メーカーCEOが語る
LiDARのニーズ拡大と今後の開発戦略

インタビュー

メーカーCEOが語る LiDARのニーズ拡大と今後の開発戦略|自動車計測ポータルサイト|東陽テクニカ

Filip Geuens氏

自動運転開発に必須のLiDAR。その市場はますます拡大し、自動車のフロントガラスへの一体化など応用範囲も広がっています。
東陽テクニカは、既存モデル「XenoLidar Highway」 に加え、2019年9月に新モデル「XenoLidar Intercity」を発売しました。既存モデルとの違いや「Intercity」の強み、今後のLiDAR製品の開発戦略について、開発元であるベルギーのXenomatiX(ゼノマティクス)社CEO、Filip Geuens(フィリップ・ギュエンス)氏に話を聞きました。

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クルマの周辺環境をはかる「XenoLidar Highway」

—— 周辺環境計測システム「XenoLidar Highway」が発売されてから1年以上経ちましたが、お客様の反応はいかがですか。

実に前向きな反応をいただいています。自動車業界は新しい技術を理解しようという状態にあり、本物の技術が強く求められています。良い技術とそうでない技術を見分けるのは困難ですが、技術を理解していただければ、XenomatiX製品を気に入っていただけると信じています。

広視野計測も可能な「XenoLidar Intercity」をリリース

Filip Geuens氏|自動車計測ポータルサイト|東陽テクニカ

—— 2019年9月、新たに「XenoLidar Intercity」が発売されました。ターゲットとなるのはどんなお客様でしょうか。

自動運転のレベル3(条件付き自動運転)向けの大量生産をメインターゲットにしていますが、今後の可能性としては、道路調査や工場や病院などで使われる無人搬送車などでも使っていただけると期待しています。

—— 「XenoLidar Intercity」と「XenoLidar Highway」の用途の違いについて教えてください。

それぞれの製品の特徴はまさに名前が示す通りです。「Highway」モデルは基本的に高速道路のドライブに適しています。より早いスピードで運転するときには、より遠くを見ることが重要になります。そうした遠くの動きにいち早く反応しなくてはならないケースでは「XenoLidar Highway」が有効です。高速道路での自動運転にも活用できます。一方、混雑した道路での自動運転では、広視野角の技術をより強化した「Intercity」モデルが適しています。「Highway」の4倍という広範囲を捉えることができます。渋滞しているときは、さまざまな方向を見ることが重要ですからね。そしてもちろん、自動車に乗っているとこれらの状況が混在するのが普通で、高速運転も渋滞も起こり得ます。よって、一台の車に異なるLiDARを搭載することが必要だと考えます。さらなる進化、小型化、その他諸々の要素が実現すれば、異なる種類のLiDARを組み合わせたモデルも開発できるでしょう。また、将来的には自動車の前だけでなく、後ろや両サイドにもLiDARを装備するようになると思います。

「XenoLidar」による公道での実測例:3D点群データ|自動車計測ポータルサイト|東陽テクニカ

「XenoLidar」による公道での実測例:3D点群データ

—— XenomatiX社製品の強みを教えてください。

「XenoLidar Highway」と「XenoLidar Intercity」の両方がsolid-state型であり、これこそが他の製品と異なる最大のポイントです。多くのLiDAR企業は、solid-state型だと主張した製品を販売していますが、それは本当の意味でのsolid-state型ではないこともあります。当社の定義では、solid-state型とは二つの特徴を意味します。一つは「可動部分を持たない」こと、そしてもう一つは「半導体部品をベースにした構造であること」です。多くの産業でもそれをsolid-stateの定義として認識しています。当社はこの二つの定義を満たすことを意識しており、そのためこれを「true-solid-state」と呼んでいるのです。これこそが他の競合企業との違いですね。

—— 類似製品はないのでしょうか?

ないと認識しています。solid-state型と併せて、機械的部品を排除するためにマルチビーム方式を採用しています。多くの競合品では、レーザー光をさまざまな方向に動かすスキャンメカニズムを採用していますが、当社のソリューションは、多くのビームを同時に出すマルチビーム方式です。

LiDARの量産化に向けた今後の開発戦略

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—— BMWが御社の競合企業であるInnoviz Technologies社のLiDARを採用すると決定しました。XenomatiX社も量産化に向けた準備をしていますか。その場合の強みは何でしょうか。

量産化のポイントは、技術そのものにあります。
スケーラブルな技術(技術やその部品が大量生産され、かつ低コストで供給可能な技術)を使うことが重要です。当社が使っている部品は、まさに成熟した技術のものですので、廉価に製造が可能です。そのため、量産化に対応することが可能です。

—— 今後、カスタマイズした製品を個々のお客様向けて届けるとともに、「量産」についても考えていく必要があるということですね。どのような戦略を考えていますか。

個々のカスタマイズも量産も、両方実現していくつもりです。モジュール化という方法がそれを可能にします。一つの製品をゼロから完全カスタマイズで生産するのではなく、重要な構成部品を生産し、それを組み合わせて一つの製品にするのです。それぞれの生産工程部品は大量生産されるため、コスト削減につながります。そして、構成部品を組み合わせることで、カスタマイズした製品を個々のお客様向けに生産することも可能になります。

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—— 今後のXenomatiX社のLiDAR開発戦略に関して教えて下さい。

目指しているのは、量産化に向けての事業拡大と技術の継続的な向上です。自動運転車は、初めはそれほど高速では走れませんが、次第にスピードアップをしていくでしょう。必然的に、高解像度、高精度、広視野という要求が出てきますので、それらの要求に応えるため、発展し続けています。

—— 日本市場については、どうお考えですか。

XenomatiX社にとって日本市場が重要なのは明らかです。日本とは強いつながりを持っています。株主もいますし、日本における存在感を築けていると思います。日本には、新しい技術を求める良い意味での「欲」があります。自動車市場のお客様は、新たな技術を試し、評価する気持ちが強いと感じます。当社の技術に関しても、強い関心を示してくださっていると思います。そして、東陽テクニカが代理店をしてくれているおかげで、私がそれほど頻繁に日本に来る必要もないのです。

期待の技術LiDAR

Filip Geuens氏|自動車計測ポータルサイト|東陽テクニカ

—— お客様の反応で印象に残っていることはありますか?

先週、ヨーロッパの自動車メーカーとのディスカッションに参加してきました。そのミーティングの中で、LiDARの技術をよく理解している方が、「これは、完璧なソリューションだ」と発言してくれたのです。こうした反応はとても励みになります。
LiDARの市場は世界規模です。中国、アメリカ、ヨーロッパ、そして日本にお客様がいますが、その分競合企業もたくさんあります。多くの企業が巨大な自動車企業に新技術でアプローチしています。そして当社もそうです。世界のどの市場も無視することはできません。当社の技術をさまざまな角度からプロモーションしていきます。

—— LiDAR技術の今後についてどうお考えですか?

LiDARへの期待は、とても高いです。自動運転車開発には欠かせない技術であり、自動運転車には多くのメリットがあるからだと思います。例えば、若い人たちの中には、自分で車を運転することに全く興味がない人たちが多くいます。しかし、自分たちで操作する必要のない自動運転車には興味を持つのではないでしょうか。
普通、消費者というのは商品が世の中に出て初めて興味を持ちますが、自動運転は例外的です。まだ技術が確立していないというのに、非常に大きな期待が持たれています。自動運転車の進化は止めることができない、そしてLiDARは自動運転開発の重要なソリューションの一部であると確信しています。

—— 貴重なお話をありがとうございました。

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