションの開発および検証を、HILS用リアルタイムPCを使って進めています。

「ASGARD1」のターゲット情報入力インターフェース(上段)と「CarMaker」での交通環境シミュレーション(下段)|自動車計測ポータルサイト|東陽テクニカ

「ASGARD1」のターゲット情報入力インターフェース(上段)と「CarMaker」での交通環境シミュレーション(下段)

一方、東陽テクニカでは、「CarSim」など車両運動シミュレーションソフトウェアと連携できるレイトレース(光線追跡)法レーダーシミュレーション(ITKエンジニアリングジャパン社の「iVESS」など)を利用して同様の動作検証をしています。その検証にもUniqueSec社の特許技術が搭載されたターゲットシミュレータ「ASGARD1」が重要な役割を果たしています。

ミリ波レーダーセンサーとカメラに実機を利用したHILSの構築例|自動車計測ポータルサイト|東陽テクニカ

ミリ波レーダーセンサーとカメラに実機を利用したHILSの構築例

2020年5月にパシフィコ横浜で開催予定の「人とくるまのテクノロジー展2020 横浜」でこのHILS試験システムへの取り組みを、デモンストレーションを通じてお見せできるように準備を進めています。

また、2020年6月、UniqueSec社はMIMOマルチアンテナを搭載した次期モデルをリリースする予定です。次期モデルは、MIMOマルチアンテナの使用と、伝搬チャネル行列を利用した計算によりレーダー反射の到来角情報を提供できるようになります。道路脇からの飛び出しシナリオを実施するには、反射体の方向(ターゲットの到来角情報)を再現することが重要となります。将来のADASでは、ブレーキだけでなく、ハンドル操作による回避運動が追加されると予想されますが、これには「飛び出してくる物体の方向」情報が必要です。試験対象レーダーの受信アンテナと「ASGARD1」フロントエンドアンテナで構成されるチャネルの特性をいかに取得し校正するかが重要な技術的チャレンジとなっています。

次期モデルに使用されるMIMOマルチアンテナの例|自動車計測ポータルサイト|東陽テクニカ

次期モデルに使用されるMIMOマルチアンテナの例

さらに現在、UniqueSec社では、受信IQ生データが取得できるTI(テキサスインスツルメンツ)社のレーダーキットを用いて、到来角シミュレーションのコンセプト検証を行っています。今後、「ASGARD1」に電波伝搬特性を測定するためのチャネルサウンダー機能を持たせ、市販レーダーでのチャネル特性取得・校正の機能実装等を行った後、リリースの予定です。MIMOマルチアンテナを持つ次期モデルでのHILSソリューションにご期待ください。

製品詳細はこちら:https://www.toyo.co.jp/emc/products/detail/ASGARD

製品関連ビデオ:
製品紹介 https://www.youtube.com/watch?v=VBfqTMoQOiU&t=14s
HILS https://www.youtube.com/watch?v=hPabYpxiJC4

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