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コラム
株式会社東陽テクニカ 機械計測センサ部 鈴木 一広

音響粒子速度センサから始まる 新たな振動/ 音響計測(1)

*東陽テクニカルマガジン【第3号】2012.1より掲載

1. はじめに

最近の車は随分静かになっており、逆にわずかなノイズが気になることがあります。このノイズは振動が主原因で、対策の一つは音や振動の大きい箇所を見つけることです。
一般的にこの計測には、センサとしてマイクロフォンを用います。ところが車室内のような音が反射する音場における音(振動)源特定のための測定は難しいのが現状です。昆虫には、空気の振動を検知する触覚があります。この難しい音源探査は、触覚を持った昆虫が行うと意外と簡単に出来るのかもしれません。音響粒子速度センサは、この空気の振動を我々が値として計測することができる電圧に変換するセンサです。

2. 音(振動)源の特性

音の発生メカニズムと、空気中を音がどの様に伝わっていくかイメージするために、音の伝達物質(媒質)である空気が満たされている管を考えます。左に空気を振動させるピストンがあり、左右に連続して動いているとイメージしてください。この動作により空気を圧縮、膨張させます。その結果、空気粒子が密な部分と粗の部分が現れます(図1)。
ここでいう空気粒子とは、酸素、二酸化炭素、窒素などの空気を構成する分子よりもサイズは大きく仮想的なものです。この粗密波は、媒質中を左から右へ伝わっていきます。我々は、耳でこの粗密波による微小な圧力変化を音として感じています。粗密波は管の中を左から右に音速で伝播していきます。
図1では、空気粒子を黒い点で表しています。そのうちのいくつかを赤い点で示しています。空気粒子は密から粗の部分へ移動します。粗密の度合いにより変化する圧力がマイクロフォンで計測される音圧です。図1中央上部の赤い点は、青い両矢印で示した幅で左右に振動するだけで左から右へ移動はしません。この振動速度が音響粒子速度センサで計測される音響粒子速度です。振動現象により音圧(位置エネルギー)と音響粒子速度(運動エネルギー)が発生することがお分かりいただけるかと思います。

図1: 音源(ピストン)と管内における音圧(粗密)と空気粒子(赤い点)

図1: 音源(ピストン)と管内における音圧(粗密)と空気粒子(赤い点)

一般に音響計測は、マイクロフォンを用いた音圧計測がほとんどです。音響粒子速度計測は考慮されていないのが現状です。しかし、音圧だけでなく音響粒子速度センサを用いた計測、あるいはそれらを組み合わせた計測を行うことで音響現象の解析方法が今までと大きく変わっていきます。 音源(ピストン)近傍における音圧と音響粒子速度の振る舞いについて見ていきたいと思います。
ピストンが動くと、ピストン表面の空気粒子が動き出して粒子速度が発生します。ピストン表面極近傍では空気の層がほとんど圧縮されない領域があります。この領域ではあたかも慣性をもったマスであるかのような振る舞いをします。空気の持つ慣性的な要素と弾性的な要素を較べたとき、より慣性的な性質をもつ領域です。このような特性を示す音場を、far field、near fieldと対比させてvery near fieldと呼んでいます。
次に非常に小さなピストンを閉ざされた筒の中ではなく、開空間に持ち出した状況を考えてみます。音はピストンを中心に球形に広がっていきます。この場合ピストン(音源)からの距離(r)に応じて、 near field やfar fieldといった音場の区別があることはよく知られています。far field では、音源からの距離が2倍になると音圧、粒子速度共にレベルが1/2になります(図2)。
音圧(p)と粒子速度(u)の比率を示すパラメータに、特性インピーダンス(p/u)があります。特性インピーダンスは音の伝わり難さを示します。

  1. インピーダンスが低い →低い音圧(振動)で大量の空気が動く
  2. インピーダンスが高い →高い音圧でも少量の空気しか動かない

ということになります。
far fieldでの空気の特性インピーダンスは、ρ0cですが、near fieldでは図2のようにρ0cのファクタに係数がかかり小さくなります。このため音響粒子速度が音圧に較べて相対的に高い領域となります。

図2:音源近傍における音圧と音響粒子速度

図2:音源近傍における音圧と音響粒子速度

一般的に鉄板やガラス等の堅い面では、特性インピーダンスが高くなります。その近傍で計測する場合、入射波による音圧はその面で反射し計測される音圧レベルは高くなります。入射波による音響粒子速度は、入射波と反射波により相殺されるため低くなります。このため、特性インピーダンスの高い面から発する音の測定は、入射波の影響を受け難い粒子速度を計測するほうが効果的です(図3)。

図3: 音源近傍における音圧と音響粒子速度(振動面と反射面の違い)

図3: 音源近傍における音圧と音響粒子速度(振動面と反射面の違い)

次に音源近傍における音圧と粒子速度が、どのような位相関係になるか説明をします。バネ-マス系における力(加速度)とマスの速度(時間積分)の位相関係。または、電気回路系におけるコイルに加えた電圧とそのときに流れる電流の位相。という対比で考えるとイメージしやすくなります。音圧を力と考えます。力が空気粒子に加わると、空気粒子に加速度が発生します。このとき、空気粒子の速度は加速度より90°遅れます。速度は加速度を時間積分し、蓄積されたものだからです。また、加えられた力により圧力の勾配が発生します。これにより発生した空気粒子の粗密をうち消す様に空気粒子が移動します。その際のタイミングは音圧勾配発生に較べて若干遅れる、と考えてもいいと思います。Microflown音響粒子速度プローブが計測する物理量は速度です。very near fieldでは音圧の変化に対して90°遅れた位相として観察することができます。
near field では、10~80°、far fieldでは、0~10°の位相差が音圧と粒子速度にあります。

*東陽テクニカルマガジン【第3号】2012.1より掲載

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