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技術コラム
 執筆者:株式会社 岩根研究所 関口 隆氏

撮影奮闘記 in 灼熱のサウジアラビア

目次

はじめに

岩根研究所と東陽テクニカが共同開発したドライビングシミュレータ用実写映像再生ソフトウェア「Real Video Drive Player」に使われる実写映像は、「IWANEモバイルマッピングシステム(IMS)」を使って撮影されています。「IMS」は道路上のあらゆる情報を撮影し、その撮影した映像から3次元座標を取得できるため、「Real Video Drive Player」では実写映像にもかかわらず車線変更や視点変更ができます。

「IMS」を使う方法はレーザー計測を用いる方法に比べてコストが非常に低く、短期間で長距離のデータを取得することができます。また、3次元座標が付加された映像は汎用性が高く、地図と映像が連動したGIS(地理情報システム)プラットフォームや、実映像とCGモデルを結合した景観シミュレーションなど、多くの可能性を持っています。特に道路管理や資産管理を行うためのプラットフォームとしての需要は多く、タイ、香港など多くの国や地域で用いられています。

岩根研究所は、2018年11月から2019年2月まで、サウジアラビアにおいて「IMS」を使った撮影を行いました。その撮影距離は2,000㎞。単純な移動距離では5万㎞を超えます。撮影された映像は全国各所にある役所・省庁からWebを利用して見ることができるようになり、見たいと思っている場所(物)の絶対位置の確認や道路幅の計測、工事箇所の事前把握、電灯・信号・消火栓・椰子の木などの資産管理に使われます。

今回のサウジアラビアでのプロジェクトはステージ2で、ステージ1は以前に首都リヤドで同様の撮影を行いました。その結果が認められ、ステージ2ではサウジアラビア全国での撮影となっています。異国での撮影ならではの奮闘記をお楽しみください。

油と太陽と砂 -中東の雄・サウジアラビア王国-

みなさんはサウジアラビアという国にどのような印象を持たれているでしょうか?
日本にいるとサウジアラビアの情報はあまり入ってこず、石油と砂漠の暑い国、というイメージが一番強いのではないかと思います。実際に石油と砂漠は思っている以上に多くあります。日本が石油を一番多く輸入している国はサウジアラビアですし、日本の国土の約6倍という広大な面積を持つものの、その面積の約98%が砂漠です。首都リヤドはサウジアラビアの中心近く少し東にあり、砂漠の中にオイルマネーをふんだんに用いてつくられました。

気候は11月~2月が冬、3月~10月が夏であり、5月~8月が暑さのピークで40℃以上が連日続きます。意外と湿度も高く、あまり良い環境ではありません。
道路状況はアスファルトの質が良いとは言えず、また路面が広いため走行速度も比例して高いです。

住民の多数がイスラム教徒で、お祈りが1日5回行われます。

図1:サウジアラビアの位置

図1:サウジアラビアの位置

図2:夕焼けに染まるダンマーム(サウジアラビア東部)の街並み

図2:夕焼けに染まるダンマーム
(サウジアラビア東部)の街並み

環境順応 -スペシャルカスタマイズ-

今回行ったのは“高精度移動計測”であり、全周囲(360度)の映像から位置情報を取り出します。サウジアラビアでの撮影には、全周囲カメラ2台、高精度GNSSを車両(現地調達)のルーフに搭載した機材を用いることにしました。撮影車はサウジアラビアで一般的に走っているSUVタイプの車です。
今回は、冬期に撮影を行ったため気温についてはそれほど気にする必要はありませんでした。それでも気温の高い日に直射日光の下でしばらく停車していると、ボンネットで目玉焼きが作れそうにはなりますが…。

日本では気にならないことについても気にする必要があり、それが砂対策です。日本の砂とは違い粒子が非常に細かいため、とにかくどこにでも入り込んできます。この国で走っている車のボンネットを開けてみると、エアーフィルターが日本で走行している車と比べて数倍大きい理由が理解できます。
撮影専用車を使用しているわけではありませんので、ルーフに搭載した機材から車内に設置してある機材へ接続するのに、窓を数センチメートルだけ開けてケーブルを通していますが、この隙間から砂が入り込んできます。パッキンで窓の隙間を埋めることにより砂対策を施しました。
撮影に使用した機材はシンプルかつ少ない部品構成のため、砂対策以外は何もしていません。極寒のロシアから灼熱のサウジアラビアまで、ほぼそのまま使用できる機材に頼もしさを感じます。使い方も数日の練習でマスターできるほどシンプルなので、誰でも扱うことができます。この機材が世界中で活用されることを願っています。

図3:「IMS」撮影車両(SUVタイプ)

図3:「IMS」撮影車両(SUVタイプ)

昔はラクダ、今はSUV -キャラバン撮影-

時が止まる時

撮影は簡単です。全てのセッティングを終えてしまえば、あとは録画ボタンを押した瞬間から全周映像撮影が始まります。設定はフルオートです。撮影ツール上でGPSと連動した地図を見ながら撮影者がドライバーに指示を与えて走行し撮影対象箇所にマーキングを入れていくだけです。

朝8時頃~夕方16時頃まで太陽の向きや雲の状況などを気にしながら作業を行っていきますが、ここはイスラムの国、前述した1日5回のお祈りの時間があります。ほとんどの人が近くのモスクへお祈りに向かいます。そのため、ガソリンスタンドやレストランも閉店しますし、商店はシャッターを下ろします。撮影車のドライバーもイスラム教徒のため、撮影を中断してモスクに向かいます。国のほとんどの機能が停止しますので、私たちはモスクへまでは行かないにしても、じっとその時間の終わりを待っています。

図4:お祈りが行われるモスク

図4:お祈りが行われるモスク

道路設計の違い

左折ができません。大きな交差点を除いて基本的には中央分離帯が設けられています。そのため、左折ができず、左折して行きたい場所に辿り着くためには、直進してUターンをして戻ってきてから右折する必要があります。市街地ならこのロスタイムも5分や1km程度で済みますが、郊外になると10km走ってUターンして10km戻ってくるといったことも頻繁にあります。これだけで30分消費してしまうので、事前の撮影計画は日本で行う場合のそれよりも重要です。(しかも右側通行のため頭の中がゴチャゴチャになります。)

図5:砂漠を横断する道路に併走する巨大送電線

図5:砂漠を横断する道路に併走する巨大送電線

雨と砂嵐は突然に

あまり知られていませんが、サウジアラビアは海岸線付近を除いて、高所に位置しています。首都リヤドで標高700m程度です。雲の動きが速いので長時間は続きませんが、晴れていても突然雨が降り出すことがあります。撮影時に雨が降ると中止せざるを得ませんが、この雨に大量の砂が含まれて落ちてくるため、撮影車や機材は一瞬にして泥と砂で汚れます。

また、雨とは別に砂漠特有の砂嵐があります。遭遇する回数はそれほど多くはありませんが、砂嵐がやってくると一面黄色の世界に変わります。視界も20m程度になりますので、撮影どころではありません。強い風を使って細かい砂でヤスリを掛けられているような状況なので、急いで機材を守らなければなりません(生活防水程度の耐水性はありますので、雨だけならそれほど慌てる必要はありません)。砂を全身に浴びながら機材を片付けるのはなかなかできない経験です。

図6:地層に見るサウジアラビアの重ねた歴史と文化

図6:地層に見るサウジアラビアの重ねた歴史と文化

おわりに

気がつけば、サウジアラビア全国にまたがる全10エリア(十数地区)で合計2,000km以上の撮影を終えました。大きなトラブルもなく終えることができたのが最大の喜びであり、また現地の人たちが、珍しいものを見付けたとばかりに私たちの写真を撮ってくるのが大変印象的なプロジェクトでした。

図7:イスラム教2大聖地のひとつ マディーナ(預言者のモスク)

図7:イスラム教2大聖地のひとつ マディーナ(預言者のモスク)

この映像データは処理(現在進行中)が行われ、最終的にはサウジアラビア政府内のサーバに格納され、各役所からイントラネット経由で閲覧・操作ができるようになります。活用方法は多岐にわたり、例えば街灯・消火栓・標識・駐車場・パームツリーなど資産管理をしたい対象のデジタイジング(3次元情報を取得しデータ化すること)を行った上での3次元位置情報付きのアセットマネジメント、また、3DCGを配置しての工事計画や道路規制の事前確認などに使えます。これは、データを使用する人を選ばず、プロからアマチュアの方までオールラウンドな情報共有が可能になることを意味します。
加えて、多少の追加処理が必要にはなりますが、高精度の3次元位置情報が入っているため、自動運転用の機械地図(人間ではなく機械が見るための3次元ベクトル地図)を作成するポテンシャルを持っています。

図8:「IMS」データの使用例(WebALP3.1上での表示例)

図8:「IMS」データの使用例(WebALP3.1上での表示例)

計測試験に関するお問合せ 本記事に掲載の計測試験にご興味のある方は、
東陽テクニカマーケティング部(TEL:03-3245-1067 MAIL: marketing@toyo.co.jp)までお気軽にお問い合わせください。
 
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