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コラム
 株式会社東陽テクニカ 機械制御計測部 草村 航

制御用通信バス 「CAN」を利用した計測技術(2)

*東陽テクニカルマガジン【第3号】2012.1より掲載

ドイツimc社のデータロガー

当社の取り扱いメーカであるドイツimc社は、CANバスの開発元であるBOSCH社からの要求を受け、1996年に世界で初めてアナログ信号とCANバス信号を同期して計測することのできるデータロガー「μMusycs(日本名:μLogger)」を発売しました。
imc社独自の優れた技術を利用し、最大512chのCANデータを物理波形として表示・保存することを可能にしました。μMusycsは、アナログ信号やCANバス信号を同期して計測できるだけでなく、CANバスに精通していなくても従来のアナログ式計測機器のようにCANバスの計測ができるとして、世界中の試験計測エンジニアに愛用されることとなりました。

CANバス

現在ではμMusycsの後継機がリリースされており、CANバス以外にも多くのバス(LINバス, Flex-Ray, ARINCバス, PROFIバス)が計測できるようになった他、ECUのRAM値計測(CCPやKWP2000など)機能を追加したことにより、お客様の多様な要求に応えることができるようになりました。

現在のimc社データロガーのラインアップ

現在のimc社データロガーのラインアップ

CANバスを利用したアナログ信号計測

CANバスの導入は前述のように、試験計測の分野においても大きな変化となりまし た。車両に敷設されたCANバスラインにデータロガーを接続することで、多くの項目を同時に測定できることは大きなメリットとなります。
このように試験計測の分野に大きなメリットをもたらすCANバスを利用し、新たな計測環境を提案しようと考えたドイツのimc社は、2000年にアナログ信号をCANバス信号に変換するコンバーター「CANSAS」をリリースしました。CANSASはセンサアンプを内蔵しており、各種アナログセンサを直接入力することができます。入力されたセンサ信号はCANバス信号としてCANバス上に送信されます。CANバス上に送信されたセンサ信号はCANバスデータロガーなどを用いて計測することが可能になります。

アナログ信号配線は、配線工数がかかることや、ノイズの影響を受けやすいというデメリットがあります。CANSASを利用した計測環境では、1本のCANバスラインに複数のセンサ信号を乗せることで省配線化が実現できるだけでなく、CANSASをセンサ近傍に設置し、アナログ配線を短くすることでノイズの影響を受けにくくすることもできます。車両制御用CANバスラインに流れていない情報を計測したい場合、計測用センサを利用する必要があります。また、車両制御用CANバスラインに流れているが精度などの面で計測データとして利用することができないデータについては、計測用に高精度のセンサを利用する必要があります。CANSASは、このようにアナログ信号を計測する際に配線工数やノイズ対策工数を削減することのできる分散計測モジュールとして様々な分野で利用されています。
例えば、実車両試験において、エンジンルーム内の温度を数十点計測するとします。従来はエンジンルームから車室内に数十本のセンサを引き込む必要がありました。また、点火信号がノイズとして混入することがありました。しかし、imc社のCANSASを利用することでこれを解決することができます。エンジンルーム内にCANSAS(μCANSASシリーズ:-40~120℃の動作温度範囲と防水性を持つモデル)を設置し、エンジンルーム内でセンサをCANSASに配線することで、エンジンルームから車室内には1本のCANバスラインを引き込むだけとなり、配線量を大幅に削減することができます。また、アナログセンサの配線が短くなるため、ノイズの影響を受けにくくすることができます。

CANSASを利用した計測例

車両に組み込まれたCANバスを利用することで、試験計測に必要なデータを収録できることは既に述べさせていただきましたが、これは特定の部門や特定の担当者だけに対するメリットではなく、その車両を共有する部門全体、あるいは担当者全員に共通するメリットであります。
一般的に、試験車両は複数の部門で共有されます。ある部門が試験を行う際、車両のCANバスラインから例えばエンジン回転データとスロットル開度データを計測に利用したとします。その車両を次の部門が使用する際、次の部門では同じCANバスラインから、今度は車速データと車輪速データを計測に利用することができます。このように、CANバス上には多くのデータが流れており、試験ごとにその中から必要なデータを計測に利用することができます。試験計測用に特別なセンサを設置することなく、CANバスラインに接続することで誰もが必要なデータを利用できることは試験車両を共有する部門全てに対してのメリットと言えるでしょう。
しかし、前述のようにCANバス上に流れていないデータや、CANバス上のデータを試験計測用途に利用できない場合には、専用のセンサが必要になります。この専用のセンサは試験ごとに準備されますが、センサの取り付けや配線などのセットアップに多くの時間がかかる場合があります。そこで、試験効率化を図るために先に紹介いたしましたCANSASを利用した計測環境がヨーロッパでは採用されています。
具体的には、下図に示すようにセンサをCANSASに接続し、試験車両内に分散設置します。各CANSASモジュール間をCANバスで接続し、計測用のCANバスラインを形成します。(車両制御用CANラインとは別に計測用CANバスラインを別途敷設します)
予め各試験で必要とするセンサを接続したCANバスラインを敷設した試験車両を部門間で共有することで、各部門の試験担当者は計測用CANバスラインにCANバス対応計測機器を接続するだけで必要なセンサデータを収録することができます。

今後ますます新しい制御技術が投入され、試験項目数や測定チャンネル数が増加することが予想される一方で、試験期間の短縮化が求められております。試験効率化を図る手法の1つとして上述のようなCANバスを利用した計測環境は効果的であると考えております。
ここでは自動車を例に挙げましたが、CANバスを利用した計測環境は自動車産業に限らず、あらゆる産業でご利用いただくことができます。特に、試験対象が大型の場合、多チャンネル計測を行う場合、配線長が長くなる場合において、そのメリットを発揮します。

おわりに

ここでは、CANバスを利用した計測方法を記載いたしましたが、ヨーロッパでは既にCANバスはポピュラーな計測用インターフェースとして広く利用されています。
当社は、このように海外の計測技術を日本のお客様に提案することで、日本の産業発展に貢献していきたいと考えております。

*東陽テクニカルマガジン【第3号】2012.1より掲載

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