EMC/大型アンテナ
IR情報 会社情報

事例紹介

時代の先端を行くFFT搭載EMIレシーバ ~FFTタイムドメイン手法による高速EMI測定~

EMCとは

EMC(電磁両立性)とは、各種の電子・電気機器が他の機器に電磁的な干渉を与えず、また他の機器から電磁妨害を受けても正常に動作する耐性を持つことで、互いに共存できる概念です。このようにEMCには機器が発生するEMI (電磁妨害)と機器が持つべきEMS /イミュニティ(電磁耐性)の2つの側面があります。機器が発生するEMIをどの程度のレベルまで許容するか、またどの程度のレベルのイミュニティ能力を機器に要求するかに関しては、IEC(国際電気標準会議)やCISPR(国際無線障害特別委員会と呼ばれるIECの特別委員会)が、国際標準(規格)を制定しており、これらの規格を多くの国/地域が採用してEMC規制が行われています。

EMIレシーバに対する規格要求


EMI測定に必要な機器としては、妨害波を拾うトランスデューサ(例えば、受信用アンテナや擬似電源回路網など)とEMIレベルを測る測定器(EMIレシーバ)が最小限必要なアイテムになります。EMI測定用の各機器に関する技術仕様(要求事項)は、CISPR16-1シリーズの規格に詳細に定められており、その中でEMIレシーバに対する要求事項はCISPR16-1-1に規定されています。
主な要求項目は次のとおりです。
〇入力インピーダンス&VSWR
〇基本特性(バンド幅、充電/放電時定数、過負荷率など)
〇正弦波入力時の精度
〇パルス応答特性
〇選択度特性
〇相互変調、内部雑音、遮蔽性能など
機器の適合試験を行う場合、コンプライアンスモデルと呼ばれるCISPR16-1-1に完全適合したEMIレシーバを使用しなければなりません。

EMIレシーバの変遷

基本的なEMIレシーバの構成はスーパーヘテロダイン式受信機と同じで、測定対象の妨害波の周波数に同調を取り、EMI電圧レベルを測定します。

このタイプのEMIレシーバによる測定では妨害波周波数ごとに行う必要があり、また全てマニュアルで行うため、測定に多大の時間が掛かっていました。これを改善するため、広い周波数範囲のスぺクトラムを観測できるスペクトラムアナライザ(以下スペアナ)を使用して、限度値に近い妨害波をピックアップし、EMIレシーバで最終測定を行う手法が使われるようになりました。
さらに、スペアナとEMIレシーバを一体化し外部からPC&ソフトウェア(当社のEPシリーズなど)によって自動測定が行える“スペアナレシーバ”の登場によって、測定効率が大幅にアップしました。このタイプのEMIレシーバの代表としては、アジレント社製のMXE(N9038A)型があります。
ちょっと横道にそれますが、スペアナはプリセレクタが無いためEMI 測定には適さないとされてきましたが、一定の条件を満たす場合に限りスペアナを最終測定に使用できる、という改訂がCISPR16-1-1 第3 版に盛り込まれました。
電子機器のデジタル化に伴い、発生する妨害波も広帯域信号が増えており、また時間変動を伴うノイズが増えています。このようなノイズは測定際に見逃す可能性が高くなります。近年、高速かつ見逃しのない測定を可能にするため、FFT(高速フーリエ変換)を利用するEMIレシーバが導入され始めました。FFTを利用すると、一つの周波数の時間軸上の重みづけ処理をしつつ複数の周波数範囲を一度に測定することが可能になるので、測定時間を大幅に短縮することができます。
今までは測定器として、スペアナとEMIレシーバが定義されていましたが、CISPR16-1-1 第3 版において、CISPR16-1-1の要求を満たした測定受信機であれば、どんなタイプのものであっても適合試験に用いることを可能とする改訂がなされました。
これは、CISPR16-1-1の要求を満たせば、測定受信機の中身は問われず、将来の技術の進化に対応する改訂と言えます。また、このような手法は一般にブラックボックスアプローチと呼ばれています。
尚、EMI 測定では見逃しのない測定が必須であるため、この後でご紹介するFFTベースの測定受信機については「EMI測定においてFFTベースの測定器は、測定中は連続的に信号のサンプルおよび評価を行うこと。」という要求が第3版で追加されました。

FFTタイムドメインの概要


ここで、複雑化するEMIノイズ測定の高速化を可能にするFFTタイムドメイン手法の
原理を簡単にご紹介します。
FFTベースのEMIレシーバのブロック図は下図のようになっています。

広帯域IFフィルタを通った時間軸上の波形を高速高分解能サンプリングのADコンバータに通します。次にリサンプルでバンド幅に応じてデータリダクションを行いデジタルモジュールでギャップなしのデータをRAMに保存し、メインプロセッサでFFT 演算を行うことで一度に広い帯域(=セグメン
ト。例えば10MHz分)のスペクトラムに変換を行います。
このプロセスを絵で追ってみましょう。

[Step1]周波数ドメイン
測定周波数範囲を連続的周期(例:10MHz)で分割し、フィルタします。


[Step2]タイムドメイン

フィルタ後の信号を時間サンプリングします。


[Step3]高速フーリエ変換


フィルタ後の信号をFFT 演算によってタイムドメインから周波数ドメインに変換します。



[Step4]周波数ドメイン

各周波数レンジのスペクトル分布をつなぎ合わせます。


従来のスペアナスイープでデータを取得するタイミングは下図の通りでノイズの真の姿を表示させるためには、たくさんの繰り返しスキャンが必要です。

タイムドメインスキャンでは、データを取得するタイミングは下図のようになります。


1 回の測定ではしっかり測定時間分を取得して表示させるため、測定時間以内の繰り返しの現象を捕えることができます。またひとつの同調周波数で1セグメント分を処理しますので、広いステップ幅でスキャンできます。しかも、どの周波数でも測定時間分モニタできています。したがって1 回のスキャンで広帯域ノイズのエンベロープが記録できることになります。

PMM 社製タイムドメイン EMIレシーバ9010F

PMM社はイタリアにおけるEMI&RF 試験機器のリーディングカンパニーで1981年には校正センターを設立し、ISO/IEC17025の認定も取得しています。従来型のスペアナレシーバで ある9010型をFFTタイムドメインレシーバにグレードアップした9010F型についてご紹介します。

特長は次の通りです。
〇CISPR16-1-1完全適合(コンプライアンスモデル)
〇1セグメントにつき16回のFFT 演算を行うことでギャップレスのデータ処理が行われるため、どんな複雑な振る舞いをするノイズも見逃しません。
〇高速演算によりホールドタイム1 秒以上が可能になり、1024 個の周波数についてQP(Quasi Peak:準ピーク)、CISPRアベレージ、CISPR-RMSなど6つの検波器による同時・連続測定が行えます。
〇FFTタイムドメインによりCISPR16-1-1に適合した測定を行うためにはホールドタイムを長くとることが必要ですがホールドタイム1秒の場合、CISPR Band A(9kHz~150kHz) で5秒、Band B(150kHz~30MHz)で20秒の測定時間でCISPR16-1-1に適合した測定ができます。
〇9010F 型の測定周波数範囲は9kHzから30MHzですが、周波数拡張ユニットを使用することで最大18GHzまでのEMI測定が可能です。
・9030 型:30MHz~3GHz
・9060 型:30MHz~6GHz
・9180 型:6GHz~18GHz
〇周波数拡張ユニットを使用してCISPRバンドC/D(30MHz~1000MHz)では測定時間はわずか14分と従来型の350 倍(PMM社製品比)の高速測定を行うことができます。 
〇信号のデジタル処理によりIFフィルタや検波器の劣化がなくなり、また光伝送によりコネクタや伝送のロスがないなど、不確かさを大きくする要素を減らせるため、測定の不確かさを小さくすることができます。
〇軽量、コンパクトでフィールドでのEMI測定にも対応できます。  

おわりに

今後、FFTタイムドメイン機能で使用するADコンバータなどの性能向上により、より広帯域、高速処理が可能な製品が登場してくるでしょう。当社のEPシリーズEMI測定ソフトウェアも日々進化を重ね、より高速、正確で効率のよいEMC測定環境を皆さまにご提供できるよう、当社スタッフ一
同 努力してまいります。
 
 




 

detail__vid--text.png

はい (2)
いいえ (1)

アーカイブ

  • 複雑化する電磁環境への対応 自動車・電装品に対するEMC 大電力RFパワーアンプ/EMS試験システム


    EMC:Electromagnetic Compatibility「電磁両立性」とは、「電気・電子機器などが電磁環境を汚染し、他に妨害を与えるような不要電磁エネルギーを放出することもま た同時に電磁環境の影響を受けることもなく、その性能を十分に発揮できる能力」とIEE電気・電子標準述語辞典に定義されています。

  • 複雑化する電磁波ノイズに対応する 最新測定手法
    ―次世代EMI 測定ソフトウエアEP7―


    EMCとは、電子機器同士が電磁的な干渉を与えたり受けたりすることなく互いに共存できる性質を言います。今やコンピュータなどの情報処理装置を始め、AV機 器、家電製品、自動車、航空機など多くの製造物がこのEMCの能力を備え、世に送り出されています。当たり前のことが普通に使える世界のことですから、世 界でEMC の規制が始まって数十年たった今でも一般の人々にとって認識は薄いと思います。

  • MIMOアンテナ・端末評価ソリューション
    MIMO無線通信とアンテナ伝搬を考える


    スマートフォンや無線LAN搭載タブレットPCの使用環境は、市街地やオフィスなど、基地局が見通せなかったり、多くの反射が存在するマルチパス伝搬環境です。電波は、水面の波や音波のように、見たり聞いたりすることはできませんが、「波」の性質をもって、伝搬していきます。壁にぶつかると方向を変えて跳ね返り、元の波に合流し、場所や時間によって強めあったり弱めあったりします。

  • マイクロ・ナノサット地上局
    アイデア豊富な小型衛星ビジネスを支える
    アンテナ地上システム


    1957 年当時ソ連のスプートニク計画により初めての人工衛星が打ち上げられ、活発な宇宙産業が幕を開け、衛星システムが構築されました。衛星システムを大別する と衛星本体を意味する「衛星系」と衛星と通信する地上設備の「地上局系」の二つに分けられ、現在でもその概要には変化がありません。

  • 今、試験機関に求められる 「ISO/IEC 17025認定校正」


    2011 年5月、CISPR( 国際無線障害特別委員会) A国際委員会からRR(Review Report)文書「CISPR/A/950/RR」が発行されました。この発行文書には、EMI試験に使用する計測器の校正に対する厳しい要求事項が言 及されました。各国の代表は、この要求事項の重要性を理解しながらも、一部の者だけが有利になることを禁じる“Technology Neutral”の概念に反するという懸念、計測器メーカの情報開示や校正コストの問題などを危惧したようです。

PAGE TOP

本ウェブサイトではサイト利用の利便性向上のために「クッキー」と呼ばれる技術を使用しています。サイトの閲覧を続行されるには、クッキーの使用に同意いただきますようお願いいたします。詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください。