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-わかりやすい胸部単純X線画像をめざして- 新しい画像処理技術によって拓かれる胸部画像診断

<<ユーザ論文>>
わかりやすい胸部単純X線画像をめざして
新しい画像処理技術によって拓かれる胸部画像診断
岩手県立中央病院 佐々木康夫

▽はじめに
胸部画像診断と胸部単純X線写真の現状

最近のデジタル画像処理技術進歩によって、胸部単純X線撮影が不得手としていた「小さいもの」「淡いもの」もかなり良好に検出されるようになって来ている。
代表的な技術には①ダイナミックレンジ圧縮、②マルチ周波数処理、③経時的差分画像、
④仮想グリッド、⑤エネルギーサブトラクション法などがある。
これらのいずれもが臨床的な有用性の高い技術であるが、中でも経時的差分画像(TS:Temporal Subtraction)は病変コントラストを明瞭にするためにはきわめて有用性が高い技術である。
TSは同一患者の現在画像から過去画像を減じることで両者に共通する解剖学的構造が相殺されるため、ある時間経過内に変化した陰影のみが強調される。
TSを前提として撮影する際にはポジショニングがきわめて重要である。また撮影条件を一
定にして画像の濃度をほぼ一定にすることがのぞましい。
最終的にはワーピング法を用いて微妙な画像のズレを調整した後に差分処理が行われる。
差分法は理論的に明瞭な病変コントラストが得られるわけであるが、従来法では病変の密度が淡い場合には必ずしも良好なコントラストが得られない場合や、不可避的な肋骨のずれによって所見が不明瞭になることがしばしば見受けられた。
今回Riverain社で開発されたTS技術であるClearRead+Compare(国内販売:㈱東陽テクニカ)は胸部X線画像間の差分ではなく、同社の技術である骨除去画像(BS:Bone
Suppression)画像を用いる骨除去画像間の差分画像法である。
この方法は画像に骨陰影がないため、胸部単純X線写真の画像とは自ずと画像が異なることが類推されるため、どのような臨床的な意義が存在するかを検討した。

▽骨組織透過処理後の経時差分ClearRead +Compare処理について
Riverain社(国内販売:㈱東陽テクニカ)の経時差分技術ClearRead +Compareの処理フロー(図)は以下の通りである。
1) 同一受診者における現在及び過去に撮影した2枚の胸部X線画像における肋骨、鎖骨
  等の骨組織を透過させる
2) それら骨組織透過処理を実施した現在・過去画像において両画像間の組織を一致さ
  せるためレジストレーション(位置合わせ)処理を行う
3) 2)で得られたレジストレーションによる位置補正後の過去画像と現在画像のサブ
  トラクションを実施することで経時差分画像を生成する
2)で行うレジストレーションは骨組織透過処理の後に実施されるため、呼吸等で発生する現在・過去画像間の肋骨、鎖骨等の位置のずれによるアーチファクトが発生しにくいというメリットがあり、視認性向上が期待できる。
このClearRead +Compareによる経時差分の最大の特長は撮影機器の種別(メーカ、検出器の違いなど)を問わず、差分を取ることができることにある。例えばメーカが異なった画像間の経時差分、ポータブル画像同士の経時差分も可能である。
これによりポータブルX線装置で撮影した画像でも、経過観察に耐えうる画像が得られることが期待される。

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過去画像では左右の肺に結節が存在することが疑われる。骨除去処理
を加えると、それらが明瞭に描出される。現在画像では増大した結節が
明瞭に描出されるが骨除去処理によってより明瞭になって来ている。骨
除去画像同士で作成した差分画像は各腫瘤の陰影のコントラストが明
確になり診断を容易にする。

▽臨床評価
過去画像のある肺腫瘍症例15例について腫瘍の描出能を従来法と比較した。
腫瘤径は5㎜から25㎜である。差分画像によって検出された腫瘤陰影のうち、8例において従来法よりも腫瘤のコントラストがClearRead +Compare法で高く描出された
(図2、図3)。
従来法がClearRead +Compare法よりも高いコントラストであったのは1例のみであった。
一方、縦隔に重なった腫瘤は十分なコントラストが得られなかった。ポータブルで撮影された画像にこの方法を適用した結果、浸潤陰影の臨床経過に伴う診断がBS画像よりさらに強調され、診断が容易になる印象をもった。

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▽考察
ClearRead +Compareの最大の特徴は差分処理の元になる画像が通常の胸部単純X線画像ではなく、BSによって処理された骨除去画像である点にある。
ClearReadによるBSは、エネルギー差分画像(ES:Energy Subtraction)の骨除去画像のような特殊な撮影法は必要がなく、日常使用しているPACSにBSシステムを接続するだけでソフト的にごく簡単に生成でき、さらにそこからTS画像を生成することができる。
したがって、救急患者、小児、病棟でのポータブル画像などの、従来ESでは対象にならなかった症例についても差分画像特有の病変が強調されたわかりやすい画像が得られるため、単純X線画像の臨床的な有用性は従来よりも高くなることが期待される。
しかも使用されるBS画像の元画像は必ずしも同一メーカのものである必要がないので従来のTSよりも汎用性が高い。
肺腫瘍について見ると、自験ではClearRead +Compareの腫瘍のコントラストは従来のTSよりより高いコントラストで腫瘍が描出されることが多く、肺癌検診における検査法の次のステップを示している可能性があるように思われた。
また、肺腫瘍以外の様々な肺病変については、ポータブル撮影における肺炎の経過観察の際に有用性が高い印象があるが、さらに検討を加えるつもりである。
今回示したように、胸部単純X線画像に様々な画像処理技術を応用することによって低コスト、低侵襲で実現可能な胸部画像診断の領域が拡大することが期待される。

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