-胸部単純X線画像の新たな展開- ClearRead BSによる骨除去画像の臨床的な有用性について

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胸部単純X線画像の新たな展開
ClearRead BSによる骨除去画像の臨床的な有用性について
岩手県立中央病院 佐々木康夫

▽はじめに
胸部画像診断と胸部単純X線写真の現状

最新の画像診断機器にはPETやMRIがあるが、現在も今後も胸部画像診断で中心的役割を果たすのはCTである。CTは、高画像分解能、短時間撮像が可能となり、逐次近似法による被曝低減と画質向上、2管球CTや多層検出器CT、さらにphoton counting CTによる情報は今までにない付加情報をもたらす可能性がある。
胸部単純X線写真は胸部画像診断における重要度は従前ほど高くはないが、手軽に胸部病変を俯瞰できる点は臨床的に重要なため、現在でも必須の検査として使用されている。
我が国における胸部単純X線写真はCRの導入によって急速にデジタル化を果たした。
その後フラットパネルの普及もすすみ、現在では多くの施設でデジタル化が普及している。デジタル化による利点によって画像はモニタで観察することになったわけだが、デジタル画像の特徴を臨床に応用している例は、研究的に行われているコンピュータ支援診断(CAD)を除くと、経時的差分法(TS画像)による2画像間の共通バックグラウンド除去、エネルギー差分法による骨消去画像(ES画像)による病変強調法があるのみである。
しかし両者ともにまだ十分に普及を果たしているとは言えない。
理由としては、経時的差分画像は過去画像の存在が必須であり、ポジショニングなどの撮影上留意すべき点も多いことが挙げられる。
エネルギー差分画像は撮影が煩雑であるだけでなく、得られた画像の臨床的意義が確立していない問題点があった。(文献1)
そこで従来のES画像の作製方法とは別に、通常通り撮影した画像に対してソフト的に画像処理をおこなうのみで、骨消去画像や経時差分画像が作製できる画期的な画像処理システムが開発された(文献2)。
このシステム(ClearRead Bone Suppression Image:Riverain社、東陽テクニカ)は日常使用しているPACSに搭載するだけで本格的な使用が可能となった(文献3)。
従来にない画期的な画像処理システムと考えられたため、その臨床的有用性について検討した。

▽Bone Suppression画像の臨床的な意義について

Riverain社(東陽テクニカ)のBone Suppression imageの原理を図1で説明する。
まず、胸部X線画像(図2-a)における画像特性を演算して求める(Pre-processing)。次に、ニューラルネットワークを使用したパターンマッチングにより、胸郭内の骨のみの骨画像を推定(Bone Image Estimation)し(図2-b)最終的に元の画像から骨画像の差分によりBS画像(図2-c)を生成する。ここでは、元画像の画像特性はレストアされている。
このBS画像の最大の特徴は、撮影後のデジタル胸部X線画像さえあれば、撮影機器の種別(メーカ、検出器の違いなど)を問わず、日常使用している撮影装置に接続されているPACSで簡単に作製できる点にあり、これまでのES画像作成時に必要とされた特殊な撮影方法や装置を設置する必要がないため、撮影されたあらゆる胸部X線画像からBS画像を作製できる点にある。

▽臨床評価

Case1 肺腫瘤の検出能についてのBS画像の検討

BS画像の腫瘤検出能について検証をする目的で、一回曝射法によって撮影されたES画像との比較をおこなった。
症例数は25例、腫瘤径は15mm ー20mmである。
その結果、BS画像の検出能はES画像の検出能とすべて同等であった(図3)。
そのほか小腫瘤の検出能や肺内の各種構造との重複による検出能の詳細についても同様の傾向を示していた。

Case2 ポータブル胸部X線画像を対象としたBS画像の検討

救急や病棟で緊急的に撮影された胸部画像は、撮影条件などによって画像が劣化し十分な所見が得られないことが多い。
これらの画像をBS画像にすれば肺病変が良好に検出できる可能性がある。
そこでCTで肺病変の確認された20例のポータブル胸部X線画像を対象にして、BS画像処理をする前後での所見の描出能について検討した。
その結果、16例の症例で、処理前の画像に比較してあきらかに病変の部位と広がりの
診断が容易になることが判明した(図4)。

Case3 小児の胸部X線画像におけるBS画像の検討

小児を対象とした胸部X線画像も、吸気が不十分な場合や、撮影方向の微妙なずれによって臨床的に十分な画像が得られないことが多い。
乳幼児の胸部画像は腹部の領域が多いことも多いため、3歳から5歳小児の胸部X線画像100のBS画像を作製し、作製前の画像と比較検討した。
その結果、肺病変が明らかに存在する3例と、存在しない4例について、病変の存在の有無の判定が容易になった(図5)。

▽臨床フローにおけるBS画像の位置づけ

前述した通り、BSは日常使用されるPACSシステムの機能の一部として運用が可能なため、特殊な撮影法などを用いずに自然に画像が生成される。
被爆の増加や診療フローへの影響はない。
臨床医は付加情報として必要に応じてBS画像を参照すればよい。

▽考察

CTは胸部画像診断におけるモダリティとして高い病変検出能を示すが、様々な臨床シーンでの汎用性を考慮するとCTのみで対応できるわけではない。
単純X線撮影の組み合わせで、胸部画像診断が行われることは確実である。
その中でClearRead BSによる骨除去画像は1回曝射法のES画像に代替できるのみならず、所見のわかりにくいポータブルや小児画像の診断能向上に寄与する可能性が高い。このシステムではカテーテルなどのデバイスの検出支援機能も付加されているほか、経時的差分画像を作成できるため、腫瘍性病変の検出の向上が期待される。
胸部単純X線画像は単に画像を参照するのみならず、デジタル情報を利用してより多くの所見を得る段階に入ろうとしている。


参考文献
1) Sasaki Y, Katsuragawa S, et al: Usefulness of temporally subtracted images
      in the detection of lung nodules at digital radiography. Radiology 201
      (P):400, 1996.

2) Suzuki K, Doi K, et al: Image-processing technique for suppressing ribs in
      chest radiographs by means of massive training technique for artificial neural
       network (MTANN).IEEE Trans Med Imaging.25 406-416. 2006.
3) Freedman M. Lo, Seibel J, et al: Improved of lung nodules with novel
      software that suppresses the rib and clavicle shadows on chest radiographs.      Radiology. 260, 265-273, 2011