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コラム
 株式会社東陽テクニカ 機械制御計測部 草村 航

制御用通信バス 「CAN」を利用した計測技術(1)

*東陽テクニカルマガジン【第3号】2012.1より掲載

自動車の進化

1908年にフォード・T型が発売されてから、100年以上が経過しました。外観は極端に変化していませんが、中身は大きな変化を遂げてきました。
変化のステップはいくつかありましたが、最も注目される変化は電子制御技術であったと言っても過言ではないでしょう。
1980年頃からABSやエアバッグなどの開発に伴い、制御用コンピューターが自動車に組み込まれました。1990年代に入り、自動車は安全性そして快適性を求めて、新たな制御技術が次々と投入されました。2000年に入る頃には自動車は「走るコンピューター」とも呼ばれるほど、大量の制御用コンピューターを搭載するに至りました。今後も「より安全に」「より快適に」そして「よりエコに」を求めて多くの制御技術が投入されることでしょう。

CANバス

通信技術

制御用コンピューターの導入により、必要不可欠となったものが、通信技術です。コンピューター間で情報を共有するために、通信線が必要になります。そこで各社が導入したものが、車載LANとも呼ばれているコンピューター間通信用バスです。
一般的にバスは複数の機器間でデータ伝送を行うために共通で使用される伝送線路のことをいい、一本の伝送線路で複数のデータを伝送することができます。複数のコンピューター間を結び、複数のデータを受け渡しするために、バスが自動車に導入されました。本格的にバスが導入されたのは、1980年代後半からとされています。
当時の代表的なバスとしてはダイムラーの「C2D」やGMの「J1850VPW」などがありました。1990年代に入ると、ダイムラーが「CAN」を、BMWが「I-BUS」「K-BUS」を、クライスラーが「J1850VPW」を採用しました。そして日本では「BEAN」「MPCS」「IVMS」などのバスが各社で採用されるようになりました。

CANバスの標準採用

CANとはController Area Networkの略称であり、1986 年にドイツのBOSCH社が開発したものです。これまでのバスは、制御システムごとに通信のデータタイプや信頼性の要求が異なるため、複数のバスラインで構成されることが多く、制御システムの増加に伴いワイヤーハーネスが増加する傾向にありました。CANバスはワイヤーハーネスの削減と、高速で信頼性の高い通信を目的として開発されたシリアルバスプロトコルです。
欧州ではCANバスによる標準化が進み、1993年にはISO11898(高速)、1994年にはISO11519-2(低速)が標準化されました。この頃米国ではJ1850による標準化が進められていましたが、CANバスの方が通信速度などの面でメリットがあるとして、2002年には米国でもCANバスが標準化されました。これによって欧米ではCANバスが広く採用されることとなりました。日本においても、バスプロトコルの開発は非競争領域であるという認識が高まったことや、異なるサプライヤのコンピューターを相互接続する必要性が高まったことなどから、CANバスが標準的に採用されるようになりました。現在では自動車に限らず、建設機器や農業機器、医療分野などでも広くCANバスが利用されています。

CANバスを利用した試験計測のメリット

CANバスはコンピューター間での制御信号の送受信に利用されるバスですが、CANバス上には制御信号だけでなく、制御用コンピューターが制御に必要とする各種組み込みセンサの情報も流れています。これらの情報を試験計測に利用することで、従来行われていた計測用センサの取り付けなどの試験セットアップ工数を大幅に軽減することができます。
例えば、実車両においてエンジン回転数を計測する場合、従来ですとエンジンルーム内に計測用の回転検出センサ取り付け、車室内のデータロガーまで配線を引き込むという作業が必要でした。しかし、CANバスを利用することで、バス上に流れるエンジン回転、車速、車輪速、操舵角、スロットル開度など、様々な情報を計測信号として利用することができます。
また、CANバス上の情報は、計測データとして利用するだけではなく、計測用のトリガソースとして利用できることも大きなメリットです。例えば、ブレーキのON/OFF信号をCANバスから取得することで、それをトリガにしたブレーキ試験(制動距離、減速度、油圧、パッド温度などの計測)を行うことができます。CANバスからブレーキ信号が取得できない場合、ブレーキランプの配線を取り出すなどの加工が必要だったため、CANバスを利用することで試験セットアップ時間を大幅に軽減することが可能になります。

CANバス

*東陽テクニカルマガジン【第3号】2012.1より掲載

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