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コラム電動化2015/04
動力の歴史を変えるモータ開発の最前線
~トップランナーモータ、超高速モータ:
省エネと高性能モータ開発のためのトルク計測~
 1/2 株式会社東陽テクニカ
機械制御計測部 小島 健介
コラム電動化2015/04
動力の歴史を変えるモータ開発の最前線
~トップランナーモータ、超高速モータ:
省エネと高性能モータ開発のためのトルク計測~
 1/2 株式会社東陽テクニカ
機械制御計測部 小島 健介
*東陽テクニカルマガジン【第16号】2015.4より掲載
はじめに
10年、20年前のモータは一定回転数で 回ること、トルク・回転数・出力の特性が 規定のものであることが求められました。しかし、世界的に持続可能なエネルギーの消費や安心・安全が求められ、近年のモータは、高効率・低消費電力・静音・ 均一なトルク・速い応答・フェールセーフ など、使われる場面に応じて様々な性能が必要とされるようになりました。
このように世界の動力が変化している背景には、エレクトロニクスの分野の飛躍的な発展があります。モータというと昔は機械関係のエンジニアが開発する回転機械というイメージでした。しかし、今は試作品を作らなくても、机上でのコンピュータ計算だけで求める性能のモータを設計することが可能になり、ソフトウェアのエンジニアや電子回路設計の技術者も数多くモータの開発に携わるようになりました。その結果、近年はあらゆる動力にモータが使われ、動力の歴史を変えると言ってもいいほどの変革が起こっています。例えば電気自動車に代表されるように、ガソリンエンジンの動力と排熱ではなく、電池とモータで動く車が実現され、様々な駆動機械が電動モータに置き換わっています。
トップランナーモータ
日本では、1998 年の省エネ法の改正によりトップランナー制度が導入され、自動車や家電製品など大量にエネルギーを消費する特定の機器を対象に、エネルギー消費効率の向上が推進されています。その結果、エアコンや冷蔵庫などの家電製品は10年前に比べて 5割以上の省エネな製品が販売され、民生品による消費電力の削減に貢献してきました。省エネ家電のエコポイントや燃費の良い自動車に対するエコカー減税を利用された方も多いのではないかと思います。
そして、2015 年4月より、このトップランナー制度が三相誘導電動機(産業用モータ)に適用され、日本国内のエネルギー消費を削減することが期待されています。
三相誘導電動機は世界の消費電力量全体の40 ~ 50%を占めるといわれています。省エネ技術が進んでいるはずの日本でも、未だにIE1クラス(7.5kW出力で87%効率) が全体の99%を占めています。欧米ではすでに高効率なモータ導入の規制が開始されており、アメリカではIE2クラスとIE3クラスの普及率が合わせて70%となっています。トップランナーモータ制度では、IE3クラス(7.5kW出力で90%超の効率)が求められます。IE1とIE3の差はわずか3~5%という値ですが、それでも全てがトップランナーモータに置き換われば、日本全体の消費電力が1.5%低減するという大きな変革です。
IE3クラスに対応したモータ効率の算出については JIS C 4213 で規定されています。これは、真の効率を算定することの不確かさが' 低'の方法としており、モータにかけている負荷の大きさを高精度のトルク計で直接測定することを要求しています。
高精度のモータ効率
測定装置
当社が取り扱っているMagtrol社は、これまで数十年にわたって高精度のトルク計測と安定したブレーキ負荷装置を組み合わせたシステムを提供しており、モータトルク計測の分野では世界をリードする会社です。
当社が国内へ納入したシステムは、高精度な測定・制御ができるためトップランナーモータの開発現場だけでなく、幅広い分野で省エネに貢献するシステムとして活用されています。
モータの効率を精度よく測定するには、図のようにヒステリシスブレーキとトルク計、電力計などを接続したシステムを使用します。
そして、特に高精度の計測システムには以下の性能が求められます。
• モータの性能に応じた一定のトルクを再現性よく与えること(回転数や温度の変化に影響を受けないこと)
• モータ内部の温度が安定するまで1時間や3 時間の間、連続でトルクを加え続けること
• モータや負荷装置の温度変化でトルク計測の精度に影響がないこと
トルクの再現性:
ヒステリシスブレーキの動作原理
ヒステリシスブレーキは、電磁ブレーキの一種です。円筒状の鉄製ロータと、歯型形状のステータで構成されます。コイルに電流を加えるとステータが磁化し、ロータとの空隙に磁界が発生し、磁気摩擦がブレーキ力となります。
ヒステリシスブレーキを使うことの利点は、発生するトルクが回転数に依存せず、コイルの電流に応じた出力となることです。このブレーキは再現性の高いトルクが容易に得られることから、張力制御の分野にも広く活用されています。
余談ですが、Magtrol社のロゴである曲線は、「ヒステリシス曲線」と呼ばれており、約60年前の会社設立時に開発したヒステリシスブレーキに由来しています。
*東陽テクニカルマガジン【第16号】2015.4より掲載