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 株式会社東陽テクニカ 理化学計測部 三分一 拓実

中国でEV(電気自動車)の充電を試してみた!?

はじめに

近年、電気自動車(EV)/プラグインハイブリッド自動車(PHEV)は、世界中で急速に普及しつつあります。2017年に全世界で販売されたEV/PHEVの台数は約122万台で、そのうち約半分の57.9万台は中国で販売されています。EVは車載バッテリを充電することで走るため、EV充電器が必要となります。このEV充電器は直流500V程度の電圧で充電するものが多く、安全が確保された状態でなければ充電できないよう設計されています。

EVの充電に関する技術はまだ新しく標準規格は各国によって異なります。例えば、日本はCHAdeMO規格、北米・欧州はCCS規格、中国はGB-T規格を採用しています。このようなEV充電の規格があるにも関わらず、EVとEV充電器の組み合わせによっては、制御信号の通信不具合により充電が異常中断されるなど、思わぬトラブルが発生する事例があります。今回は、特にEVの普及が著しい中国で充電実験をし、充電が行えなかったEVとEV充電器について、どこに問題があるのかを調べてみました。

写真1:独comemso GmbH社製「GB/T DCアナライザ」

写真1:独comemso GmbH社製「GB/T DCアナライザ」

写真2:中国市販EVとEV充電器を用いた充電解析の様子

写真2:中国市販EVとEV充電器を用いた充電解析の様子

EV充電における課題

EVとEV充電器は通信しながらお互いの状況を確認し、安全が確認された状態になって初めて充電が開始されます。EVが充電できない原因としては、通信に異常があったり電気が流れていなかったりということが考えられますが、通常人の目でこれらを確認することはできません。東陽テクニカでは、EV充電時に発生するさまざまな問題を“可視化”するツール、「EVチャージアナライザ/シミュレータ」を取り扱っています。そのツールを使ってお客様と実験を繰り返してきた経験から、EVの充電問題は以下のような原因で起こることが分かりました。

  1. 同じ規格でもバージョンが複数あり、互換性がない部分がある。
  2. 規格の解釈が統一されておらず、EV・EV充電器メーカーにより独自の実装がされている。
  3. 市販されているEV、EV充電器がそもそも規格に準拠していない。

今回の中国での実験でも、充電規格の不適切な実装が原因と思われる充電不具合が確認されました

充電時の安全性を脅かす不適切な接続状態確認

EV充電は高電圧、大電流にて行われるため、安全を確保した状態で行う必要があります。そのためEV充電コネクタには充電のための電力線のみならず、さまざまな制御信号線が規定され、EVとEV充電器は常に相互の状態を確認しながら、安全に充電を行います。CC1、CC2の信号線はEVとEV充電器の接続確認を行う信号線です。

図1:GB/T対応の充電コネクタ(左)と接続確認用の信号線

図1:GB/T対応の充電コネクタ(左)と接続確認用の信号線

EV充電器の充電コネクタをEVへ装着すると、下記に規定されるように、CC1、CC2の電圧は12Vからそれぞれ4V、6Vへと下降します。これによりEVとEV充電器は、相互に充電ケーブルが確実に装着されたことを認識します。

図2:GB/T 27930規格でのCC1とCC2の信号線の電圧について(検測点1がCC1、検測点2がCC2。)

図2:GB/T 27930規格でのCC1とCC2の信号線の電圧について(検測点1がCC1、検測点2がCC2。)

中国での充電実験

<ケース1>

市販のEVとEV充電器を用いて充電をしながら、「GB/T DCアナライザ」を使用し状態を解析したところ、下図の様にCC1とCC2の電圧がそれぞれ2.4Vと3.4Vと計測されました。これは規格で規定された下限電圧値以下であるため、適切な接続状態とは言えません。本来であれば、充電が開始されてはなりません。しかしながら、この状態でもEV充電器は安全な接続と判断して次のステップへ進み、電力線に400Vが印加され、充電が開始されてしまいました。

図3:実際のEVとEV充電器のEV充電時の信号線の電圧について

図3:実際のEVとEV充電器のEV充電時の信号線の電圧について

<ケース2>

次に、同じEVに別のEV充電器を接続したところ、充電エラーが発生し充電が始まりませんでした。こちらも「GB/T DCアナライザ」で充電状態を解析したところ、このEV充電器が、本来充電開始の初期段階に実施されるべき絶縁チェック試験を行わない仕様となっていたため、EVが充電を中断していることが分かりました。このケースではEVが適切な動作を行い、安全に充電を中断していたのです。

図4:正常充電時と充電異常発生時の通信状態のモニタ

図4:正常充電時と充電異常発生時の通信状態のモニタ

このように、EV充電における通信プロトコルは標準化されているにも関わらず、完全には準拠していない製品が市販されてしまっているのが現状です。

安全なEV社会に対するアプローチ

各充電規格団体は、EV充電における通信プロトコルの試験手順を規定し認証制度を確立するなど、より高品質かつ安全なEV充電の実現に向けた取り組みを継続しています。一方で、特定の地域においては、不適切なEV充電器が設置されてしまっているのも事実です。今後さらなるEVの普及に伴い、当社が取り扱う「GB/T DCアナライザ」(中国向け)をはじめ、「CHAdeMOアナライザ」(日本向け)、「EVCAアナライザ」(欧米向け)が活躍するシーンがますます増えてくると思います。以下はその一例です。

  • 市場調査:EV充電器のバージョン、設置台数、設置エリア、挙動を確認する。
  • 自動車メーカーの開発:
    - 自社の車両がどれくらいのエリア・台数をターゲットに販売するかの計画を立て、ターゲット市場に存在するEV充電器のスペックを調査する。
    - 車載部品としての電子制御ユニット(ECU)の充電時の振る舞い、またそれらの部品を組み合わせた実車レベルで充電の振る舞いを確認する。
  • 自動車メーカーのアフターサポート:市場で不具合が発生した際、現地調査を行い、設計部門や品質保証部門などへフィードバックする。

世界中で急速に成長を続けるEV社会をより安全で便利なものとするために、東陽テクニカは“はかる”技術でサポートし続けます。

本記事に掲載の計測試験にご興味がございましたらお気軽にお問い合わせください
 
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