磁歪式直線変位センサの紹介~FA、車両自動化のために
はじめに
産業用機械への組み込みで高精度な制御を実現でき、設備のファクトリーオートメーション(FA)化につなげることが可能な磁歪式直線変位センサをご紹介します。このセンサは計測対象物の直線位置や変位を計測するものです。建設・農業車両の油圧シリンダに内蔵することで、自動運転を実現させ、さらに、液面計測にも利用されています。このように、磁歪式直線変位センサは、幅広い分野で使用されています。 本稿では、当社で取り扱っているMTSシステムズ社磁歪式変位センサの計測原理や特長について紹介します。計測原理
磁歪式直線変位センサは「磁歪」と呼ばれる現象を利用して、計測対象物に取り付けたマグネットの位置を計測します。計測原理を表したものが図1です。磁歪線と呼ばれる金属線に電流パルスを流すと、磁歪線の円周方向に磁場が発生します。そこにマグネットを近づけると、マグネットの磁界と円周方向の磁場が合成され、その磁場方向に磁歪線は物理的にねじれます。このねじれ現象が磁歪現象です。電流をパルスにすることで、瞬間的なねじれ(歪み)を発生させます。それが一種の機械振動波になって磁歪線上を超音速で伝搬します。この伝搬時間を計測し、距離に変換することで、マグネットの位置がわかります。図1 計測原理
センサの構成
磁歪式直線変位センサは、ヘッド部、検出部、マグネットから構成されます(写真1)。磁歪線は検出部の内部を通っており、ヘッド部内の電子回路と繫がっています。ヘッド部内の電子回路にて伝搬時間の計測と距離への変換が行われます。また、ヘッド部では出力信号の変換も行われています。写真1 センサの構成 プロファイルタイプ
ロッドタイプ
特長
- マグネットと検出素子である磁歪線は非接触であるため、磁歪線が磨耗することはない。そのため、製品としての機械的な寿命は原理上ほぼ無限である。
- アブソリュート式である。
- 耐環境性に優れている。
- 電流出力(4-20mA)や電圧出力(0-10V)だけでなく、SSIやEtherNet/IP、Profinetなどの様々な通信出力に対応。
製品ラインアップ
MTSシステムズ社では、①Industrial(産業機械向け)、②Mobile Hydraulics(建設・農業機械向け)、③Liquid Level(液面計測向け)、と3種類の用途別に製品を取り揃えています。①Industrial(産業機械向け)
「Industrial」は、産業用機械に使っていただける「TemposonicsⓇ」というブランドをご用意しています。写真2-1 Industrial製品
写真2-2 RシリーズVとTempoLink Smart Assistantの接続
②Mobile Hydraulics(建設・農業機械向け)
「Mobile Hydraulics」は、建設・農業機械や特殊車両に使用できるように設計されたセンサです。ブランド「TemposonicsⓇ」の中の「MHシリーズ」のみが対応製品となりますが、油圧シリンダにセンサヘッド部が内蔵できるような形状タイプや、超小型タイプ、外付けできるシリンダタイプなど、様々な仕様のセンサを取り揃えています。下記サイトにて、自動運転に絡めて詳細にご紹介しております。
写真3 Mobile Hydraulics製品
③Liquid Level(液面計測向け)
「Liquid Level」は、タンク内の液面計測に特化しており、ブランド「Level PlusⓇ」として、石油から化学薬品まで、様々な液体、アプリケーションに対応できる4種類の製品シリーズをご用意しております。マグネットを内蔵したフロートを利用するため、フロートの比重を変えることで、液体と液体の境界面を計測することが可能です。また、温度センサを内蔵することも可能です。国内外の防爆認証にも対応しております。写真4 Liquid Level製品