蓄電デバイスとしての LIB(Lithium Ion Battery)と 日本の現状(1)

コラム

蓄電デバイスとしての LIB(Lithium Ion Battery)と 日本の現状(1)|自動車計測ポータルサイト|東陽テクニカ

早稲田大学 特任研究教授 逢坂 哲彌

はじめに

リチウムイオン電池(LIB)は1990 年代初頭にソニーよりビデオ電源として販売・実用化され、その後、日本で着実にシェアを伸ばしながら成長してきたエネルギー密度の高い二次電池であります。このシリーズは筒型18650として定着し、一方では積層型また、その複合型などと発展してきています。1998年頃までは、その世界シェアはほぼ100%でしたが、ちょうど21世紀に入った頃から、韓国、中国製の電池がシェアを伸ばし、2000年以降、日本のシェアが減少し、2008年にはほぼ世界シェアの半分となり、2011年には4割を割り込みました( 図1)。さらに、2014年には3割程度まで落ち込んでしまいました。実際の日本の販売量の金額としては、6,000億円程度で変わっていないということから、一定量は出ていますが、この分野の大きいシェアを確保できていないということになります。最大の理由としては、価格による国際競争力の低下があげられますが、この経緯は日本が過去たどってきたDRAMや液晶パネル、太陽光パネルなどと全く同じ傾向を示しており(図1)、LIBも先行き日本のシェアがほとんどなくなってしまうという傾向にあります。20兆円市場となる中での6,000億円では、全体シェアの数パーセントになってしまうでしょう。一方、小型携帯用電池に関してはこのように日本は既に主役ではないですが、自動車用電源、いわゆる安全性が担保された大型電池に関しては、日本は高いシェアを誇っています。しかしながら、2014年頃に韓国で発売された本分野対応の電池が車に搭載されはじめると、日本のシェアは100%を切り、このままでいるとこれも低下することが懸念されます。このような状況を鑑みると、日本で生まれた先端技術が世界で生き残るための戦略的な対応と工夫が今後より必要になってきているでしょう1)

蓄電デバイスとしてのLIBについて

蓄電池は携帯電話用のワット数の小さいものから、少し大きくなってパソコン用、それが大きくなってくれば、自動車用電源や家庭用定置電源となり、それがもっと大きくなれば、エネルギーを貯めるあるいは電力バックアップ型となる蓄電システムにまで使われています。鉛蓄電池、ニッケル水素蓄電池に対してエネルギー密度が高い蓄電池としてLIBが注目され、これらの各分野への応用がなされていますが、LIBは現在ではエネルギー密度が非常に高くなってきて、その反面、安全性からみると発火などの可能性が高くなってきているといえるでしょう。エネルギー密度がガソリンの3分の1ぐらいまでになってきているので、それだけ発火などの可能性が高いことは当然といえ、今後は、いかに安全性と信頼性を高めた電池を開発していくかがより重要となってきています。エネルギー密度を高くすることと安全性を確保することを両立させなければならない必然性がでてきています。また、使用されているものが、今まで以上に人命や人の日常生活に密着してきますと、ひとたび起きた事故が人や社会の安全性に直結するようになり、このような事故が極力起きない安全性を担保にした電池を作ることが重要となります。

図1:電子デバイス機器における日本企業の世界市場シェア小川紘一 「新・日本型イノベーションとしての標準化・事業戦略(11)」より、内海氏が加筆|自動車計測ポータルサイト|東陽テクニカ

図1:電子デバイス機器における日本企業の世界市場シェア
小川紘一 「新・日本型イノベーションとしての標準化・事業戦略(11)」より、内海氏が加筆

参考文献
1):逢坂哲彌監修“ものづくり大国の黄昏‐巨大市場を目前に急失速する電池産業‐”、日経BPコンサルティング、2012.

*東陽テクニカルマガジン 第22号より掲載

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