EV充電の基礎知識~EVと充電器の通信について

電気自動車(EV)の充電規格は地域によって異なり、これがグローバルなEVの普及に影響を与えていると指摘されています。充電口の形状の違いに注目されることが多いですが、形状だけでなく、EVと充電器の間で行われる通信仕様も規格によって異なります。さらに、同じ規格に基づいて製造されたEVと充電器の組み合わせであっても、規格から外れてしまった部分があると、充電が開始されないなどの不具合が発生することがあります。この記事では、充電規格を通信の観点から整理し、市場で充電不具合を防ぐための取り組みについてご紹介します。

EV充電における通信の必要性

ガソリン車に給油する際、車と給油機の間で情報のやり取りは行われません。一方、EVでは充電を進めるために、EVと充電器が常に情報を交換する必要があります。これは、EVの車種によって許容可能な電圧や電流が異なるためです。さらに、同じ車種でもバッテリーの状態(充電量や温度)によって必要な電流は変わります。加えて、安全性を確保するために、充電前後には決められたプロセスがあり、EVと充電器が協調して実行する必要があります。こうした情報交換を確実に行うため、各規格ではメッセージの形式や送信順序、通信が失敗した場合の処理方法などが定められています。実際の市場では、さまざまなEVと充電器の組み合わせが存在するため、充電がうまくいかないケースも発生します。

普通充電(AC充電)と急速充電(DC充電)

EVの充電には、「普通充電」と「急速充電」の2つの方式があります。普通充電は、主に建物側の交流電源(日本では200V)から車両に電力を供給し、車載充電器で交流を直流に変換してバッテリーに充電します。海外では「AC充電」と呼ばれます。AC充電では、アナログ通信が用いられます。具体的には、簡単な通信回路の電圧変化によって車両と充電器が充電可能な状態であることを確認し、さらに充電器が出力可能な電流値を、通信回路に出力する波形の幅の比率でEVに伝達します。

急速充電は、充電器内で交流を直流に変換し、車載充電器を介さずに直接バッテリーへ充電します。EVは適切な電圧を宣言し、その時々に必要な電流を要求しながら充電を進めます。さらに、安全性を確保するため、充電開始から終了までEVと充電器が互いの状態を伝え合いながらプロセスを進めます。このやり取りはデジタル通信(一部アナログ通信も併用)で行われ、手順や通信方法は規格によって異なります。海外では「DC充電」と呼ばれます。

この記事では、以降「AC充電」「DC充電」という表記を採用します。

AC充電における通信方法

AC充電に使われる主な規格には、表1に示すような4種類があります。いずれの規格でも、回路の電圧変化やPWM(充電器が発生させるパルス波の波形)など、比較的簡単な手段を用いて、EVと充電器がアナログ通信を行いながら充電を進めます(図1を参照)。

また、後述するDC充電で採用されているデジタル通信を利用してAC充電を行う方法も、規格として定められています。

図1

図1 AC充電におけるアナログ通信(Control Pilot)のイメージ

表1 AC充電の規格と通信方法

Type 1 NACS Type 2 GB/T
採用地域 北米、日本、韓国など 北米 欧州など 中国
規格 ISO 15118,SAE J1772 ISO 15118,SAE J1772/3400 ISO 15118,IEC 61851-1 GB/T 18487.1
コネクタ形状 Type 1 NACS Type 2 GB/T
単相/三相 単相のみ 単相 or 三相
アナログ通信 Proximity Pilot
  • プラグの挿入状態の検出
  • ラッチ解除状況の検出
  • プラグの挿入状態の検出
  • ラッチ解除状況の検出
  • プラグ挿入状態の検出
  • ケーブルの最大許容電流の通知
Charging Confirmation
  • 接続状態の検出
  • EVが充電可能であることの通知
Control Pilot
  • 信号の電圧変化で接続状態を通知
  • 充電器が発生させるパルス波のON時間と周期の比で許容電流を通知
デジタル通信
  • DC充電と同様の通信方法での充電も可能

DC充電での種類

DC充電に使用される主な規格は、表2に示すように4種類あります。AC充電では、どの規格も類似した通信方式を採用していますが、DC充電では規格によって通信方式が大きく異なります(現状、CCSとNACSは同様の方式)。

日本で主に採用されているCHAdeMOや中国のGB/Tでは、自動車の車載ネットワークでよく使われるCANを利用した独自プロトコルによる通信を行います。一方、北米や欧州などで採用されているCCSやNACSでは、PLC(電力線通信)上でTCP/IP通信を行い、XML形式のメッセージで通信を行っています。なお、CCSやNACSのPLC通信は、AC充電プラグと共用の部分のControl Plotのラインを使用しています。

表2 DC充電の規格と通信方法

CHAdeMO GB/T CCS NACS
採用地域 日本(その他地域) 中国 北米、欧州、その他 北米
規格 CHAdeMO GB/T 18487.1,GB/T 27930 DIN 70121,ISO15118,
SAE J1772, IEC 61851-1
DIN 70121,ISO 15118,
SAE J3400
コネクタ形状 CHAdeMO GB/T CCS 1CCS 2 NACS
通信方法 CAN CAN PLC上でのTCP/IP PLC上でのTCP/IP
メッセージ CANを使用した
独自形式
CANを使用した
独自形式
XML形式
特徴
  • 車両と親和性の高いCANを採用
  • AC充電コネクタにDCラインを追加した形状
  • インターネットとの親和性高い
  • テスラの仕様を踏襲
  • AC充電とコネクタを共用
  • 通信はCCSと同じ
CAN通信によりすべてのパラメータを同一周期で送信(100ms) CAN通信によりリアルタイム監視が必要なパラメータは一定周期で、状態変化を表すものはイベントとして送受信 メッセージをイベントとして送受信

接続性確認の枠組み

各規格について、EVと充電器の接続性確認の枠組みを表3(AC充電)と表4(DC充電)にまとめます。

【AC充電ー日本】

日本では、AC充電に関してJARI(日本自動車研究所)が独自の認証制度を運用しています。法的な強制力はありませんが、充電器の補助金を受ける際には認証取得が条件となっています。

【AC充電・DC充電ー中国】

中国では、2024年4月からEVおよび充電器に対し、AC充電はGB/T 18487.1、DC充電はGB/T 27930に基づくCCC認証(China Compulsory Certification)の取得が義務化されました。

【AC充電ーその他の地域】

日本、中国以外の地域では、各国の試験・認証機関が独自に認証を行っていますが、法的な強制力を持つものはありません。

【DC充電ー日本】

CHAdeMOでは、充電器に対する検定制度が設けられています。検定に合格し認証を取得した充電器のみ、CHAdeMO認証マークを掲示することができます。充電器の検定では、特にプロトコルシーケンスの正確性を確認するため、Protocol Checkシートに定められたテストパターンに基づいて試験を行います。一方、車両側については「車両品質チェックリスト」が発行されており、設計情報やシミュレーターを用いてシーケンスや充電仕様が規格に適合していることを確認します。さらに、マッチングテストセンターで実際の充電器との接続性試験を行うことが推奨されています。これらの確認を完了した車両は、各充電器との組み合わせ試験結果としてホワイトリストに登録され、CHAdeMO協議会のホームページに掲載されます。

【DC充電ー北米・欧州】

CCSについては、ISO 15118-4およびISO 15118-5で、プロトコルの適合性を確認するためのConformance Testの方法が定められています。

また、CCS規格を推進する団体であるCharINは、EVと充電器の接続性を確認するイベント「TESTIVAL」を年に数回、北米や欧州で開催しています。

このイベントには多くのEVメーカーや充電器メーカーが参加し、各社が製品を持ち込んで相互接続性を検証します。問題が見つかった場合は、関係者間で議論を行う場として活用されています。

表3 接続性確認の枠組み(AC充電)

Type 1 NACS Type 2 GB/T
日本 北米、韓国など 北米 欧州、その他 中国
Conformance
試験規格等
SAE J1772 SAE J1772*1 IEC 61851-1 *1 GB/T 18487.1
認証制度 JARI認証
(補助金対象要件,充電器のみ)
各試験・認証機関が認証を実施 各試験・認証機関が認証を実施 各試験・認証機関が認証を実施 車両、充電器ともにCCC認証*2取得が必須
車両と充電器の組み合わせでの確認 公式の確認の場はない 公式の確認の場はない 公式の確認の場はない 公式の確認の場はない 公式の確認の場はない

*1:Type1, NACS, Type2についてDC充電と同様のデジタル通信を行う場合には、表4のCCS, NACSの欄に記載の試験規格による。
*2:CCC認証(China Compulsory Certification):中国政府が定めた強制認証制度。中国国内で販売・輸入・仕様される製品が対象。

表4 接続性確認の枠組み(DC充電)

CHAdeMO GB/T CCS NACS
充電器 車両
Conformance
試験規格等
Protocol Check Sheet 車両品質チェックリスト GB/T 27930 ISO15118-4
ISO15118-5
DIN70122
CharIN Test Case
ISO15118-4
ISO15118-5
DIN70122
CharIN Test Case
認証制度 CHAdeMO認証済充電器のみがロゴの掲示可能 なし 車両、充電器ともにCCC認証*取得が必須 各試験・認証機関が認証を実施 各試験・認証機関が認証を実施
車両と充電器の組み合わせでの確認 マッチングテストセンターで主要な充電器と車両の接続性試験が可能
確認の結果問題がないものは、ホワイトリストとしてWEBで公表
公式の確認の場はない CharINが開催するTESTIVALにて車両と充電器の組み合わせの確認を実施 公式の確認の場はない

東陽テクニカの取り組み

ここまで見てきたように、EVの充電には規格ごとに異なる通信方式が採用されています。さらに、同一規格であっても複数メーカーの充電器と車両の組み合わせが存在するため、接続性を担保することは容易ではありません。前項で述べたように、認証制度が確立されている規格や地域もありますが、市場における接続性には依然として多くの課題があります。東陽テクニカでは、ここで紹介したすべての規格に対応し、充電器・車両双方の通信を確認できるcomemso社製のEV充電アナライザ/シミュレータを販売しています。また、このEV充電アナライザ/シミュレータを用いた受託試験サービスも提供しています。課題の解決には、規格の熟知や類似事例での経験が大きな役割を果たします。東陽テクニカにはEV充電について知識・経験が豊富なメンバーが在籍しています。私たちは、一般のEVユーザーが充電時にトラブルに遭遇しないよう、接続性評価の観点から社会に貢献していきます。

関連製品

お問い合わせ先

株式会社東陽テクニカ eモビリティ計測部