li
HOME  > コラム一覧  > 音・振動問題を解決する新しい考え方 1/2
コラム音・振動解析2012/01
音・振動問題を解決する新しい考え方
  ~伝達経路解析を用いた効率的な音・振動対策~
 1/2 株式会社東陽テクニカ
機械制御計測部 村田 法生
コラム音・振動解析2012/01
音・振動問題を解決する新しい考え方
  ~伝達経路解析を用いた効率的な音・振動対策~
 1/2 株式会社東陽テクニカ
機械制御計測部 村田 法生
*東陽テクニカルマガジン【第3号】2012.1より掲載
音・振動の役割
“騒音や振動は悪いもの”と考えているエンジニアの方達は多いのではないでしょうか。当然ながら製品の品質を悪くする音、振動は悪者にしかなりません。しかし、音や振動があるからこそよいという場合もあります。例えば、自動車のような例です。自動車を運転する方は無音でのドライビングを好みますでしょうか。全く音がしない車、全く振動のない車は運転者、同乗者にかえって、違和感を与えることもあります。アクセルペダルをいっぱいに踏み込み加速していても音もない・振動もない車がよい車なのでしょうか?一見よい車のように思えますが、人が持つ感覚、例えばスピード感覚とはズレが生じ、スピードを出しすぎて危険が生じる恐れが出てきます。
また、最近のニュースでも取り上げられているように、電気自動車にはエンジンがなく非常に静かです。しかし、静かすぎるために歩行者は電気自動車が接近してきても気づきません。歩行者への安全確保のために電気自動車には意図的に音を加え、車両が近づいていることを示すために車両の走行スピードに応じて音を鳴らすということも行われています。

図1. 音がないバイク
スピードを出しているのに音がないので実際のスピードと経験的な感覚のスピードが
ズレてしまう。
つまり、音や振動が全くない製品がよい製品という訳ではなく、よい製品とは人が行った操作に対し、人の感覚を刺激し、操作したことへの適切なフィードバックがある製品とも言えます。例えば、家庭用ゲーム機などもよい例でゲームの操作ボタンを押しても指で押した感覚がなく、ボタンを押した音もしないという状況では操作したことに対する機器への反応が分からないため操作した人の不安感が増し、ストレスを与えてしまいます。
近年では音・振動を利用し、人の感覚を刺激することで人への警告を行ったり、快適性や商品性を高めたりしています。音・振動は低減させるだけから作り込む時代になり、目標とする音・振動を実現させることが重要となってきています。
音・振動の寄与解析
各製品から発せられる音・振動の源を見つけ出し、音・振動を対策・コントロールし、目標とする音・振動を作り出すことは音・振動の大きなテーマの一つです。例えば、自動車のエンジン・モータなどの音源から伝わる音・振動を同定し、各音源の寄与を把握することは音・振動問題の対策やコントロールをするにあたり有効な情報といえます。この情報を計測し解析する手法として、従来から伝達経路解析(Transfer Path Analysis 以下TPA)が、紹介されておりました。TPAとは音源(エンジン、モータ、吸・排気など)から応答点(ドライバーシート耳位置など)まで伝わる音・振動の伝達特性を計測し、車室内に伝達する音・振動の原因となる部位を同定(寄与解析)する手法です。さらに、伝達特性や音源の音・振動が変わった場合に応答点ではどのような音になるのかシミュレーションすることも出来る解析手法です。
図2. 各音源からのデータが合算され応答点の音になる
図2. 各音源からのデータが合算され応答点の音になる
図3. 計測イメージ図
図3. 計測イメージ図
TPAの問題点は
音・振動の寄与を考えるにあたり、TPAは非常にメリットが高い解析手法です。しかし、TPAを行うには計測・解析にノウハウや長期の実験期間が必要で通常の実験業務にはなかなか取り入れられませんでした。使用する測定器のチャンネル数や手法などに依存しますが、車の車両一台でおよそ1ヶ月程度はかかると言われております。また、長い期間をかけてもなかなか精度のよい結果が得られていなかったのが現実でした。従来まで行われていたTPAの計測・解析について主な問題点は以下になります。
1.実稼動状態と異なる条件での計測 

例えば、車の車両の場合、エンジンからボディへ伝わる振動の伝達特性を計測する為に一旦エンジンをボディから取り外し計測を行います。
エンジンを取り外した状態での計測の為、当然ですが実走行とは違う状態の特性を計測することになります。

2.クロストークの存在

クロストークとは、音、振動の廻り込み現象になります。音源(エンジンなど)から車室内へ伝わる音・振動は様々な経路を通り伝わります。計測する伝達特性にもクロストークが存在し、複数の経路からの伝達特性を重複して計測してしまいます。

3.伝達特性を計測することが困難

音源からの伝達特性を計測する為に、ハンマリングやスピーカを使う計測を行います。計測にはかなり手間がかかり、車両の準備、計測、データ確認など車両1台で約2、3週間かかります。

上記のような問題点の潜むTPAに対して、東陽テクニカでは株式会社 本田技術研究所が開発した“実稼働データによる伝達経路解析手法”を取り扱い製品であるMueller BBM 社のPAKシステムへの機能オプションとして組み込み販売を開始しました。
この実稼動データによる伝達経路解析手法では上記に記載したような問題を解決し、各メーカが短期間に独自に計測を行うことでTPAを行うことができます。また、様々なアプリケーションソフトウェアを持つ騒音・振動解析システムのPAKと組み合わさることで、他のアプリケーションソフトウェアとの親和性が増し計測から解析まで効率的に行う事が出来るようになりました。
*東陽テクニカルマガジン【第3号】2012.1より掲載
 
 
 
関連コラム